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君たちが笑顔で走れる世界を見たいから

ついにきた。待ちに待ったこの日がきた。

ある日の夕方、近くの公園に走りに行く準備をしていると、2歳の息子が突然こう言った。

ドコイクノ?ボクもイッショにハシリタイ👶」

きたー!初めての「走りたい」。自発的に走りたいと言ってランニングにでかけるのは初めて。夢の男ふたりの親子ラン。彼の気が変わらないうちに急いでバギーランで公園に向かう。到着すると「ボク、ハヤイヨー!!」と勢いよく走り出した。

Centennial Parkの美しい夕焼けを眺めながら走る息子

雄大な自然の中、マジックアワーのタイミングでサンセットラン。贅沢。ゼェゼェと息を切らせて笑う息子に「走るの好き?」と聞くと「ハシルノ、スチ👶(走るの好き)」と嬉しい答えが返ってきた。

速く走れなくたって、長く走れなくたっていいから、これからも一緒に楽しく走れる世界を作りたい。彼が明日もランニングを好きでいられて、笑顔で走り回れる世界をつくることは、1人ひとりがいつまでも健康で、自己肯定できる人生を送れる世界をつくることに繋がると信じている。

息子のためであり、自分のためであり、大切な仲間のためであり、世の中のためであると信じている。

それは一体どういうことなのか。最近、自分の言葉で発信ができていなかったので、改めて私たちがRuntripというサービスを、なぜ、どんな想いで作っていて、これからどうしていくのか。そんなことをつづろうと思う。

なぜランニングはペナルティになるのか

人は本来、走ることが気持ちいいのだ。これは狩猟採集民として走ることで食糧を調達していた頃の名残りだと言われている。アンデシュ・ハンセン著「運動脳」では、運動(とりわけランニング)することで人々の脳は成長し、ストレスや不安が解消され、集中力が高まり、意欲が湧き(モルヒネ投与レベルの高揚感を合法的に得られる!笑)、記憶力が鍛えられると紹介されている。

にもかかわらず、多くの人たちは大人になる過程で「走ること」がもはやペナルティのようにネガティブなものになる。これは、ランニングというスポーツがシンプルであるがゆえに定量評価 / 相対評価しやすく、指標となる「数字」が見えやすいことが原因であると思う。

しかし「数字」は、あくまで1つの結果でしかなく、その数字の背景にはさまざまな"コンテキスト"が含まれている。私は、その"コンテキスト"に光を当てること、単なる結果でしかない「数字」に対してそれ以上の価値を与えることこそが、人々がいつまでも走ることを好きでいつづけられる世界において重要であると考えている。

"数字"にそれ以上の価値を与える

「数字」に価値を与えるというのはどういうことか?

具体的にRuntripでは、人々が走った結果である「数字」に対して、「感情的価値」と「経済的価値(利得性)」を付与していきたいと考えている。

感情的価値の付与

まずは「感情的価値」から説明する。

まさに冒頭で紹介した件がよい例だと思う。私が息子と一緒に走り、表現しきれない幸せと多くの学びを得た時間を、一般的なランニングログでは下記のように表される。

数字だけで表現された息子との記念すべきランニングログ

これはApple純正の「フィットネス」アプリの表示だが、世界中のほとんどのランニングアプリは概ねこうしたUI/UXとなっている。

確かにあの日のランニングは、4.23kmで、29分48秒で、1kmあたり7分2秒のペースで、300kcalで、123拍/分だった。でも、私にとってそんなことでは表現しきれないような、いつまでも大切にしまっておきたい価値が、この日のランニングにはある。

ちなみにRuntripでは、この日のランニングを投稿するとこのようなUI/UXになる。

Runtrip内の投稿ログと計測ログ
投稿ログにはランナーからのコメントも数十件届いた

ありがたいことに、ほとんど会ったことのないランナー数百人からの「NiceRun!」や、共感コメントが届いた

他のランニングアプリで公開されたこの日のまったく同じログに対しては、リアクション9件、コメント0件だ。フォロワー数に差があるので、リアクション数/フォロワー数の割合で並べても、他社アプリは3%Runtripは19%と大きく差がでた。

数字だけ見れば短くて遅いただのランニングだ。でもその裏には大切なコンテキストがある。2時間台で走るフルマラソンの記録や、1km3分を切るようなインターバルの記録にももちろん価値があるが、その「数字」に反映されない裏側の物語に光を当てたい。

これはサービス開発におけるフィロソフィーの違いで、他アプリのUIと比べてどちらがいい悪いということではない。Runtripもただリアクションが集まることだけを善とするサービスを作りたいわけではない。ただ、孤独性の高いランニングというスポーツにおいて、たくさんの称賛や応援が届くことは、継続する上での大きなモチベーションとなるのは間違いない。

私は二度と訪れない今日という1日をただの数字として積み上げるよりも、その日、その時に感じたこと、見たこと、喜びや苦しみ、悔しさや達成感、そういった「感情的価値」と一緒に残していきたいと思っている。そして、それを死ぬ前に見直せたら楽しいだろうななんて密かに思っている。

先ほどの例は特別な日だが、何の変哲もないただのランニングも、私にとってはかけがえのない1回のランニングだし、そうした日々を大切に積み重ねたい。

経済的価値(利得性)の付与

感情的価値の付与に続いて、経済的価値(利得性)の付与について説明していく。

もうすでに「走行距離」が経済的価値に置き換わる世界がきている。

学生時代、毎日何十キロも走る生活をしていた私は「あ〜あ、走ってる時間をお金に変えられないかな」なんて、ずん・飯尾さんのネタみたいなことをぼやきながら走っていたが、本当にそんな未来が来た。

歩数や移動距離によって、ポイントやマイル、暗号資産が貯まるといったサービスは世界中にたくさんある。特に2022年はSTEPNがそのブームを引き上げ、わずか数ヶ月で数百万のユーザーを獲得し「Move to Earn(M2E)」という概念を世界に知らしめた。

南アフリカDiscovery社は、Vitalityという健康増進型保健商品を世界中に展開している。例えば歩数目標をクリアすればさまざまなリワードをもらえたり、運動することで最終的に保険料の割引といった経済的ベネフィットが提供される。Vitalityは25年前から商品化されているので、健康活動に対して経済的価値を与えられる「Move to Earn」の根幹の概念は、実はそれほど新しいものではない。しかし、暗号資産と結びつくことで(特に初期は)期待以上に稼げる事象が起きたことから、投機的な動きが加熱し一気にブームになった。

Runtripも御多分に洩れず、運動量によって経済的価値が提供されるサービスへと展開していく予定だ。これはMove to Earnという言葉が一般的になる前からの計画だったのだが、残念ながら我々の成長スピードに限界があったため、世の中に追いつかれてしまった(笑)。でも結果オーライというか、むしろ大きな風と波がきている中で帆を張れる。

私たちは、いわゆるWEB3的なM2Eサービスとしての展開ではなく、最初はあえてWEB2的なポイントサービスに近い形から入る。これは戦略的な意味合いが大きい(いや、単純に難易度が高いこともある笑)のだが、その辺りはまた別の機会に。

残念ながら現時点でのWEB3的M2Eサービスは、サスティナブルにそのエコシステムを運営しきれる保証がない状態だ。特にそのエコシステムを成り立たせるための「原資」が大きな論点となるが、もっと本質は「人々がそのエコシステム内に留まり続ける理由づくり」なのだと思う。

そのサービスに留まる理由が「稼げるから」だと、もっと(一時的に)稼げるサービスが出たら民族大移動が起こる。すると、その大移動に出遅れた人たちがババを引くことになる。だから多くのサービスは人々を留まらせるために「ゲーム性」を提供して「稼げる」とは別の目的を提供しようとしているし、「稼ぎ(げ)すぎない」運営を目指している。

私たちは、人々を留まらせるために「感情的価値」こそが重要になると考えている。人は「機能的価値(外発的動機)」を求めてサービスを使い始め、「感情的価値(内発的動機)」によって留まると言われているが、これはM2Eサービスにおいても同じことが言える。

Move to Earn and Connect(M2E&C)で第二章へ

Runtripは「Move to Earnand Connect(M2E&C)」の思想を提唱したい。

使い始める理由は、わかりやすく「経済的価値(利得性)」だが、使い続ける理由は「感情的価値(コミュニティをはじめとした定性的価値)」となるため、Earnだけでは不完全だというのが理由だ。この辺りはすでに多くの人も指摘している。

Runtripは感情的価値の指標となるユーザー継続率が高い。いわゆるバケツの穴が塞がりつつある状態で、これからいよいよ水を入れていくフェーズになる。課題もたくさんあるが、大局的に見ればついに第二章突入感がある。ワンピース的に見ればグランドライン突入感がある。

創業以来、コツコツと地道に積み上げてきたこと、仕掛けてきたことが、いよいよ線で繋がるタイミングで、とても面白い。スラムダンク的に言えば「赤木くんと小暮くんがずっと支えてきた土台の上にこれだけのものが加わった。それが湘北だ」感すらある。

M2E&Cサービスを目指して、Runtripは「もっと自由に、楽しく走れる世界」を広げていく。そのための準備ができているし、直近でそれらを実行に移すための資金調達も完了した。

金融資産よりも健康資産の時代に

資本主義経済が台頭し加速した近代・現代社会において、人々は何よりも優先して富を築いてきた。時には寝る間も惜しんでインスタントやファーストフードを食べながら、とにかくがむしゃらに働くことが美徳とされる時代だった。しかし皮肉にも、時に健康を害しながら得たそのお金で、人々が最後に買うのは健康である。

こと日本においては、世界トップクラスの医療水準と社会保障制度があり、多少健康に不安を覚えたところで国が助けてくれた。しかし、少子高齢化が加速する今、私たち世代がこうした恩恵にあずかれるのかはかなり怪しくなってきている。私たちの子ども世代、さらにその子ども世代は、より難しくなるだろう。

これまでの社会と比べて、個人が健康を得るために支払うべき費用は高騰する。だからこそ、健康でいつづけるため「健康資産」形成の必要性が高まる。健康はすぐに金を生まないが、健康でなければ金を失うし、健康であることの積み重ねが結果的に金融資産の形成に繋がる。

そのため、個人としての行動はもちろん、社会全体としても、今以上のコストを支払って、健康な人が健康でいつづけるための行動を促進する日がくるだろう。結果的にその方が、病気になった人を治療し続けるコストよりもやすくなるだろうし、今後そうしたエビデンスはいくつも出てくるだろう。

この時に支払われるコストや、抑制された医療費の一部をM2Eサービスのインセンティブ原資にすることができれば、いよいよサスティナブルなビジネスモデルが構築できるはずだと考えているが、そのためのハードルはまだまだ高い。ぜひ誰か一緒にチャレンジして欲しい。

日本のみならず、世界もいずれ同じ課題にぶち当たる。そこに、世界で最もこの課題が顕在化している日本でビジネスする面白さがある。

予防医療×Doスポーツ市場

これからの世界は「健康な人を健康でいつづけるためのサービス」が求められる。その中で、スポーツがもつ「楽しい」という要素は、特に健康に対する危機感がない人たちの行動変容において重要なキーだ。

予防医療におけるサービスは、主に「食事」「睡眠」「運動」の3つのカテゴリに集約されるが、「運動」の中で最大市場となる"ランニング"が、より楽しいものとして人々に浸透し継続性をもたらすとしたら、社会に与える影響はとても大きい

自分を肯定できる最高の人生

社会構造から、なぜランニングが必要なのかを(ポジショントーク満載に)語ってきたわけだが、そういうビジネス的な話を抜きにランニングの重要性を最後に伝えたい。

私はこの数年間、ほぼ24時間、365日ランニングについて考え抜いてきた。そこで、人々がなぜ走るのかについての現時点での結論がある。

それは「自己肯定感の醸成」だ。

  • 自己記録更新による達成感

  • 走る行為そのものがもたらす多幸感(脳科学的にセロトニン、メラトニン、ドーパミン、アドレナリン、エンドルフィン、等、さまざまな幸福ホルモンが分泌されることがわかっている)

  • 集中力・記憶力等が向上することによる仕事へのプラスの影響

  • 性格や生活のポジティブな変化と正のスパイラル

  • 小さな苦難を今日も乗り越えた自分自身への信頼

など、いろいろな理由から「ランニングをはじめた後の自分の方が好き」という人は本当に多い。

考えてみて欲しい。
自分を好きでいられる人生こそ至高ではないだろうか。

地位や名誉や資産があっても、自分を肯定できない人生は悲しい。少なくとも私は、自分の子どもたちに対して自分を好きでいられる人生を送って欲しい。

もちろんランニングじゃなくても自己肯定感を得ることはできる。でも、自分ひとりで完結し、いつでもどこでも行えて、健康にもなれる。そんな「ランニング」は手段として最も効率的だと思う。だいぶバイアスがかかってるだろうが(笑)、結構本気でそう思っている。

「もっと自由に、楽しく走れる世界へ。」

だからこそ私たちは「もっと自由に、楽しく走れる世界へ。」というミッションステートメントを掲げている。そのために、上記で述べたようなチャレンジをしているのだが、あくまでそれは手段であり、何よりも大切なことは、1人でも多くの人がランニングを通じて幸せな人生をおくれるようになることだ。

Runtripは、そのために存在している。当然、ピッチイベントで1位になることでも、何十・何百億と調達することでも、ユニコーン企業になることでもなく(全部実現したいが!笑)、あくまで、目的は幸せな世界の創造だ。瞬間風速ではなく、持続可能な形で、全世界的に、時を超えて次世代につなげたい。これは僕たち世代の使命だとも思う。

そのためにも、もっとも大切な資産である「時間」をRuntripに費やしてくれているメンバーたちの幸せを改めて大事する。働きがいはもちろん、心身の健康や、大切な人との時間をきちんと確保できるワークライフバランス、そして経済的条件においても満足できる状態を目指す。

恥ずかしながらまだ理想には程遠いが、ここから始まるグランドライン、第二章の世界でしっかり羽ばたくことで、間違いなく実現できる。だから、そのためにこれからもぜひ力を貸して欲しい。

そして、まだ見ぬ仲間との出会いも楽しみにしたい。


話は最初に戻る。
実は次の日、息子に「走るの好き?」と聞いたら「ハシルノ、スチ チガウ👶(走るの好きじゃない)」と返ってきた。理想の世界の実現は遠い。

よし、父は頑張るよ。君たちが笑顔で走れる世界が見たいから。


補足

補足すると、Runtripが目指す世界は数字を追い求めることへの否定ではありません。語ると長くなるからよかったらぜひ下記の動画を見てください(笑)


余談

余談ですが、世界最速・最強のエリウド・キプチョゲ選手にRuntripのミッションステートメントを書いたTシャツをプレゼントできました。いつか彼とランニングの未来について語り合える日がきたら最高だ。

世界最速・最強のエリウド・キプチョゲ選手

「もっと自由に、楽しく走れる世界へ。」
「Running for a freer and happier world」

Runtripのミッションステートメント

株式会社ラントリップ
代表取締役 大森英一郎
Facebook:https://www.facebook.com/eiichiro.omori
Twitter:https://twitter.com/eiichiro
Instagram:https://www.instagram.com/eiichiro.run/


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