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Elisaの制作メモ:"受胎告知"制作プロセス


はじめに

キリスト教美術のモチーフによく使われる”受胎告知”。聖母マリアが大天使ガブリエルにイエスの懐妊を告げられるシーンだよ。

少し前からこの絵を作りたくて、どうやったらうまくできるかなー、って考えてたの。記念だし、せっかくだから難しいことにチャレンジしてみたいじゃない?

作画意図について

背景に"受胎告知"の物語があって、百合カップルの女の子がガブリエルから告知されて「そんなわけあるかい」と大いに戸惑っている、というシーンを想定しているよ。
聖書解釈では、聖母マリアの夫であるヨセフが高齢の老人であろうと想定されている。なぜなら、そうでなければマリアが処女のままではないだろう、ということから。
ちなみにワタシ、一応はカソリックなんだけど、そんなに真面目な信者ではないからこんなこと言っちゃってるの。怒んないでね。

制作プロセス

さて、今回の絵、NijijourneyとStable Diffusionの両方を使っているよ。最終的な作画意図に近づけていくために、Nijijourneyでもいろいろ工夫してるの。特にsrefはほんとに使える機能だと思うよ。調整しないと変な感じになっちゃうけどね。
おおまかな流れとしては、
1. Nijijourneyでベースになる絵の作成
2. Stable DiffusionでUpscaleしてディティールを追加
3. inpaintで細かい部分の調整
4. 仕上げ
という感じだよ。

Nijijourneyでの作業:ベース絵①

pop illustration, semi realistic illustration, wash painting, extremely beautiful two school girls, full body, sitting on the floor, holding each other, red school uniform, blue shawl, looking away, they are looking at same direction, intricate bob hair, white and pink hair, many pierces, boring, mono color background, --no kissing --style raw --niji 6 --ar 4:5

「これはこれでもう十分じゃん」っていっちゃだめだめ。これも良いんだけどね。
ちなみに、聖母マリアは赤と青の服を着ている、というのがキリスト教美術ではお約束だから、今回はそのお約束に従って赤と青の服にしているよ。

この絵をsrefで使うのでURLをコピーしておくよ。

Nijijourneyでの作業:ベース絵②

pop illustration, semi realistic illustration, wash painting, extremely beautiful school girl, full body, praying, kneeling down on the floor, yellow long school uniform, draped dress, looking away, intricate bob hair, white and pink hair, many pierces, angel halo, angel wing boring, mono color background, --no kissing --style raw --ar 4:5 --niji 6

同じくこれはこれでよいけど、そこはぐっと我慢。あとで仕上げても良いけど、今回はそこは主眼じゃないから。
ちなみに、ガブリエルのイメージカラーは黄金または黄色。なのでこれもマリアと同じように服でその象徴色を取り入れているよ。

これを単純に横に合成してUpload。

Nijijourneyでの作業:ベース絵③

さぁ、ここからが大変!
所望の絵を出すために2つの絵のプロンプトを混ぜ混ぜするよ。プロンプト全文を載せたから参考にしてみてね。わかりやすいようにパート毎に改行を入れてるよ。
冒頭に元になる絵のURLを入れて構図の基準にしているよ。--iwオプションで強度を調整。強度の値はあれこれ試した結果、今回は0.2に落ち着いたよ。
なるべく元のモチーフの配置を活かすため、on the right handon the left handとしてざっくり分けている。--no split windowを入れて画面が分かれないようにしているけど、これがどれくらい聞いているかは不明。どちらかというと--iwの方が効いてるかもしれない。
絵のスタイルを一定にするために--srefを使用。強度は--swで調整。今回は30とやや小さめにしているよ。ワタシ個人的には、デフォルトだと強すぎるから、20~50で調整することが多いかな。

<合成した絵のURL>
pop illustration, semi realistic illustration, wash painting,
extremely beautiful school girls, full body,
on the right hand there are extremely beautiful two school girls sitting on the floor and holding each other wearing red school uniform and blue shawl and looking away at same direction,
on the left hand there are extremely beautiful school girl kneeling down on the floor wearing yellow long school uniform and draped dress with angel halo and angel wings,
boring, mono color background, typography, many words on the background,
--no kissing, split window --style raw --niji 6 --fast --ar 16:9 --iw 0.2 --sref <最初の絵のURL> --sw 30

うーん、結構なやんだけど、元の意図に一番近い右下の絵をVaryでいじっていくことにしよう。
たぶん右下、当初想定の女の子2人の状態からじゃないとVaryしても最終状態にはなりづらそうにおもうよ。

Nijijourneyでの作業:Varyで調整

うん、よいよい。Vary(Strong)の左上が所望の構図なのでこれをベースに使おう。右上も面白いけど、ちょっと作画意図から外れてるから今回はパス。

Nijijourneyでの作業:Vary(Region)で修正

ちょっと手がありえない角度に曲がってて、これは調整しないと後々面倒そう。なので、この部分をVary(Regional)で修正しておこう。

で、最終的にできたこれをもとにStable Diffusionで仕上げにもっていく。これはこれでロシア正教美術っぽい雰囲気があって良いんだけどね。ただ、一昔前のマンガっぽい感じもして、やっぱりちゃんと仕上げした方が良い。

※ここまでまっすぐ来てるみたいに見えるけど、途中途中でプロンプトやパラメータの調整が入ってるから、実際にはもっともっと試行錯誤しているよ。

ちなみに端がきれないようにCustom Zoomしてみたんだけど、逆に構図が安定しすぎてつまらなくなってしまったので、ちょっと切れた最初の構図そのままを使うことにする。

Nijijourneyでの作業:番外編

Varyやってるとほかにも良い感じの構図になってくることがあって、なかなか悩ましいんだよね。最終的には当初の作画意図に従った構図で選んでるけど、これはこれで良いな。

Stable Diffusionでの作業

ここからStable Diffusionでの作業。SDでの目的は主に次の3点だよ。
・絵柄の調整
・ディティールの追加
・手足などの細かい部分の修正
実作業としては、2回Upscaleした後、inpaintで調整、最後にちょっぴりUpscaleして仕上げ、という流れ。それぞれの作業の目的は次の通り。

<1回目のUpscale>
絵柄をSD寄りにするとともに、2回目のUpscaleでディティールを豊かにするベースを作る。ここでベースがしっかりすると、2回目のUpscaleで表情豊かなディティールを入れることができる。
Stable Diffusionのimg2imgの特性として、元絵のノイズや色の差のある部分を拾ってそこにディティールを入れていくのね。なので、1回目で一気に仕上げようと思わず、ここでノイズや色の差を入れていくことで、2回目のUpscaleで豊かなディティールを入れる足掛かりにできるの。

<2回目のUpscale>
基本的な絵柄は1回目で出来上がっているので、2回目でディティールをしっかり入れてあげることで絵全体の統一感を作っていく。1回目で仕上がりイメージがある程度できていると、ここは大きく調整しなくても大丈夫。でもやっぱり2回目のUpscaleをやるとやらないとでは、最終的な仕上がりに差がでてきちゃう。

<inpaint>
これはやってもやらなくても良いよ。今回は視線の方向の調整のためにinpaintしてる。そういう細かいこだわりがない場合はinpaintは特にいらないよ。

<最後のUpscale>
inpaintしたパーツを合成してるから、継ぎ目の不自然さがどうしてもでてきちゃう。だから、Denoising Strength小さめでちょっとだけUpscaleしてあげることでその不自然さを解消してあげるの。inpaintしない場合はこのupscaleはなくても良いかも。

それじゃ、やっていこー。

Stable Diffusionでの作業:Upscale1回目

1回目のUpscale。
複数のモデル、複数のDenoising Strengthで2xにUpscaleするよ。元サイズが728x408だから、仕上がりサイズは1456x816だね。
Upscale後、ベースになる絵を決めて、その上に他から良い要素を乗っけていく、という感じで進める。

今回はDenoising Strength=0.3でUpscaleしたこちらの絵をベースに、手元や背景を乗せていって、

こんな感じ。左のガブリエルの足をほかの絵から借りてきて、背景もディティールが良いものに置き換えている。左側背景がうっすら部屋の中っぽい陰影になっていて良い感じ。この絵を使ってさらに2xにUpscaleする。
1回目のUpscaleの目的で描いたように、ここである程度ディティールの足掛かりになる部分ができていると後の作業が楽になるから、ここではなるべく妥協しないで、最終像をイメージしながら作りこんでいくよ。

Stable Diffusionでの作業:Upscale2回目

これも同じように複数モデル、複数Denoising StrengthでUpscaleして合成、という流れ。ただし、2回目のUpscaleはDenoising Strengthの刻みを細かくして大きく崩れない絵を探っていく。
1456x816から2xだから、仕上がりサイズは2912x1632。ちょっと大きめ。

今回はDenoising Strength=0.2を選んだよ。人物部分の描写はひとまず問題ないので、背景のディティールを持ってくる。そこまで明確ではないけれど、でも背景が室内っぽい雰囲気になってきて、作画意図的にもだいぶ良い感じに仕上がってきている。

こんな感じ。

Stable Diffusionでの作業:inpaint

で、このままだと右側の女の子たちの表情や視線の向きが中途半端であいまいなので、これをinpaintで調整する。このとき、SD側でプロンプトを調整してあげる必要があるよ。
今回はPositive Promptに"(looking away:2.0)"を、Negative Promptに"(looking at viewers:2.0)"を入れてるよ。Denoising Strengthは調整次第だけど、今回はいろいろ試してみて0.5を使用。

中央の女の子の視線をやや伏目がちにする。これだけだとちょっと最終像にやや足りないので、ちょっぴり口を開けた絵も作っておく。ここでは上のPositive promptに"(half opened mouth:1.3)"を入れてるよ。数値が大きすぎると大きく口を開けちゃうから、強調の数値はDenoising Strengthとの兼ね合いで調整する必要がある。

よいよい。目線は一つ目を、口元は二つ目を最終的に使うことにする。
翼のある女の子の視線も、天使からやや目をそらすような感じにしたい。こちらはPositive Promptに"(looking away:2.0)"と"(half closed eyes:1.3)"を入れて少し伏目がちになるように調整。

うん、こんな感じだね。
こうしてinpaintで作った各パーツを合成する。

Stable Diffusionでの作業:Upscale3回目と仕上げ

inpaintで作った顔の肌色がちょっと変わっちゃった。なるべく元の肌の色を活かしたいから、目と唇だけ乗っけている。で、おそらくこのままだと合成部分が不自然になるだろうから、Denoising Strength低め、たとえば0.05とか0.1とかで1.2xにUpscaleしてあげると、自然な仕上がりになる。

最後にちょっとだけディティールを調整、Elisaロゴを入れて仕上げ。

おわりに

という感じで、Nijijourneyでもやろうと思えばこれくらい厄介な構図も作れるし、SDと組み合わせてしっかりしたディティールを入れることもできるよ。いろいろ試してみよう!





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