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010 高取焼研究会オンラインシンポジウム

2023年12月17日、オンラインで高取焼研究会シンポジウムを開催し、消費地での動向を発表し、生産地からのコメントをふまえ、現状での知見をまとめた。
高取焼は、黒田家の関与の下、17世紀初頭に開窯したもので、茶陶の存在が知られている。消費遺跡からは高取焼かと考えられるものは出土するものの、まとまった量はなく、実態が明らかではないところが多い。また、近隣の唐津窯との親縁性もあり、そもそも高取焼とは何を指すのかという点も十分な議論ができているわけではない。つまり、高取焼の名は知られているものの、その実態は必ずしも明らかではないというのが現状であった。
そこで、昨年度から京都・大坂・堺・福岡と言った消費地遺跡と高取・唐津といった生産地を対象とする研究者が集い、現状の資料から現時点でわかることを明らかにするということを目的として〈高取焼研究会〉を立ち上げた。オンラインを主としつつも、京都・大阪での資料見学を行ない、その一つの成果発表としてオンラインシンポジウムを開催した。

私個人としては、藩の関与がどれほどであって、それがどのような流通の在り方として見えてくるのかという点に興味がある。藩の関与が強い場合、その主眼が茶陶などの製品に目が向けられるのか、江戸時代後期のように藩の経済に目が向けられるのか。前者であるならば、そこで作り出された茶陶は三条瀬戸物屋町の陶磁器商を経由するのか。窯跡の発掘調査において大量に出土している日用雑器の陶器はどのような流通をしているのか。である。薩摩や萩、伊賀などが参照すべき事例となり得るので、印象論や感覚的な議論を超えて、ものの実態に即して議論を進めていきたいと考えている。
今回のシンポジウムでは、それぞれの地域に根を張る研究者の努力はあるものの、現時点では、まだまだ資料が足りないという現状が再認識できた。これは、研究者の努力不足ではなく、江戸時代以降の遺跡は埋蔵文化財包蔵地になっていない(発掘調査の対象とならない)ことが大きな原因である。その中で、懸命に資料の収集に努められていることについては頭が下がる思いであるし、大変なことではあるが今後も続けていっていただきたいと切に願っている。研究成果を公表し、近世以降の遺跡が埋蔵文化財包蔵地になるようコンセンサスを得られるよう努力をしていくことが求められる。

今回は消費地のあり方をみていったわけであるが、これからは生産地のあり方を
みていくことになる。これを幾度となく繰り返す中で、高取焼のあり方がみえてくるのだろうと考えている。その過程で、各地で見学をお願いしたりコメントを求めることもあると思うが、ご容赦いただきたい。
なお、本シンポジウムの内容については、2024年度に報告集を刊行する予定である。その際にはぜひ手に取って(実費で)いただければ有り難い。

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