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凍結融解やバイオプシーを繰り返す事の胚への影響

【ご質問原文】

いつも貴重な情報をありがとうございます。

不妊治療中の36歳、この度反復流産となりPGT-Aの対象になりました。

今、5つの胚盤胞凍結中です。 凍結胚を融解してのPGT-Aは凍結前のPGT-Aと比べどのくらい妊娠率は落ちるのでしょうか。

PGT-Aをするかしないか悩んでいます。
ぶらす室長さんの経験上の感覚でも構いません。
お答えいただけると嬉しいです。

【回答】

ご質問ありがとうございます。

同様の質問が多いため、論文をご紹介します。

下記の3群に分けて、融解後の結果や移植成績を比較した報告になります。

グループ1(2134個)
→凍結融解、バイオプシー共に1回
グループ2(34個)
→凍結融解2回、バイオプシー1回
グループ3 (29個)
→凍結融解、バイオプシー共に2回

凍結融解後の生存率はそれぞれ

グループ1 98.4%
グループ2 97.3%
グループ3 93.3%

であり、グループ3が有意に低下していました。

妊娠率はそれぞれ

グループ1 54.3%
グループ2 47.1%
グループ3 31.0%

であり、グループ2はグループ1より低下したものの有意な差はなくグループ3はグループ1よりも有意に低下していました

引用
Impact of multiple blastocyst biopsy and vitrification-warming procedures on pregnancy outcomes

ここからは私の考察ですが、まずN数が違いすぎるのと、グループ3に関しては「2回バイオプシーをしなければいけなくなった」という胚側のバイアスもありそうだと思うので、操作自体の影響を明確に比較はできないと思いました。

今回のご質問で比較すべきはグループ1とグループ2ですが、生存率、妊娠率ともに有意な差はなかったので、2回凍結融解操作を繰り返しても、1回と統計的には変わらないと言えると思います。

しかし、緩やかに妊娠率が低下している事から、症例数や個数が増える事で影響が出てくる可能性は否定できないと思いました。
また、別の論文で生存率が有意に低下するという報告もあります

やはり、凍結融解操作は胚に全くダメージがないものではないので、繰り返さないに越した事はないと思います。

数値的には差がないので、PGT-Aにそのリスクを上回るベネフィットがあると考えられるのであれば、実施して良いと思います。

以上です。
ご参考になれば嬉しいです。

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