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革の表情とカラーオーダー製作

革製品の財布や鞄、靴や服など材料として使われている革。
単に革と言っても、タンナーが独自製法で作る革、伝統的な製法にて作られる革、ファッションなども含めブランドからの依頼で作られる革、手仕事で手間を掛けて作られる独創的な革、スピードと低価格重視で量産される革など、鞣し製法や仕上げを含めると無数とも言える。

今回は、カラーオーダーで製作した"手縫い仕立てのコイン&カードケース"。
ご希望が緑系という事だったので、表に使う革はイタリアンレザーのターコイズ、内側に違うタイプのイタリアンレザーのグレー。だんだんと色濃く艶が増していくエイジングしていく革であること、お時間をいただいて製作となる事をお伝えして製作。

製作に使用した材料革はイタリア、トスカーナ州にあるタンナーで製造されている植物タンニン鞣し革。
イタリアの植物タンニン鞣し革協会(Consorzio Vera Pelle Italiana Conciata al Vegetale)に認証を受け、定められた基準にて製造されている。
植物から採取したタンニン鞣し剤を使用して皮から革へ鞣し、油分(オイル)を入れる加脂、染料を使って染色された革である。手間や時間をかけ、環境に配慮したスタイル。長年、サスティナブルな取り組みを続けていると言える。

小難しいことを端折りましたらば…
"自然なエイジング"による革の表情を楽しみたい方が好むタイプと言える。

革の表情 -シボ-

2種類のイタリア産の革を使っているが、表側のターコイズの革で話を進める。
革の表面のシボ(皺)、こちらは空ダイコによって出来た"地シボ"
タイコとは樽のような形をした大きな容器をぐるぐると回転させる機械で、用途として皮から革へ鞣す際、その他染色加脂する際などにも使用される。

こちらがシボ、部位により表情は違う。

シボは、革の表情の中のひとつであり、特徴でもある。
硬い革を柔らかくするため繊維をほぐす、揉むというような工程を経て現れるシボや手揉み加工という方法で入れるシボなどもある。
地シボは、個体差または部位によりシボの状態は大、小、薄い部分などさまざま。
製作に使う際に切り出す部位によって多少なり表情が変わる。
また、染料仕上げの革はシボの表情とは別に、染料の色斑、元々の牛が持っていた傷やトラ皺や血筋なども反映しやすい。

鞣し段階で特殊な薬品に漬け収縮作用にてシボを施したものを"シュリンク加工"と呼び、凹凸のある型版にて高温プレス、模様を施したものは"型押し"と呼ぶ。

ちょっと製作風景

手縫いの道具、手縫い糸を使い仕立てている製作風景を、ほんの少し。

手縫いの穴をマーキングするヨーロッパ目打ち。
木槌を使って革に打ち込む。貫通させず研いだ錐でひとつひとつ穴を貫通させる。
今回はフランスのワックスリネン糸。色はpaon(孔雀)。
何層も重なる革の端を仕上がりサイズに裁断する"本裁ち"。正確に切ることで綺麗な断面になる。
今回はイギリスの針で手縫い。


手縫い仕立てのコイン&カードケース

製作の際に使用した材料は、2種類のイタリア産の革、イタリア製の挽物ホック、フランスのワックスリネン糸。

コインケースの中には仕切りがあり、背面にカードポケットを備えている。
カード、折り畳んだお札、少量の小銭が入れられるコイン&カードケース。
スマホ決済、カード決済などキャッシュレス決済がほとんどという方は、コンパクトな財布として使える。

裁断した革の端を仕上げ終えて終了。
カラーオーダー 製作でした。


異なるデザイン&フレンチカーフ

先のコイン&カードケースと少し異なるデザイン。
革はフランス、アンザス地方に居を構える1842年創業のタンナーにて製造されている"型押しカーフ"。牛革の中で上質なカーフ(仔牛革)を使用、発色の素晴らしさ際立つフレンチカーフレザー、スーパーメゾン エルメスでは"ヴォー エプソン"という名称。

ほぼエイジングせず、ハリがあり小傷なども入りにくい。キャッシュレス派、スマートに使いたい方に。

外はルージュブリック。
内側はエトゥープ。
背面のポケット、ワックスリネン糸の色はボルドー。


ニッチな道具

今回使った道具は、香港製 ヨーロッパ目打ち、韓国製の菱ギリ、日本製の革包丁と玉捻、イギリス製の針。違う糸を使う場合はドイツ製の針が使いやすい。
他にもいろいろと… とても独特な… ニッチな道具を使っている。

今回使用したモノとは違うニッチな道具と戯れる、助手…
わたしがただ遊んでるだけでございます。。。

海外の道具を好きで集めているわけではなく、精密さと機能性を備えた道具が海外製に多いのが理由。良さそうと思い購入したものの自分には合わず、眠っている道具もいくつかある…

革小物や革鞄などをミシン製作する人の場合でも、作業効率を上げるために道具やミシン用パーツを加工したり、カスタマイズしている。
手縫い、ミシン製作の違いはあるが、共通した道具を使うこともあったりするのでたまに知り合いと道具談義をすることも。お互いニッチな道具使ってるな…と。

こんな表情… 何者か? わかる方はおられるだろうか… w


実際に手に取って頂いた後に気に入って頂けること、とても嬉しく思う。
わたしが在庫する革はいくつかタイプがあり、それぞれの製法による特徴の違い、また質感となると全く異なるものもある。好みは人によって分かれるところ。

ではまた、¡Hasta luego!




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