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それでも、生きてゆく、を観ている。

我が人生における名作ドラマ オール・タイム・ベスト5位圏内に10年以上ランクインし続けており、そろそろ殿堂に入れたい傑作「それでも、生きてゆく」、2011年フジテレビ木曜劇場、坂元裕二書きおろし脚本。今週はこれをまた観ている。何度目の鑑賞になるのかもうわからないくらい観ているのだが、毎回発見があったり、感じ入るところが違ったりする。

このドラマは、ある少年が友だちの妹を殺害して湖に遺棄するという猟奇的殺人事件から15年後、加害者家族と被害者家族がどう生きてきて、これからどう生きればいいのかともがくお話である。
非常に重く残酷なテーマではあるが、加害者の妹と被害者の兄の「叶わぬ恋」の話でもある。せつない。

きっかけは無言電話である。
加害者家族の家にはいつも嫌がらせの無言電話が掛かってくる。引っ越しても引っ越してもだ。
加害者の妹は、この無言電話は被害者の家族からの嫌がらせだと推理し、自分の身元を明かさずに被害者の父が営む釣船屋にこっそりとやってくる。

視聴者だけが知っている。
加害者の妹が、被害者家族の家にいる。
バレたら修羅場である。

このドラマは全11話あるが、このようなハラハラする緊張感が最後まで続く。
医療少年院を出所して農園で働く加害者本人も、名前を変えて生きている。バレたら大変だ。

取り返しのつかない、ゲロ吐きそうなほど残酷な事件の「被害者側」と「加害者側」という明確な立場の違いがある。そのボーダーラインをこそこそと、おずおずと、申し訳なさそうに超えてゆく加害者の妹を名女優・満島ひかりが演じている。本作が連ドラ初主演である。

バレたら修羅場だな、でも、ちゃんと話をすれば何が変わるはずだ。という細い期待を捨てずに、満島ひかりはガンガン被害者家族にコミットしてゆく。

犯人である少年はなぜ少女を殺したのか。
加害者家族も被害者家族も、結局最後まで理解することができない。

とんでもない厄災によってできた地割れのような分断がそこにあり、その亀裂の両側で同じように罪悪感を抱えながらゾンビのように生きている。
そんな中で、満島ひかり演じる加害者の妹が、かなりアクティブなゾンビとして人間関係をかき混ぜてゆく。そして、しだいにゾンビが人間に生き返ってゆく。

一体、悪はどこにあるのかと、彼らはどんどんと核心に近づいてゆく。謝罪や償いや赦しなど何の役にも立たないステージで生きてゆこうとする人々。

このドラマの最後が、ハッピーエンドなのかどうかは何回見てもわからない。
しかし、例えば戦争や紛争がなくならないことや、暴力が連鎖してしまう悲劇の理由、そして、その時人はどうするべきなのか、という事が描かれている作品だと思っている。

残酷で、哀しくて、それでもなぜか愛おしくなるドラマだ。

事件の犯人を演じる風間俊介が超怖い。

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