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緑の日常を探す旅 ーアルウィンの街のショッピングモール探索ー



旅をしない旅についてのエッセイを連載する私が、図らずも旅っぽいレポートを書くことになりました。

日本中、いや世界中がCOVID-19により、新しい旅を楽しむことが難しい状況を迎えてしまいました。そんなときに私たちができることは、新しい旅が気持ちよくできるようになったときのためのイメトレです!

新しい旅に出たい気持ちをためてためて溜め込んで、そして来る時にそれをぱーっと爆発させよう!

そんなわけで、今回は去年訪れてとっても好きになってしまった松本のお話を書こうと思いたちました。どうぞお楽しみください。

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かねてから松本とアルウィンの素晴らしさについては耳にしていました。いつか行ってみたいなと思いつつなかなかチャンスがなかったのですが、去年OWL magazineのイベントにかこつけて、東京からあずさにのって行ってまいりました。

新しい街を訪れたら、その街の日常を味わえる場所に行きたい。

私は新しい街を訪れると必ず、生活に密着した場所をぶらぶらすることにしています。
旅するより暮らしたいというのが私のコンセプトなので、スーパーマーケットで買い物したり、カフェで一息ついたり、そういう日常生活を旅先に持ち込むことに楽しみを感じます。そしてこの松本旅では朝のお散歩として、松本城周辺とイオンモールの散策をしてきました。
(後もう一つの場所はおまけの有料部分で!)


朝の松本城はまさに完結した佇まいだった

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松本城にほど近いホテルに宿泊していたため、早めの朝ごはんのあとは腹ごなしに松本城周辺を散策しました。


前日の雨から打って変わって、からりと晴れた朝。
日曜日の早朝ということもあり、ほとんど人がいない静かな道をのんびりと散歩しました。

松本駅前とは違って、まるでタイムスリップしたような古い建物の並びはとにかくかわいい!


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昔からある丸いかわいいポスト!
こういうのを見かけるとつい、何時集配なんだろうというところまで見てしまいます。この「郵便」の文字というかフォント、趣があってすごく可愛い。

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歩いていて感じたのは、古い建物や古い道具などをきちんと維持してそのまま残している静謐な佇まいと、その植栽の美しさでした。落ち着きのある緑。


緑にもいろいろ種類があります。

その土地の緑は、緯度や高度によって様々です。
季節ごとの移り変わりがあるのもまた素敵なところ。

6月の松本はやや深く、落ち着きのある緑でした。街の風景としっくりくる緑。
まさに松本山雅の色です。

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わたしはベルマーレサポではありませんが、ベルマーレの新緑のような勢いのある緑が一番好きです。家にあるちょっとした小物(例えば使用済みの缶瓶を洗って置いておくバケツとか、トイレ用のブラシとか)にその色を見つけるとつい集めてしまいます。そのため、家の中には緑が溢れています。

もうちょっと大人になって落ち着いたら、松本の深い緑色が好きになるんじゃないかなあという気がしています。


古いものを美しいまま維持するためには、新しいものを作るよりももっと手間もお金もかかります。お城周りの地域は、それを代々受け継いで守ってきたのでしょう。
お店の看板や、お家の表札などもきちんと磨かれて、古いものが美しく残られているのは暮らしている人たちの日々の積み重ねの賜物です。

先日出張で訪れた、秩父の奥にある小鹿野という街もそんな場所でした。
ほんの少し古風で、だけどそれが大切に守られてきた古風で、古びたという印象ではなくおしゃれに見える。
日本のあちこちに、こんな素敵な場所があって、それは街の人達の街を愛する気持ちでずっと守られてきているのだと思います。


子供時代のほとんどを新興住宅地で過ごした私は、ここで育った人たちの豊かさについて羨ましく思います。
お金があるかどうかではなく、文化的に成熟した土地で過ごすということの素晴らしさはきっと、そこに住む人にはごく当たり前でなんてことないのかもしれませんが、本当に羨ましい限りです。

そして、松本城は景色として完璧でした。

そこに人がいなくても、風景として完成していて、逆に写真に人が写り込んでほしくないような気持ちにすらなりました。
圧倒的な深い緑と、木々を飛び回る小鳥。
お堀の水に映り込むのは、そこにある木々の枝のみ。

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わたしという人間がそこにいることが不釣り合いなくらい、景色として完成されていました。

もしかしたら、たくさんの観光客で賑わう松本城もまた素敵な風景なのかもしれません。でも、早朝の澄んだ空気をまとった緑の中の松本城には賑やかなキラキラはないけれど、そこにはしっかりした美しさが存在していて、ここを静かな時間に訪れることができた幸せを感じました。


1000年前に清少納言は、春はあけぼのと記しました。

清少納言の春は、間違いなく京都のものです。

春はあけぼの
夏は夜
秋は夕暮れ
冬はつとめて

6月なので、春というにはちょっと遅い時期ではありましたが、

山が近くにあって、自然が豊かで、文化的に成熟した松本で、この1000年前の優れたエッセイストが感じたのと同じような静かな感動を味わうことができたのではないかと思っています。

四季折々の美しい松本城、訪れる度に今回私が見たのとは違った顔を見せてくれるのだと思います。また違う季節に散歩してみたいな。


落ち着きのある街の落ち着きのあるイオンモール

今わたしが住む街にもイオンがあります。モールほどの大きさじゃなくてショッピングセンターという名前の小さなイオンですが。やっぱりイオンの話はイオンで書かなきゃね!と思って今もそこのカフェで執筆しています。

このカフェ店員さんは全員感じがよくて、いつもニコニコしているので推せる。めちゃくちゃ推せる。前にいた店長さんの作るスチームミルクはほんとうにふわっふわで美味しくていつも楽しみでした。異動になってがっかりしていたのですが、新しい店長さんもまた感じがよくて気に入っています。


さておき。

旅先なのにどうして日常と同じような場所を訪れるのか?
イオンなんて日本のどこにでもあって、まるで風景の画一化を押し進める悪の手先みたいな捉え方をする人もいると思います。

でも、日本のどこにでもあるものにこそ、その土地のオリジナリティが溢れているんじゃないかなというのが私の考えです。

溢れている、じゃないな。画一化のその先で、でも隠しきれなくて溢れてしまうその土地のオリジナリティというものを見たいのです。そういうのが真のオリジナリティだと信じているから。

そんな理由で訪れた松本の街のイオンは、やはり松本のイオンらしく、佇まいからして落ち着きのあるイオンでした。白とシルバーグレーが基調の四角いイオン。あんまりピンク(イオン色だと私は思っている)のイメージがないため、かなりすっきりとした外観になっていて、それが落ち着きのある街にしっくりと馴染んでいます。

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土地が豊富にある場所のイオンは、あまり高層化されていないのと、駐車場がばーんと広いのが特徴です。

今まで訪れたなかで一番びっくりしたのが下妻(茨城県)のイオン!
もう行けども行けどもフロアは続いているし、駐車場は見渡す限り車車車!!!
店と店の間、棚と棚の通路もこころなしか広くてゆったりしています。
それまではモールじゃない都市型イオンにしか行ったことがなかったため、この迷子になりそうな広さのイオンを訪れたことが、旅したらイオンに行ってみたいと思うきっかけとなったのかもしれません。だってあまりにも違って、あまりにも圧倒的だったから!


さて、心は松本に帰ろう。

食料品フロアのある1階は、うちのイオン(近所のイオンをそう呼ばせてもらいましょう!)と比較してもぱっと見はかわりません。広い食料品売場の隣にリカーショップ。このあたりはイオンのテンプレートなんでしょう。

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でもそこに売られているちょっとしたものや、地元産のものなんかが「なんかちょっとうちのイオンと違う!」を醸し出すのに十分な色を出しています。


専門店のフロアは、非常に「モール」らしい展開。

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若い子がぶらぶらするのにぴったりの、リーズナブルだけどちょっとおしゃれなお店や、少しエッジのきいた専門店、そして全国展開しているようなライフスタイル系チェーン店。もちろん映画館もあります。ここに来れば全てが揃っているような感覚になる広さと店の揃いっぷり。年齢やライフスタイルに関わらず、誰がきてもそれなりに楽しめるような作りはさすが「モール」です。

松本のイオンをぶらついて気になったのが、お客さんたちの雰囲気。
楽しそうにおしゃれしてデートしているカップルだったり(とても爽やか!)、ファミリーで来ているお客さんたちも素敵な装いで、なんだか近所にワンマイルウエアで買い物に来る感じとは別世界なのです。おしゃれし尽くしました!という感じではなく、ちょっとぱりっとしたシャツを着て、お気に入りの靴を履いて、といった感じ。

日曜日の朝だったからかもしれませんが、みんな思い思いの好きなお洋服で歩いている感じが溢れています。背伸びをして頑張ってそこにいるのではなく、身近な生活の延長線上の素敵なスポットとしてこのモールがあるんだということがわかりました。


もうね、とにかく爽やかさで溢れているんです。

わたしもここでデートするような高校生活がしたかったよ!!!!


デートする爽やかカップルを羨ましげに横目で見ながら、いろいろなお店をフラフラと見て回っていると、雑貨屋さんにそのときに着けていたバングルとお揃いっぽくなる丁度よい色合いのイヤリングが並んでいました。

店員さんとおしゃべりしながら(東京在住ではありますが心は関西のおばちゃんなのでこうなります…)選んでレジへ。

松本イオンの店員さんもお客さんと同じで、ちょっとぱりっとおしゃれで人懐っこくて感じが良い! そしてちょっとシャイ!

思えば、立ち寄ったカフェの店員さんたちもそんな感じの爽やかな方々でした。


結局のところ、生活に関わる場所というものはそこにあるウワモノだけではなく、人が作るのです。建てられたときはどこにでもあるようなものだったとしても、それが経年変化を経ることで、どんどんその街ならではの姿になっていく。

作り、造り、創る。

似たようなコンセプトで建てた建物であっても、働いているのも、そこに集うのも、その土地の人なのです。

朝の松本イオンモールは、松本の人たちの等身大の姿そのものなのだと思いながら帰途につきました。


街はどうやってつくられるのか

たくさんの地方都市を訪れると、(場所にもよりますが)駅前の商店街の活気が失われつつあったり、なんとなく寂しい感じがすることがあったりすることもあったりで、東京の一極集中を痛感することが多くあります。


古い街には美学というか、「こうありたい」というものがあるような気がします。
そしてそのような美学があるからこそ、歴史を作ることができたというのもまた正しい。

ただその美学を維持するために、新しいものを受け入れるという意識を持ち続けることが、街の未来を築いていくために必要だと思っています。


街をつくるのはそこに住む人です。

そしてその流動性こそが、街が生き続けるためのキーなのです。

松本には4つの大学・短期大学と13の専修学校があります。
その一つである信州大学のデータを見てみましょう。

平成30年度出身高校所在都道府県別の志願者数、合格者数、入学者数
県内 514
県外(プラス高認などその他)1499


毎年、県内からの入学者の約3倍の県外からの新入生が松本を選んで、この土地にやってくるのです。


少し古いデータですが2016年の国勢調査を見てみると、

3月の県外からの流入2155名。
つまり、ほとんどが大学・大学院の新入生なのです。

松本市の人口24万人であることを考えると、毎年0.6%だけど、必ず若い人が入ってくるということ、そしてそのほとんどの人たちがそこに来たくて、選んでやってきたのだと思うと、この街が生き続けることができる理由がわかるような気がします。

だから、どうしてもそこで学びたいと思わせるような学校がそこにあることと、学校がそういう存在であり続けるということは、その街の産業の発展と同様に大切なことなのだと思います。一人の大学教員として、襟を正さなければいけないなという気持ちが更に強くなりました。

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私たちが旅する先は、誰かの住む街で、誰かが作ってきた街。
だから私の街をほんのちょっとでも素敵にしたい!
それが私の街を旅する誰かを幸せな気持ちにさせることに繋がるから。

街をつくるのはそこに住む人、集う人です。

旅にでることができない今、ほんの少しできた余暇を使って、自分の街に思いを馳せてみるのもよいかなあと思います。


さてここからはもう一つの散策スポット。
私の大好きな不動産屋周りの話をします。


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