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【詩】春はまだ遠く

春はまだ遠く
日照未だ短し
日暮れ寂しく
夜はしんしんと

夜明け前の朝方
道の両側には
まだ湿り気がある灯の光が
そこかしこに点綴している

陰鬱な雲が
橙色に少し染まって
アフリカゾウのように
西から東へと連なって動いている

その空の下
私は丘の上を目指し
アスファルトの小路を
スリップオン・スニーカーで
独り蹴っていく

じりじりと
丘へと続く高台を上ってゆく
地面には比較的モダンな
石畳が敷き詰められている

辺りの真っ赤な枯れ葉が
仄暗い中でも赤々と光るようで
冬枯れの美しさを
一際 引き立てていた

更にその小路を行くと
私は丘の頂上に着いた
時刻は7時3分
まるで水墨画のような
たなびく雲間に
真っ赤な陽の光が
煌々と上っていたのを
立ち尽くして呆然と見ていた

私の徒歩の疲労を
辺りの凛とした空気が
まるで慰めるかのようだ
清々しい汗を感じる
両手を膝に当てて屈み
爽やかな疲労を再び噛み締める

コカ・コーラの喉越しが気持ちいい
すっかり温かくなったこの身体を持て余す
ああ 陽の光がようやく
輝きを増してきて
一日の始まりを告げている

春はまだ遠く
日照未だ短し
日暮れ寂しく
夜はしんしんと

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