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(サッカー)2023.11.10_地域CL_福山シティFC×wyvern@めぐみB


introduction

今日は全国地域サッカーチャンピオンズリーグを観戦するために、宮城県のみやぎ生協めぐみ野サッカー場に来ている。JFL昇格を賭けた激しいサバイバルが繰り広げられる1次ラウンドは本日が大会初日。自分が観に来ているグループBは、東北リーグのブランデュー弘前FC、東海リーグのwyvernとFC刈谷、そして中国リーグの福山シティFCの4チームが同居。10:45から行われた第1試合ではFC刈谷とブランデュー弘前FCが対戦し、2-2のドロー決着となった。第2試合は福山シティFC×wyvernの対戦カード。この試合で勝敗がついた場合、勝者はこのグループでかなり優位に立つことになる。

第1試合はサッカー場のAグラウンドで行われたが、第2試合はピッチが変わってBグラウンドでの試合。ピッチが変わるとはいえ、AグラウンドとBグラウンドは隣接していて、観客席は両ピッチに挟まれて一体化した構造となっているため、Aグラウンドの観客席を出てコンコースの反対側に出れば、そこがもうBグラウンドの観客席だ。午後は雨の予報が出ていたので、第1試合の選手挨拶を見届けたらすぐさま荷物をまとめ、Bグラウンドに移動。こちらの観客席の最後列はAグラウンドの観客席が覆いかぶさっていて屋根がわりになるので、雨具が不要なのだ(事前リサーチ済)。個人的な思い出になるが、こちらのBグラウンドでは11年前の2012年に一度だけ東北1部リーグの試合を観たことがある。「塩釜NTFCヴィーゼ×FCプリメーロ」という、なかなか味わい深いカードだ(笑)。

福山シティFCは中国リーグ王者としての大会出場。パンデミック下で行われた2020年の天皇杯でベスト4進出を果たし、準決勝で同大会優勝を果たした川崎フロンターレに挑んだのは記憶に新しい。リーグ戦では2017年のクラブ創立からコンスタントに昇格を重ね、広島県リーグから中国リーグへの昇格初年度となった2022年にいきなり優勝を果たし、前回の地域CLにも参戦している。その前回大会では1次ラウンドで惜しくも敗退。満を持して臨んだ今季は、かつてツエーゲン金沢を北信越リーグからJFL昇格に導いた上野展裕監督を指揮官に招聘。今季の中国リーグは18戦全勝、69得点6失点という圧倒的な戦績で連覇し、JFL昇格への挑戦権を得ている。

対するwyvernもまた、福山と同様に新進気鋭のチームだ。本拠地を刈谷に置いて2015年から愛知県の西三河リーグに参戦し、地道に昇格を重ねて昨季は東海2部リーグで優勝。初めての東海1部リーグへの挑戦となった今季は10勝4分の無敗で乗り切り、本拠地を同じくするFC刈谷と勝点1差のデッドヒートを制して初の東海王者に輝いている。選手層も厚く、以前FC刈谷に所属していた選手を主体として、JリーグやJFL経験者も多く所属。指揮官はかつてジェフユナイテッド千葉で(今は亡き)イビチャ・オシム監督の通訳を務め、ブラウブリッツ秋田や愛媛FCを率いた経験もある間瀬秀一監督だ。監督や選手の名前「だけ」を見れば、wyvernの方がインパクトはある。

Bグラウンドのピッチは天然芝がしっかり生えており、土が剥き出しだったAグラウンドと比べればコンディションは良好。キックオフ直前になって雨が降り出したが、ピッチ状態で選手が苦しむことは無さそうだ。観客席では福山のサポーターが複数人いて雰囲気を作っている一方、wyvern側は声出しが1名いるが、応援の頻度は疎ら。福山の応援チャントが響き渡る中、注目の第2試合がキックオフとなった。

1st half

先に試合を動かしたのはwyvernだった。14分、中盤からのロングフィードをゴール正面の山本が競って落としたところに西原が走り込み、エリア外から右足を振り抜く。するとこれがゴール左隅に転がり込んで0-1。wyvernが大きな先制点を奪う。シュートの勢いは強烈というほどではなかったが、雨に濡れたピッチでボールが伸びたのがゴールに繋がったか。福山もボールを保持できているが、後方で回しながら様子を見るプレーが多く、ぱっと見の印象では「後ろが重たい」感じがする。wyvernの守備も良く、序盤は中盤高めの位置でwyvernがプレスで引っ掛ける場面が目立つ。

しかし福山も時間が経つにつれて中長距離のパスを使い始めるようになり、試合の流れが少しずつ変わっていく。31分、福山は中盤の高橋(大)にボールを収めると、追い越す動きを見せた左SBの藤井にパス。藤井はそのままドリブルでカットインし、ボックスの左隅付近からフィニッシュ。これはGKの石井がどうにか弾くものの、こぼれた先に待っていた高橋(佳)が倒れこみながらも強引に押し込んで1-1の同点。全体的にwyvernが支配する展開ながら、福山が効率の良い攻撃で追いついてみせる。

この勢いに乗じて福山が一気に畳みかける。36分、右サイドで得たFKを曽我がゴール前の密集へ蹴りこむと、ファーサイドで競り勝った松岡が頭で折り返し、高田がシュートを蹴りこんで2-1。wyvernが押されている印象はそんなに感じないが、福山が速攻とセットプレーから効率良く1点ずつゴールを奪ってゲームをひっくり返した。この後、39分にはwyvernが高めの位置で加藤が引っ掛けてショートカウンターが発動。清水がハーフスペースからグラウンダーで折り返すが中で合わず。良い攻撃は見せているwyvernだが、フィニッシュだけが上手くいかない状況だ。

スコアが2-1のまま推移し、前半が追加タイムを迎えようとした45分、福山はスローインのボールを高橋(佳)がフリックして繋ぐと、これをDFを背負いながら受けようとした有田がスルーしながら反転。そのまま相手選手と入れ替わり、GKと1vs1になる。これを有田が冷静に決めて3-1。実にあっけなく福山が追加点を奪い、リードを2点に広げて前半終了。wyvernは1点差ならば後半に切り替えられたと思うが、2点差となると話が変わってくる。残りの45分間で何か大きな刺激が必要に思うが、どうなるか。

2nd half

後半、wyvernはシャドーの西原を下げて福島を1トップに投入。代わりにそれまで1トップだった清水をシャドーに下ろす。53分、wyvernは関戸の収めからサイドに開いた清水へ繋ぎ、その清水がカットインからシュートへ持ち込むものの枠の上。良い形は作れている。しかし直後の55分、福山は左サイドに開いた高橋(大)のクロスに逆サイドの濱口がファーから詰めてきてヘディングを叩き込み、これで4-1。福山が後半最初のチャンスをまたしても確実に決め、更にリードを引き離す。wyvernにとって致命的な失点だ。

なおも食い下がりたいwyvernは、59分に2枚替え。ボランチの酒井を削ってFWの濱田を投入し、前線に2人を残す3-3-2-2に近い形でゴールを狙いに行く。しかしリードを3点に広げて「安全圏」に入ってきた福山は2ラインのブロックをしっかりと敷いて中盤の主導権を渡さない。前半は中盤で良い具合に引っ掛けることのできていたwyvernの守備も影を潜めてしまった。

74分、福屋は左サイドで時間を作って中に戻し、曽我が戻したボールをフリーの田口がミドルシュート。コースはそれほど厳しくなかったが、体重の乗った「ズドン」という音が聞こえてきそうな一撃に、GKの石井は一歩も動けず。これがゴールネットが突き刺さり5-1。福山の勝利はほぼ確定といっても良いスコアとなった。それにしても、時間帯といい形といい、福山のゴールはどれもメンタルに圧し掛かるようなゴールばかりである。

非常に厳しい初戦となったwyvernは、81分に清水を下げてFPクラブ最年長の津田を投入。名古屋グランパスや徳島ヴォルティスでプレーしていた当時は溌剌としたパワープレイヤーの印象が強かった津田も、もう37歳だ。87分、その津田が中央でボールを収め、攻撃参加していたDFの谷口とのワンツーで前を向くと、相手の寄せが甘いと見るや左足でコントロールショット。これがゴール左上隅に見事に収まって5-2。全盛期のキレは無いものの、津田の熟練の技術が詰まったゴールでwyvernが1点を返す。

その後もwyvernが攻勢を続け、1点でも返そうと試みるが、残り時間はあまりに少なすぎた。福山が巧みにボールをキープして時間を使い、撤収作業を進めていく。後半ATには津田のポストプレーから谷口がミドルシュートを放つビッグチャンスを迎えたが、これが僅かに枠の左に外れたところでタイムアップのホイッスル。初戦から要所を押さえて大量5得点を挙げた福山が5-2の快勝を収め、Bグループの単独首位に立っている。

impressions

率直に言って、意外な結末となった。両者の間にそこまで大きな力量差は感じなかったが、ここまで差がつくものか、というのが感想である。印象論で語るのはあまり良くないが、列強ひしめく東海1部リーグと、福山の1強状態になっている中国リーグではリーグ自体のレベルにも違いがあると思っていたし、そんな中で東海1部リーグ優勝を果たしたwyvernは、(地域CL初出場とはいえ)それなりに戦えるのではないかと予想していた。ただ、今となってはこの予想もリーグの「混戦具合」を比較しただけの話に過ぎず、福山の実力を見誤っていたのかもしれない。それほどまでに、この試合で福山が残したインパクトは強かった。

福山は前半はスロースターターの印象が残ったが、徐々にリズムを上げていってからは圧巻の試合内容だった。特にサイド攻撃は濱口と高橋(大)の両サイドハーフだけでなく、澤田と藤井の両SBも攻撃参加ができる。またクロス精度が一様に高く、カットインからのフィニッシュもでき、常に攻撃に選択肢を持っていそうな印象を受けた。2トップの高橋と有田も常に収め役とフィニッシャーの相補関係を維持していて、相手に掴まえどころを与えなかった。更にセットプレイも強い。正直、今日の福山を観た限りでは、「万能」という印象しか受けなかった。強いて課題を挙げるならば、前半立ち上がりに見られた「後方が重い」時間があったくらいか。運動量で勝り、高い位置から引っ掛けていくしか攻略ポイントが無さそうな感じがした。

wyvernは非常に厳しい初戦となった。スコアが示すほど破滅的な試合内容ではなかったと思う。前線にもある程度ボールは収まっていたし、高い位置から引っ掛けていくこともできていた。しかし、ハーフスペースまで進出できても肝心のフィニッシュで物足りない部分があり、それが福山との違いになって表れた。スコアをひっくり返されてからは守勢に回る際にどうしても受け身になってしまい、失点の場面では選手がいずれも棒立ちのような状態になってしまった。後半も様々な修正を試みていたようには見えたが、中盤の人数を削ってしまったのは逆効果だったかもしれない。結果的に福山に中盤を支配されてしまった。失点の時間帯と形が悪く、メンタル的にも難しい試合だったのではないだろうか。東海1部を制したチームということで注目していたが、残念ながらその片鱗はあまり見られなかった。

今日はBグループの2試合を観戦して、4チームの初戦をひととおりチェックしたが、総合的には福山が一番強い気がした。何より攻撃の引き出しの数が抜きんでている。もちろん、他のチームもまだ「伝家の宝刀」を抜いていない可能性があり、明日以降で違う動きが出てくるかもしれない。明日はこの福山と、第1試合で脅威の粘り腰を見せてドローに持ち込んだ刈谷が第1試合で対戦することになっており、この第1試合の結果がBグループの趨勢を決めることになるだろう。まさに大一番だ。

なお、もうひとつ気になったのは、AグラウンドとBグラウンドで芝の状態に違いがありすぎた点である。Bグラウンドの芝は(多少デコボコはあったが)問題なかった一方、Aグラウンドは土が剥き出しになっていてサッカーどころではないような箇所があった。問題は、このAグラウンドで刈谷だけが3試合を戦わなければならないことである(弘前・福山・wyvernは、刈谷戦を除く2試合はBグラウンドでの試合)。天然芝2面を保有するサッカー場ということで、主催側としてはピッチの有効活用をしたいのかもしれないが、他会場と同じように、同一ピッチで2試合を行うことは充分可能なはず。今回、刈谷だけが割を食う形になっているのは少し可哀相に感じた。

1次ラウンドの現地観戦は、今日のBグループのみ。日帰りの弾丸観戦にはなったが、ドラマチックな展開、意外な展開の試合を見ることができ、やはり地域CLの現地観戦はやめられないな・・・と実感した。明日以降の試合は観られないが、この先どのような結果が出るか、注目して待ちたい。第2試合の間に降り続いていた雨は結局止むことはなく、観戦を終えてサッカー場を撤収する頃には本降りになっていた。雨を凌ぐことのできる場所で観戦できてラッキーだった・・・と思いつつ、帰りは近くのバス停から路線バスに乗って利府駅に帰還。帰宅中の高校生で混雑する列車に乗って仙台に戻り、乗り継ぎ時間もほとんど無いまま、慌ただしく帰京の途についた。

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