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横→縦へ編集者歴ウン十年(うち縦は数年)のベテランマンガ編集者です。

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マガジン

  • ウェブトゥーンの教科書

    縦横両方経験したベテラン編集者が、ウェブトゥーン/Webtoonについて記します。 マガジンとシリーズのタイトルでやは「ウェブトゥーン」と記し、それ以外の記事中の表記をWebtoonで統一します。

最近の記事

ウェブトゥーンの教科書 -(8)横漫画との違い

目次 すでに書いたように、従来の日本の横漫画とWebtoonは、思想が全く違います。 作品を作っているか、商品を作っているか。 作家個人を富ませたいのか、プラットホームが総取りしたいのか。 ひとりの天才に賭けるのか、チームで確実に勝つのか。 アート志向か、ビジネス志向か。 漫画のOSは、それほど違いがあるとは思えませんが、内包する哲学が異なる。 似て非なるものですね。 まだまだ書かれていない部分はありますが、概略は以上のようなものです。 すべて私個人の見解なので

    • ウェブトゥーンの教科書 -(7)Webtoonはスタートが大事

      目次 Webtoonの新連載は、たいてい10話から20話くらいを一気に出す。 冒頭の数話は無料で、作品を買ってもらうための導入、撒き餌である。 その後に有料話が続く。待てば無料になる施策もある。 冒頭の数話で、いかにユーザーの心を掴むか? ここが運命の分かれ道。 半年かけて、営々と描き続けて来たものが、一瞬でコケることも。 バナーやサムネイルの小さな画像が、ことのほか重要。 その部分で、ユーザーの気を引かないと、クリックさえしてもらえない可能性も。 あだ疎かにできな

      • ウェブトゥーンの教科書 -(6)周辺事情

        目次 巨大なプラットホームは、エンジニアを抱えていますが、作品の制作チームを抱えているとは限らない。 子会社、親会社からの作品供給を頼みにしています。 あるいは、外部のスタジオや編集プロダクションから買うか。 オリジナル作品を作るシステムは、まだ十分な成功を収めていません。 企画、画力、キャラクター、ストーリーをキチンと踏まえた作品をゼロから作り出すのは、相当ハードルが高いです。 そんなリスキーなビジネスより、まずは確実に売れるウェブ原作の作品を求めるのは自然なことか

        • ウェブトゥーンの教科書 -(5)着彩、背景、仕上げは、チーム体制で

          目次 これまで書いてきたように、Webtoonは1人が頑張って何とかなるようなものではないので、基本チームでやります。 各パートがそれぞれ頑張る。 全体の進行を管理する人も必要。 リアル度の高い作品だと、背景もそれ相応のレベルが要求されます。 異世界転生でよく出てくる王宮。 立派な王宮内部の構造や装飾も見応えがあります。 しかし、王宮や城の内部を一人でカバーできるはずもなく、3Dソフトを購入して複雑な背景の処理してます。 こんな背景をゼロから作っていたら、時間がい

        ウェブトゥーンの教科書 -(8)横漫画との違い

        • ウェブトゥーンの教科書 -(7)Webtoonはスタートが大事

        • ウェブトゥーンの教科書 -(6)周辺事情

        • ウェブトゥーンの教科書 -(5)着彩、背景、仕上げは、チーム体制で

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        • ウェブトゥーンの教科書
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          ウェブトゥーンの教科書 -(4) 線画も人気を左右する

          目次 Webtoonで人気がある人物画は、丸まっちい親しみのあるキャラクターよりも、頭身高めのキリッとしたイケメン、美女が好まれます。 一言で言うと、かっこいいキャラクターですね。 丸まっちいキャラは幼く見えるのかも。 そういうわけで、人物画としての線画も疎かにできません。 絵コンテがうまくても、キリッとしたキャラクターが描けないという人もいるので、キャラクターデザインを別の人に頼んで、それを元にして作画を進めるなんてケースも。 手間がかかりますね。 どこかに弱い部

          ウェブトゥーンの教科書 -(4) 線画も人気を左右する

          ウェブトゥーンの教科書 -(3)ネーム(絵コンテ)がキモ

          目次 縦漫画であろうと横漫画であろうと、ネーム(絵コンテ)が漫画の設計図であり、最重要なパーツ。 ネームの出来が悪いと、あとはどういじっても、作品は良くならない。 映画やドラマのシナリオ(脚本)と同じ。 Webtoonでは、先へ先へ(下に下に)読ませる工夫が必要だ。最近では、セリフの入った吹き出しの位置を中心に集めるタイプの作品も目立つ。センターセオリーとでも呼べば良いのか。 作り手の意識としては、話の終結部に向かって、どんどん読み進めてもらわなくてはならない。 さら

          ウェブトゥーンの教科書 -(3)ネーム(絵コンテ)がキモ

          ウェブトゥーンの教科書 -(2)まず原作ありき

          目次 Webtoonで特筆すべきところ。 企画から作り上げるケースもあるが、成功例の多くは原作のコミカライズ。 ライトノベル、ウェブ小説を原作としている。 人気作をベースに漫画化すれば、当たる確率は上がる。さらに原作があれば、あとは絵に注力できる。 クオリティの高い作品が出来上がる可能性も高い。 なかなか合理的である。 創作物をゼロから作るのは、大変だし、リスクが高い。時間がどれほどかかるかも分からない。 ある一定の水準を保った作品を大量に供給するには、適したやり方

          ウェブトゥーンの教科書 -(2)まず原作ありき

          ウェブトゥーンの教科書 - (1)Webtoonの定義

          目次 日本の漫画に現れた令和の「黒船」、Webtoon*。色々な呼び方はあるが、ここではWebtoonと呼ぶことにする。 そもそもWebtoonとは何か? フルデジタル、オールカラー、縦スクロールで読むスマホに最適化した漫画。 韓国からやってきて、今はアジア、北米中心に広がっている。 漫画好きなコアなユーザーではなく、ライトユーザーをターゲットにしている。 横漫画がキャラクター主導で作っているのに対して、Webtoonはストーリー重視型が多い。 ジャンル的には、異世界

          ウェブトゥーンの教科書 - (1)Webtoonの定義

          ウェブトゥーンの教科書 - (0)はじめに

          目次 いまWebtoon*業界のメジャーは、ライトノベルを原作にした、いわゆるコミカライズ作品。 韓国、中国、ともに同傾向で、人気作は、ほとんど例外なくノベルコミックスだ。 すでに人気のある原作をコミカライズすれば、時間の節約になるし、成功の確率が高まる。 ゼロから考えて作り出すより効率が良い。 合理的である。 原作のノベルを確保したら、次はネーム作り。絵コンテとも言う。平たく言えば、小説の文脈、文法を漫画の文法に変換する作業。又は、小説世界の再構成。 これが、す

          ウェブトゥーンの教科書 - (0)はじめに

          「ウェブトゥーンの教科書」始めます-目次

          マンガ編集者をはじめてウン十年、最近は3年ほどWebtoon(*)の編集をしたベテラン編集者、世に言うヒット作もいくつか関わらせてもらった。 ここ数年は、横マンガで培ったノウハウを活かしながらWebtoonを編集する機会にも恵まれた。 残る編集人生を、これから始まるであろうWebtoonの大爆発の前に出来る限りに形に残し、これからWebtoonを編集する方たちに残していきたいと思い、協力者も得てnoteに「ウェブトゥーンの教科書」をまとめていきたい。 ーーー 記事をま

          「ウェブトゥーンの教科書」始めます-目次