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Home and Native Lands, in Toronto

2022年もあっという間に終わり、2023年になりました。今年は世界情勢が落ち着き、環境問題にさらに一歩踏み出せる年になるといいですね。みなさんにとって良い年になりますように。進行中のドキュメンタリー映画、Home and Native Lands は2022年6月、トロント市内での撮影を行いました。この撮影によって、素材は全て揃い、現在プロダクションは最終段階に入っていますが、トロントでの撮影風景を少し紹介します。

日本生まれのStuart Cooper Robinson さん

以前、Archiving, Home and Native Lands で少しご紹介したスチュアート・クーパー・ロビンソンさん、日本生まれ、日本育ちのカナダ人です。Home and Native Landsに登場する主人公二人のうちの一人であるスチュアートは、聖公会(アングリカン教会)の宣教師であった祖父、ジョン・クーパー・ロビンソンから三代にわたり日本で暮らしました。ロビンソン家の人々は日本にほかならぬ愛着をもちながらそれぞれの人生を過ごし、「Home」=「日本」が彼らの心の中にあったかもしれません。

ロビンソン家三世代 中央が幼少期のスチュアート

スチュアートは1921年名古屋で生まれ幼少期を過ごしました。彼の少年時代のエピソードは彼直筆の自伝をもとに、映画ストーリーにも反映されています。その後、スチュアートは日中戦争により日本の対外交関係があやしくなる1939年まで両親が働く神戸カナディアンアカデミーで学びました。今も神戸に存在するカナディアンアカデミー。1913年にカナディアン・メソジスト・アカデミーとして開校した学校は、当時から国際色豊かな学校でした。2021年にはスチュアートのアカデミーの学友である女性(アメリカ在住)にインタビューをし、学校でのエピソードなど貴重なお話を聞きました。1939年、スチュアートと家族は、家族5人の乗船旅費を工面し、先にカナダへ帰国した父親カスバートのもとへと、戦争色が強くなる日本を後にしました。

神戸カナディアンアカデミー時代のスチュアート

歴史的再現・再演 リエナクトメント

2011年、スチュアートは父親として、医師として、その実りある人生を終えました。ドキュメンタリー映画は、過去に起こった出来事や過去に生きた人を語るとき、リエナクトという表現方法を使います。いわゆる歴史再現方法です。ヒストリカル・リエナクト、またはリエナクトメントといいます。主人公本人が自身で物語を語れない場合、リエナクターという役者さんにその人の代わりに物語を語ってもらいます。もちろん、ドキュメンタリー映画の場合、真実に基づいてストーリー構成をするため、様々な資料をもとに話は組み立てられ、脚本(といってもナラティブ映画とは少し違います)が作られます。歴史資料、直筆の日記や手紙、写真、家族へのインタビューなど、多くの資料を集め、吟味し、ストーリー構成をしていきます。そして、再現撮影用に必要な小道具も用意します。家族から借りることができる資料には限りがあるので、ときにプロダクションで用意することもあります。

撮影用小道具を用意するプロダクションスタッフ

未だコロナ安全対策を用い遂行されるプロダクションは、最少スタッフ人数、決められた時間のなかで撮影を行いました。二日間でスチュアート(役者さんですが)が語る彼のライフヒストリーを全て録り終え、2022年秋頃から本格的な編集へと入っています。ラフカット、ファインカットを経て、この後のファイナルカットまで、アーカイブ整理やポスト・プロダクション作業はまだまだ続きます。

監督と役者さんで、小道具を用いる演技の確認
撮影監督と監督 ショットの相談

今年も続行するHome and Native Lands のプロダクション、この先も書き進めていきたいと思います。2023年、日系カナダ人歴史を映画制作とともに今一度振り返りながら、世界が全ての人にとって平和で差別ない社会となりますように。

[参考写真資料]
バナー写真:Home and Native Landsトロント撮影現場 ©Alice Shin Productions
写真1:Robinson Family Photo (John, Stuart, Cuthbert) in Japan, 1920s, Jill Cooper Robinson Private Collection
写真2:Stuart Copper Robinson at Canadian Academy, Kobe, Japan, 1930s, Jill Cooper Robinson Private Collection
写真3-5:Behind the Scenes, On set of Home and Native Lands, June 2022 トロント撮影現場 ©Alice Shin Productions



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