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コバニ・コーリング

ゼロカルカーレというイタリアの漫画家の人気漫画の邦訳が出版されました。それを訳された栗原俊秀さん、野村雅夫さん、ジョヴァンニ・ガッロさんのオンラインセミナーに参加しました。

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栗原さんが今回の訳本の内容に加え、特に辞書に載っていない言葉についてどう訳したのかという説明が具体的で面白かったです。イタリア語についてある程度の知識がある人向けでした。

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『コバニ・コーリング』は作者のゼロカルカーレ自身がロジャヴァ(シリアのクルド人自治区)に赴いて複雑な政治情勢の彼の地をルポルタージュした漫画です。ゼロカルカーレは新刊を出せばイタリアで10万部は売れる超人気漫画家(栗原談)。現実認識と伝え方が独特で本作もその特徴を活かした快活で面白い切り口の漫画です。

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トルコ、シリア、イラク、イランの地図も原作中では、ディズニージュニアのキャラクター「ペッパピッグ」に語らせたりと、かなり作者なりにマッサージをしてわかりやすく伝えています。

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「北斗の拳」へ話が脱線することもしばしばで日本の漫画文化へのリスペクトも随所に感じます。

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最も興味深かったのは「ゼロカルカーレ」的な語彙の数々。私は sticazzi を早くも多用しています。

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sticazziはディズニー的に言うと「ハクナ・マタタ」だというゼロカルカーレの短編の説明。

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傑作なのは、このローマの格言。これには野村雅夫さんも大変面白いと賛辞を送っていました。

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その野村雅夫さんのパートでは、ゼロカルカーレ原作漫画を映画化した『アルマジロの予言』の字幕作業を2週間でやるようにとイタリア映画祭事務局から無茶振りされ地獄を見たという話や、大阪外国語大学生時代、ダリオ・フォーの演劇を翻訳したエピソードなど、いつもの早口で相当の情報量をオンラインセミナーの受講者(20人ほど)に披露していました。『アルマジロの予言』は「イタリア映画祭2020オンライン」で500円で見られますと何度も繰り返し宣伝していました。

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ゼロカルカーレの作品を理解するには、刑務所のあるローマのレビッビアのことを知らなければならないと力説する野村雅夫さんの話を受け、ジョヴァンニ・ガッロさんによる実に86ページにわたるゼロカルカーレの生い立ちから作品解説のプレゼンテーションは圧巻でした。

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ゼロカルカーレという漫画家を通して、シリア、イタリアの色んなことが見えてくる有意義なオンラインセミナーでした。

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栗原さんによると『コバニ・コーリング』の単行漫画本の売れ行きが芳しくないという事で、できれば多くの人に手にとって欲しいです。この漫画全然堅苦しくありません。コマの運びのセンスがよく、吹き出しも面白いです。声をあげて笑ってしまうほどです。裏表紙にも使われていますが、P42のコマが圧巻でした。


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