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柳樂光隆が読んだおススメのnote

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面白かったnote、オススメしたいnoteをメモ代わりに追加して紹介します。自分の備忘録的な意味もあります。記事が面白かったらシェアしたり、購入したり、サポートしてあげてください。
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記事一覧

ミシェル・ウィリスのカナダっぽさとアメリカっぽさ

ミシェル・ウィリスの新譜がすごくいい  ベッカ・スティーヴンスのインスタグラムで、ミシェル・ウィリスの新譜が出ることを知ったのが、4月13日のこと。すでにコアポートからフィジカルがリリースされていたのにまったく気がつかず(Amazonで探せなかった)、Spotifyで聴き始めたらとてもよいアルバムで、前作の「See Us Through」も好きだが、断然この「Just One Voice」のほうが私の琴線に触れたのだった。  例によって、柳樂光隆 氏がnoteにインタビュー

実用本位の夢|黒鳥社の新刊『編集の提案』編者・宮田文久による「まえがき」を、書籍発売に先駆けて特別公開!

社会のなかにはきっと、「編集」がなしうることがある。そのヒントは、 伝説の編集者・津野海太郎がつづってきた文章にひそんでいる──。 晶文社での活動をはじめ出版文化の重要人物でありつづけた津野海太郎による未来を見すえる編集論集『編集の提案』。3月15日からの書店・ECでの発売に先駆けて、編者によるまえがきを特別公開! 『編集の提案』 津野海太郎(著)宮田文久(編) 発売日:2022年3月15日 定価:2200円(2000円+税) 四六版/256P+カラー口絵32P 発行:黒鳥

2000年前後のR&Bをめぐる思い出

 NFLハーフタイムショーの興奮冷めやらぬ状態です。メアリー・J・ブライジからのケンドリック・ラマー、そしてエミネム、素晴らしかったですね。もちろん、ドレーもスヌープも50セントも良かった。  さて、先日来、星野源の番組がJ・ディラおよびディ・アンジェロを取り上げたことがきっかけで、Twitterで日本におけるネオ・ソウルの受容が議論されています。このあたりの話を眺めていたら、高校生(1999-2001)だった当時の記憶がフラッシュバックしたので、その記憶を書いておきます。こ

「ヴードゥー」の音響とその先にあるもの

 このところ改めて、録音エンジニアのラッセル・エレヴァードの名前が気になっている。ディアンジェロの復活作「ブラック・メサイア」はもちろんだが(すでに7年も前か)、近年の注目を集めているミュージシャンたち、例えばカマシ・ワシントン、ジョン・バティステ、トム・ミッシュ&ユセフ・デイズらの新作で、ミックスや録音を担当しているからだ。  なかでも個人的にハマったのがバッドバッドノットグッド(BBNG)の「トーク・メモリー」だった。  エレヴァードの仕事については、昨年本作リリース

COVID-19時代におけるBTS――「Dynamite」「Butter」「Permission to Dance」

 2020年、新型コロナウイルスのさなかにリリースされたBTS「Dynamite」にはたいへん勇気づけられた。「Dynamite」のMVを最初に観たとき、いかにも2020年的な80年代リヴァイバルの流れを感じた。ジョン・トラボルタのポーズがなされ、これから80年代が始まろうという熱気に満ちたディスコの時代が演じられる。とは言え、そのパステルカラーに満ちた世界は、ヴェイパーウェイヴ~フューチャーファンクを通過したうえで見出された80年代でもあり、それはアメリカ白人的なノスタルジ

体育館のピアノ

今週は、栃木県に行っていました。 小学校の音楽鑑賞会のためで、サックス奏者の夫とデュオで、6校7公演してきました。 公演の中で気付いたこと、考えたことは沢山あり、そのうち書くと思いますが、先にピアノのことだけ書きます。 全ての学校で、体育館の壇上で演奏したのですが、お世話して下さる教育委員会の方や先生が、たびたび「ピアノの状態が悪くてすみません」とおっしゃるのですけど、ピアノの状態は勿論良くはないんですけど、私自身はものすごく楽しい気持ちで弾いており、全く気になっていませ

ルイス・アルベルト・スピネッタの軌跡①/アルメンドラ ロック・ナシオナルの始まり

※有料にしていますが全文読めます。 1960年代末アルゼンチンロックの黎明期からキャリアがスタートし、ロック・ナシオナルの礎のひとつを築き上げたルイス・アルベルト・スピネッタ。2012年に肺がんで亡くなるまで、短いスパンでアルバムをリリースし続け、長いキャリアの中で晩年に傑作を立て続けにリリースした事で、日本でも多くの新たなファンを増やしていた。日本盤が出ていない事と、長いキャリアの中でバンドやソロを含め名義が多数ある事から、キャリアの全体像を俯瞰できる場がほとんど無い。大

有料
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[Lisztomania!] Case3:イギリスとB級音楽の話

各地に生息する音楽好きの方々にそれぞれの音楽遍歴や音楽にまつわるあれこれについてお話を伺う連載企画です。  はじめにこの企画を思いついたときから、最初の3回まではインタビューしたい人をあらかじめ決めておいた。3人目はいつも熱心にレコードを探し、DJではツボを押さえた幅広い選曲で楽しませてくれるyokoさん。音楽の聴きかたに興味を持っていたのと、信頼を寄せている女性にぜひ出てほしいと強く思っていた。今回はyokoさんが若い頃に住んでいた地元・埼玉に昨年オープンしたという素敵な

「Z世代とメンタルヘルス」をどう語るか?~国際比較からみえる「視座」という問題点~

格差・差別・気候変動。不安定な社会の中で、世界中で重大な課題として可視化されてきた「メンタルヘルス」。こころの病気は誰であっても罹患する可能性があり、周囲と社会による支援が必要不可欠である。なかでも、「Z世代(Generation Z)」には、彼らのメンタルヘルスを脅かす大きな不安がのしかかっている。 ※「そもそもZ世代とは?」という疑問を持たれる人もいるだろう。以下に簡単な説明をつけておく。(既に知っている人は読み飛ばしてください) 「Z世代」に厳密な定義はないものの、

Around The Lives By The Sea #6

 音楽ライターの小熊さんが書いてくれた僕のアルバムに関する記事が話題になっています。アルバムに付属する「後藤正文を巡るアーティスト相関図」の制作秘話だけでなはく、僕のこれまでのキャリアと小熊さんの歩みが交差するところなども書かれていて嬉しかったです。   アルバムに相関図を入れたいなという思いは、R+R=NOWというグループのライブを見に行って、素敵な相関図を手に入れたところから始まります。  音楽ライターの柳樂さん(相関図の裏面のライナーノーツを書いてくれています。どっ

「後藤正文を巡るアーティスト相関図」を制作しながら学んだこと

Gotchこと後藤正文さんによるニューアルバム『Lives By The Sea』が、3月3日にLP/CDでリリースされました。 両方に封入される「後藤正文を巡るアーティスト相関図」を、わたくし小熊が制作させていただきました。監修は柳樂光隆さんでライナーノーツも執筆。デザインは川井田好應さん。 おかげさまで好評らしくてよかったです。アルバムの内容が素晴らしいのは言うまでもありません。なにせ抜群に音がいい! 曲もいい! Gotch:気持ちのいいシーンの流れを作りたいとは思

2021年のクランク再考

ヒップホップのサブジャンル、クランクについて書きました。記事に登場する曲を中心にしたプレイリストも制作したので、あわせて是非。 クランクの重要性を再考「クランクは死んでいない」。メンフィスの新進ラッパー、Duke Deuceは2019年の年末にその名も「Crunk Ain't Dead」という曲を発表した。2020年にはキング・オブ・クランクことLil Jonに加え、Juicy JとProject Patを迎えた同曲のリミックスを発表。その勢いでリリースしたアルバム「Mem

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オーケーとその他スーパーたち - 14店舗のフィールドワークと500人のアンケートでわかったシンプルな結論

「ショッピング・イズ・エンターテイメント」と吹聴する楽天的な人々がいるならば、私は「スーパー・イズ・エンターテイメント」とくぐもった声で叫ぶだろう。 私が住む板橋区の辺境はスーパーの激戦区だ。数年前に西友がオープンしたとき、街全体が屋外広告に染まった。 自転車で10分以内の距離に、大きなスーパーだけでも13店舗もあるからだ。オーケー、イオン、イトーヨーカドー、サミット、ヨークマート、ライフ、三徳、ドン・キホーテ、ダイエー、ベルクス、東急ストア、東武ストアに西友。これほどの

Jazzに裏切られ、Jazzに救われた話

結論から言うと、僕は7年かかって、ようやくジャズを許せたのだ。 自分が勝手に愛し、そして勝手に恨み憎んだ音楽を。 皆さんはじめまして。ミュージシャンの桃井裕範と申します。 noteを始めようと2年半も前に作っていたアカウントを放置したのち、今回重い腰を上げてようやく1つ目の記事を書き始めました。 「誰だよ?」という方が殆どだと思うので、本編の前に簡単な自己紹介をしておきます。 桃井 裕範 | Hironori Momoi ドラマー、シンガー、作編曲家。東京都出身。