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貝がらと海の音(夏の夢想)

海から貝がらを拾ってきた
遥か遠くから
流されてきたであろう貝がらを
僕は大事に握りしめ
そっと耳に当てている

そっと目を閉じると
ヨーロッパ大陸の面する
遥か北大西洋から
アフリカ大陸を伝い
南大西洋へと流れ落ち
カラファテ ウシュアイアを回り
ポリネシアの三角を横切り
太平洋を流されてきた……
かも知れないという
途方もない夢をみる

一つの貝がらから夢は膨らむ
貝がらの記憶を辿って
地球上を旅できる

耳に当てた貝がらの
なかで響く波の音
ごおーっという音は
遠い遠い貝の頃の
音の記憶を届けてくれるよう
あの殻の奥底からの
果てしない音

ある真夏の日
僕は海で貝がらを拾った
大事に握りしめ
耳に当てている
僕がそっと目を閉じると甦る
貝がらのひと夏の思い出

「楽しい航海だったよ
 色んな海の景色を見てね」

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