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【一日一文】ゴッホ「ぼくの眼にはもっと興味深いもの」

12月19日。
オランダ生まれの後期印象派の画家ファン・ゴッホの書簡全集から、一文をご紹介します。


しかし、ぼくはカテドラルよりは人びとの眼を描きたい。カテドラルがいかに荘厳で、圧倒するような印象を与えようと、そこにはない何かが人間の眼にはあるからだ。一人の人間ーーそれが哀れなルンペンであろうと、夜の女であろうとーーの魂はぼくの眼にはもっと興味深いものなのだ。

ファン・ゴッホ書簡全集第四巻より引用


ゴッホは荘厳な建造物よりも、人物を描きたいと断言しています。
画家として、一人の人間の魂と向き合おうとする姿は高潔そのものです。

後世まで100年以上の長きにわたってゴッホの絵が鑑賞されてきたのも、情熱的な筆致や波乱万丈の人生だけではなく、人間の眼と向き合おうとする姿勢が軸にあったからだと思います。ゴッホは、多くの自画像を残しています。絵筆を手に、ゴッホもまた描写を通して内省していた点に親近感を覚えます。

弟テオとの間に、多くの書簡が残されています。この書簡があることで、今でもゴッホの心に近づくことができるのです。心の内をあますことなく表現し、やりとりした二人の書簡を読んでから絵画鑑賞する時間は、なんとも詩的に過ぎゆく豊かな時間になりました。



「一日一文」不定期に更新を始めます。
哲学者・木田元(きだ げん)氏編纂の本「一日一文」から、心にとまった先人の言葉をご紹介したいと思います。

ひとつは自身の学びのため。
ひとつはすこしでも豊かな気持を分かち合うため。おつきあいいただけると幸いに思います。


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