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卒婚という言葉を知りました(いまさら)

「もうさ、ソツコンでいいと思ってるー」と友だちがグリーンカレーをよそいながら言った。卒コン、と脳内で変換されたが、それだと今までの会話の流れにそぐわない。久しぶりにランチ会をしながら、いつものように「老後は日本に住みたいよねー」って話をしていたのだから。

離婚ではない、婚姻関係のゆるやかな卒業かあ。初めて知った。仕事でしょっちゅう日本に行っている友人よりも、やっぱりこういうところが疎くなっている。ウィキペディアを見たら2000年代以降ということなので、もう知らないと恥ずかしいぐらいの言葉だった。

年老いた両親の介護や看取りのため、日本へ一時帰国する人が周囲に少しずつ増えている。それをきっかけにして、自分の老後のことも考え始める年頃なんだろうなあと思う。わたしも、隣で眠っている夫を見て、どちらかがどちらかの死を見届けて、ひとりになる日が絶対来るんだよなあ…ぎゃー!やだようやだよう!と思う夜がたまにある。こんなことになるなら、最初からひとりだったらよかったのに、とさえ。

昔は、日本とアメリカにマンションでも買って、好きな時に行き来したらいいじゃない?なんて周囲もわたしも思っていた。配偶者といつもべったり一緒じゃなくて、会いたい時に会う方が恋人みたいでいいよね?とか。若くておめでたかった。年齢を重ねて、13時間の飛行機が苦痛で仕方ない。これを70代、80代でできる?何度も?体力的にも経済的にもたぶん無理。

じゃあ腹をくくって、アメリカに骨をうずめる。とてもいや。以前マクドナルドで子どもと昼ごはんを食べていたら、デイサービスのバスで年配の方々が昼食を買いに来た。80代以上であろう人たちが、嬉々としてダブルチーズバーガーとコーラL、とか注文している姿を見て、いいなあ、あ、でもわたしここで老後を迎えるのはちょっと無理やわ…と思った。今の時点で、ハンバーガーもコーラも一生分摂取したと思っている。

いちばん理想的なのは、日本へ帰ること。でも夫を連れて?海外に暮らすことの大変さは自分がよく知っている。それを夫に強いることはしたくない、しかも年老いてから。夫は楽観的なので、日本移住?いいよーなんて今は言っているが、絶対3年ぐらいで、外国人として生きることのつらさに気づいてしまうはず。

そんなことを考えると、卒婚というのは寂しいけどいいかも、と思ったりもする。家族に最期を看取ってほしいとは思っていない。みんな好きなところで暮らしてほしいし、元気で幸せそうなわたしを覚えておいてほしいな、と願っている。ああ、でも卒婚した後で、夫が誰かいい人を見つけてしまったら(この人はたぶん見つける)泣くと思う。13時間の飛行機が、とかしょぼしょぼしたことを言っていないで、ぶっ飛んできて、おうおう泣きながら責めると思う。自分勝手な上にまだ全然卒業できてなかったな。

終末のカウントダウンはこんなだろう眠る夫のまつげの長さ/毛糸

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