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本のはなし

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わたしの書いた本に関するnoteをまとめています!感想やおすすめ本など
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「積ん読」を晒そうと数えたら89冊あったので、いったん全て紹介します。

本を年間130冊ほど読むこと早数年。読むペースよりも面白そうな本が出るペースが早くて、どんどん積ん読が増えている。特に単行本の増え方が異常。 よく読むのは、歴史、社会学、哲学、社会思想あたりの本と、海外文学、ミステリ。あと心理学や認知科学、進化論の話とかもすき。 わたしにとって本とは、小説や文学は非日常を味わせてくれる人生のスパイスだし、学術書や実用書はわたしのちっぽけな脳にはとても詰め込めきれない知を補完してくれる外部装置でもあり、新たな世界へのチケットだ。 本格的に

太宰治『駈込み訴え』全文にツッコミをいれてみた

以下、本文は青空文庫によるものである。 冒頭から恨み強すぎてこわい。何があったの。 「落ちついて申し上げます」なのに、全然落ち着いてる感のない発言。ズタズタに切れはやばい。 師なのに殺してもらおうとするなよ。 これが本当だとしたら相手もなかなかやばかった。ていうかそんなに嫌ならまず距離置こう! 誰かにペコペコ頭を下げないと生きられない社会っていやですよねえ。だる。 「痴」を「こけ」と読むこと、多分これではじめて知った。ていうかキリスト教の話!楽しい!そして天国は馬

ジャック・ラカンの本を読んだら、まったく歯が立たなくて笑えてきた

いや、もはや読んだと言えない気がする。100ページ弱ある本と向き合ったのは事実だけれど、胸を張って読んだとは言えない。完全に負けた。 その本、ジャック・ラカンの『テレヴィジオン』を読んだのは、友人である脱輪さんのこのツイートがきっかけだった。 「お茶代」とはわたしが参加している文学サークルであり、脱輪さんはその主催者だ。 このツイートを見て、「たった1行すら理解できずだんだんイライラしてきて」ってどういうことだ?という好奇心から非常に興味を持った。フランス好きとして、フ

伊藤野枝が100年前に燃やした炎を、心に抱えて生きようと思った話

今年、関東大震災が起きてから100年が経った。ということは、わたしが日本史上一番好きなひとが死んでから100年だ。彼女の名は伊藤野枝(いとうのえ)。明治・大正を生きたアナキストだ。 平塚らいてうらが発起人となって起こした青鞜社で執筆活動を行ったり、同じくアナキストでありパートナーの大杉栄とも雑誌を創刊したり、労働運動に参加したりしている。 私生活では親の決めた相手と結婚するも気に食わずに逃げ出し、通っていた女学校の教師である辻潤と結婚して2人の子どもを出産したり、すでに内

熱情の想い出と熱情への思慕

「恋愛がテーマだし、多分自分には刺さらない」 この本を手に取ったときは、そう思っていた。 じゃあなぜ読んだかというと、ノーベル文学賞だし、フランスの作家だし、このくらいはフランス好きを公言している以上、読んでおかなくてはいけない気がしたからだ。 そんな不純ともいえる動機で読み始めた、アニー・エルノーの『シンプルな情熱』だったが、当初の予感を気持ちいいくらいに裏切ってくれた。 この作品は、アニー・エルノー自身が、外国から来たとある既婚男性への文字通り燃えるような恋に夢中に

ジョージ・オーウェル『動物農場』を読んで考えたナポレオンのこと

先日、ジョージ・オーウェルの『動物農場』を読んだ。 この作品は、動物たちが人間に対して反乱を起こして自分たちの国を作る話に見せかけた、社会に対する風刺と批判に溢れた寓話だ。 社会批判という情報はなんとなく知っていたけれど、ほかに何も知らない状態で読み始めた。ジョージ・オーウェルについてもほぼ何も知らず、スペイン内戦に反フランコ側で参加したことだけは知っていたので、資本主義批判でもするのかなと読むまでは思っていた。すると、真逆の共産主義、ソ連批判だった。どうやら共産主義の話

年130冊読んでいる、わたし的ベストな読書スタイルを共有します。

読書、と一口に言っても本のジャンルは様々ですし、読み方も人によって千差万別ですよね。楽しむためだけに読む人、何か知識を得るために読む人、その両方の人、活字そのものが好きな人などなど。 今回は、人文学や社会学を中心に、楽しみつつ知識を得るために読書をしているわたしが辿り着いた読書スタイルを紹介します。 その方法とは、「100%娯楽で読む本以外は紙で買い、気になった点や大事だと思った点はNotionに音声入力でメモすること」です。 本を紙で買うわけわたしはもともと「本は紙派

おすすめハラスメント・本棚編

合法ハラスメントの時間です。 ベルサイユのゆり/吉川トリコ 著この本は2019年に購入してから、すでに4回、つまり年1ペースで読んでいるくらい好きな本。太宰の『斜陽』と並んでわたしがもっとも高頻度で読んでいる本だと思う。(ちなみに斜陽もおすハラするか迷ったけれど、あまりに有名で読んでいる人は多そうだから今回はやめておいた。でも未読の人はぜひ!) 吉川トリコ氏の『マリー・アントワネットの日記』に続く作品で、『マリー・アントワネットの日記』では、日記という名の通りマリーの独白

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【書評】奈倉有里著『夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く』

ロシアという国には、抗いがたい魅力がある。 隣国でありながらも決して東洋ではなく、ではヨーロッパかというと、ヨーロッパと聞いてわたしが真っ先に想起する西欧諸国とは、何かが決定的に違う気がする。独特な世界観を持った好奇心を刺激してくる国。そんなイメージを、いつの頃からか持っていた。そのせいかロシアと聞くとつい心惹かれてしまうところがある。 ロシアとウクライナとの戦争が始まって半年が経つ。この半年は、なおさらロシアがわからず、この大きくて、そして雪に包まれた隣の国のことをもっと