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最初の読書

私の趣味は「読書」です。
特定のジャンルにこだわらない雑読です。
私の人生は「本」を抜きにしてはあり得ません。
生きている限り、決して変わることはありません。
 
そして、この本との出会いが、私にとっての「最初の読書」となりました。
本を読む楽しさと本から得る知識及び疑似体験の大切さをを教えてくれた作品です。
 
児童図書館員として、豊富な経験を持つベバリイ・クリアリー氏(米)により、1950年に発表された人気シリーズの第一作です。
クリアリー氏は、子どもの本に対し、常に不満を持っていました。
それは、子どもの本の多くが、普段の子どもたちの生活からは、遠い世界の話として描かれたものであるということでした。
 
そこでクリアリー氏は、日常の中のゆかいな子どもたちの冒険をヘンリー・ハギンズという小学三年生の男の子を主人公として、創作しました。
たちまち同書は、人気シリーズとなり、「ヘンリーくんとアバラー」、「ヘンリーくんと秘密クラブ」等々、多くの子どもたちに愛読されました。
 
小学生の時、図書館でこの本と出会い、このシリーズのとりこになりました。
アメリカにおける子どもたちの日常生活が、ゆかいに楽しく描かれ、ワクワクしながら何度も何度も読みふけったものでした。
 
私が、子ども心に一番感銘を受けたことは、主人公のヘンリーくんが、日常のいろいろな事件に遭遇し、それを自分の力で解決してゆく姿勢でした。
例えば、友人のフットボールを自分のせいで失くしてしまい、それを弁償するために、バイトに励むという(「ヘンリーと夜のお客さま」より)ストーリーがあります。
当時、日本の小学生では考えられない、解決方法に胸躍る思いでした。
自分より何倍も大人の行動をしていると、心から感心したものです。
 
この本から最初に教えられたことは、”自立”という言葉でした。
どんなに困難なことでも、それに立ち向かう勇気と行動力があれば、必ず、成し遂げることできるということ、そして、そんな自分の姿を優しく見守ってくれている存在があるということ。
最初から人に頼るのではなく、まず、自分のできることを最大限実行してみる。
そういった大切なことを主人公から教えられました。
 
70年以上、前に書かれた作品ですが、現代に生きる子どもたちのみならず、老若男女、総てに失いかけた様々なことを思い起こさせてくれるに違いない作品と感じます。
どんなに長い隔たりがあろうとも、決して色褪せることのないもの、それがこの本の中には存在します。
 
ヘンリーくんの相棒として、迷い犬のアバラーが登場します。
二人の出会いが、このシリーズの最初のストーリー(「ヘンリーとアバラー」より)となります。
 
アバラーが、起点となって、ヘンリーくんが事件に巻き込まれることも、多々あるのですが、決して、彼は、相棒のことを嫌いになったりすることはありません。
それらすべてを慈しみ愛しているのです。
この二人の関係が、このシリーズの人気を決定づけた要因の一つなのでしょう。
ヘンリーくんを通じ、作者の動物たち、小さな生命への深い愛情も感じることができる作品でもあります。
 

「がんばれヘンリーくん」   
作:ベバリイ・クリアリー 
絵:ルイス・ダーリング 
 訳:松岡 享子
 学研 
小学中級向 
ゆかいなヘンリーくんシリーズ①   1969.12.10初版(1950年発表)

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