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486.【介活】住宅改修給付金で手すりをつける 

父が、自宅の門から道路までの3段ほどの石段に、つまずいて転倒したことをきっかけに、手すりをつけることになり、病院騒ぎの翌朝9時から、ケアマネージャーのOさんが手配してくれた業者さんとの打ち合わせをする。在宅介護のために住宅を改修する場合、介護保険の給付金を利用できるという。

父は、いつもどおりデイサービスに行くと思っていたら、「手すりの高さなどを本人に合わせるから、在宅するように」と言われた。いつもは、朝8時に迎えの車が来るので、その時間が過ぎたあと、父が待っていられるかどうか不安だけど、なだめて待たせるしかない。

顔面から転んだため、顔が傷だらけだということを忘れてしまう父は、洗面所で鏡を見るたび、「なんや、これは!」と絶叫し、そのたびに、「転んですりむいたの」と説明している。
もう、20回以上繰り返しているのだけど、この日は、なんと、

「こんな顔では、みんなに笑われるから、今日は休むと電話してくれ」

と言う。「わしは、もう寝る」と、寝室へ戻ってしまう。

「いいよー。痛いねぇ。寝といてね~」
「電話しといてや」
「はーい。しておくね」

デイサービスを休むなんてありえない。起きたときは「休む」と言ったことを忘れているので、おそらく大丈夫。業者が来る9時まで、まだ2時間以上あるので、寝てもらったほうが、都合がいい。
いい感じに、8時50分ごろ、起きてきたので、すかさず、

「もうすぐ迎えの車が来るから、外で待っておこうね」

と言って、いつも座っている庭先の椅子に連れていく。

ほどなく、業者さん2名と、ケアマネージャーのOさんが来てくださり、業者さんに顛末と、現場を説明する。

門扉の外から、石段の下まで、支柱を立てて手すりをつけるだけなので、すぐに終わると思っていたのに、「左右のどちらにつけたほうが導線としていいのか?」とか、「玄関から門扉までも必要ではないのか?」とか、「玄関から庭を通って門扉まで手すりを渡すと、家屋の横側の庭に行けなくなるので、手すりが跳ね上げ式になっているパーツを付けた場合、父に操作ができるのか?」とか、ああでもない、こうでもないと、シュミレーションが始まり、自分が蚊帳の外にいることに気分を害した父が、突然、猛烈に怒りはじめ、初めての業者さんに、憤怒の形相で文句を言い始めたので、Oさんがすぐに施設に電話をして、父をデイサービスに行かせることに。

ほどなく迎えの車が到着し、めんどうな父がいなくなったので、そこからまた、ああでもない、こうでもないと、玄関から道路まで、シュミレーション。

「この区間は、手すりがなくても、大丈夫じゃないですか?」と、私が言うと、
「今はね」と、Oさん。

(いやいや、そこまで歩けなくなったら、もう、車椅子が必要で、庭の手すりの問題じゃないですよね)と、声に出さずにツッコミながら、どうしたらいいか結論が出せずにいると、経費の計算をしていた業者さんが、「跳ね上げ式のパーツを付けると、20万超えますね」と言ったので、その場にいた全員が声をそろえて、「限度内で!」と言ったのが、可笑しかった。
20万円を超えた分は、介護保険が適用されず、全額自己負担になるのだ。
「限度内で見積もり作ってください」と、Oさんが声を張り上げ、「それでいいよね」と、私に言う。大きくうなずく。

手すり問題が解決したあとは、玄関の上がり框からの立ち上がりを補助する手すりの相談だ。
壁裏の下地を探知するセンサー(そんなものがあるなんてびっくり!)で、手すりを固定できる位置を確認し、少し低かったので、ちょうどいい位置に板をつけ、手すりを固定すると説明してくださった。

次に、最近の父は、ベッドからも起きづらくなっているので、ベッドまわりの手すりについても、相談。
こちらは、介護保険でレンタルができるということで、一度試してみることになった。

問題は、認知症のため、見たことのないものや、新しいものは拒否反応があり、外したり、壊したりしてしまうこと。
また、電気製品の待機のランプが点いているのが気になり、消えないのでブレーカーを切ってしまったり、プラグがコンセントにささっているのが気になり、全部抜いてしまったりする。
ガスの元栓も締めてしまうので、ガス炊飯器のタイマーをセットしているのに、ごはんが炊けていなかったりする。
いろんなものが、ありえない形で壊れているので、毎日がホラー、何が起こるかわからない。

さて、今後の流れだが、業者さんに見積書を作ってもらい、疑義がなければ、市に事前申請をして、審査が通れば、工事が実施。市への申請は、業者さんがやってくれるとのこと。
すぐに手すりを取り付けてもらえると思っていたのに、早くても3週間後くらいだと聞いて、がっくり。
それまでの間、転倒することのないよう、父から目が離せないということだ。

しかも〈転倒防止〉という観点で、築50年の家屋を見ると、庭先だけでなく、室内も段差ばかりで、どこも危ない。昔の一戸建てって、どうしてこんなに段差があるのだろう。

どこまで自宅介護できるのか。

*****

業者さんと、見積書を持ってきていただく日時を決め、打ち合わせは終了。その後、途中で事務所から呼び出しがあり、先に戻ったOさんから、電話がかかってきた。

ベッドの手すりをレンタルした場合、毎月の介護保険の限度額内でおさまるかどうかを、相談する。
父は、今、デイサービスに週6日お願いしていて、限度額ギリギリなので、レンタル代は全額自己負担で払うことになりそうだ。または、デイサービスを1日休めば、限度内に収まると言われたけれど、それは嫌。
全額自己負担でレンタルするなら、期間によっては購入したほうが安くなる。中古品もあるそうだ。だけど、不要になった時に引き取ってもらえない。

父が手すりを気に入るかどうかも、まだわからないので、レンタルすると決まったら、どちらにするか検討して、報告することになった。

Oさんは、デイサービスでの父のふるまいや、問題行動も、よく知ってくださっている。
今後のことも相談でき、家庭での父の問題行動も、笑いとばしてくれる。本音も話せる。

話しながら、(傾聴してくださっているなあ……)と、しみじみ感じた。
ただ、聴いてくださる。
職務ではなく、人間として、本当にあたたかい人だということが、伝わってくる。

(ただ、受け止めてくださることの持つ、癒しの力だ)
(ひたひたの温泉)

ギリギリまで、Oさんと話をしてしまい、13時6分の電車に乗るために、ダッシュで駅へ。
(午後からの予定については、別記にて)

浜田えみな

転倒したときのこと

 

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