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~コンシャス~あの日みた光のなかで=


「君、意識の力って信じてる?」

八神はとつぜん話題をかえてきた。

「なにそれ?、いみわかりません」

雅人は勉強に集中したかった。



5日後から始まる。1学期期末試験。

中学2年。

裕福な家庭で過ごし、姉に続く形で当たり前に中学受験した。

僕にとっては習い事のような感覚だった。

だから、2年前の2月1日。

試験本番の最中も、終わった後も、いままでの生活に変化が訪れるとは思わなかった。

今後も引き続き、週5で塾に通って、小学校に通い続けて、、



中学校に入ってからはなにもかもが変わってきた。

まずは、通学が変わった。

バスで30分。電車で15分。そこからさらに徒歩20分。



毎日通わなくてはいけなかった。

雅人は典型的な中だるみ症候群に入っていたのだった。



成績上位30位以内をキープできていたのは、中学1年の最初の方だけだった



中学2年に入ると、悲惨なもので、赤点を回避するのが限界。



進級に黄色信号がつき、親もとうとう家庭教師という最終手段に出た。



彼がはじめてうちにきたのは1週間前の今日。

とりあえず試験期間ということで、週3回契約になっている。

だから、今日は八神とあうのは3回目だった。



八神海斗。38歳。無職。(起業してるとか?)東京大学理学部物理学科卒業。

家庭教師としてはこれ以上ない経歴をもっている彼だが、いまは忙しいとかで(無職じゃないの?)ほとんど生徒をもっていないらしい。



彼が家にはじめてきたときの第一印象は

「かっこいい」

だった。

男である僕が言うのもなんだが、男でも惚れるとはこの人のことだろう。

なんだろう。

顔がかっこいいのもあるが、まさにオーラというやつが彼にはあった。

彼が近くにいるだけで自分が強くなったような錯覚を抱くってかんじ??



「どうぞ~、いらっしゃい~~」

母の声もいつもよりも高いトーンでおひと様仕様になっている。

「中山様の自宅で間違いないですか」



いや、表札にかいてるから当たり前だろ



「はいー、そうですー」
「八神せんせいですね」

「さようです、どうぞよろしくお願いいたします。」



「こちらこそ~~」



近くで見ると、彼は筋肉隆々のからだつきであった。



男のあこがれ要素を福袋にしたような人だった。



彼と目がこちらを向くと僕はおもわず目をそらした。

「きみが雅人くんだね」「よろしく」

「ぉねがいします。。」



「先生、、お茶をいれますから、リビングへどーーぞ~」

「お気遣いいただきありがとうございます」





彼との契約は以下のとおりである。



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             契約書

中山美穂 様



    担当生徒:中山雅人

    担当教師:八神海斗

    指導科目:数学,英語

    指導時間:3コマ/week (1コマ 2h)



依頼者は非依頼人に以下の金額を払うものとする。

    ¥////////////////////////////////

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母はいまの僕の現状を彼に説明する。

彼はなにひとつ表情を変えずに母の話を聞いていた。

よっぽどの自信があるんだろうな。

でも、僕は結構てごわい生徒だよー。



もはや、じぶんひとりでは収拾がつかないほどの成績低迷ぶりであったため、僕は半分自暴自棄状態だった。

とはいえ、メンタルはくそ弱いので、進級できないという不安からは逃れられなかった。

実際、彼に期待している自分のほうが大きかった。



「じゃあ、はじめるよ」

いすを引く音が聞こえた。

母の説明が終わったのだ。



試合開始のゴングはいまなった。



~第1話 登場  終了~

第1話 登場


第2話 混沌


薄暗い、じめっとした日だった。

朝から感じていた空気だった。


雨の日独特の、地面から湧き出てくるような臭いにおい。

あの「雨のにおい」は雨が地面で跳ね、とても細かい微粒子(エアロゾル)として分散したときに、地面の微細菌の代謝物などがともに空気中に舞い散ることによっておこるらしい。

いつの日か本で読んだ気がする。


18:20。

今日の仕事は終わりとする。

いや、正確にはまったく終えられていないが、今日はこれ以上やってもはかどらないだろう。

今週末の会議の資料作り、発表練習、進めているプロジェクトの予算案作成。


ここずっと、仕事をすることが楽しいと思えていない気がする。


光通と呼ばれる大手広告会社に総合職として入社してから、18年。

40代にも突入し、周りの同期たちは順調にキャリアを構築している中、私は、産休、育休を繰り返し、キャリアのレールにのれなかった。

総合職として入ってはいても、任されるのは自分よりも何歳も年が低い子たちとの共同プロジェクトばかりだ。


会社から最寄り駅までの道のりを、ピンクのキリエの傘を差しながら、黙々と歩く。


だけど、もう自分のことだけを考えられる人生は終わった。

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