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『電車のなかで本を読む』/本を読むことの意味を考える

みなさんこんにちは。エディマートの須崎です。
このたび新たにシリーズ企画をスタートします。その名も『エディマート読書部』!本企画では、エディマートの編集者たちが普段読んでいる本や最近読んだ本をレビューする書評記事をメインに、本にまつわるインタビューや座談会などの企画も実施予定です。

さて、記念すべき初回。ご紹介する本は『電車のなかで本を読む』です。

電車に乗っているとき、みなさんは何をしますか?気づいたらスマホばかり見てしまう…という方も多いのでは?私自身もそのひとり。「普段あまり本を読めていないなぁ」とか「本って読んだほうがいいの?」とか、気になっているけどなかなか本に手が伸びない方にこそ、おすすめしたいのが今回の一冊です。

本書は、夏葉社を創業し、“ひとり出版社”の先駆けとなった島田潤一郎さんが、これまでに読んできたなかから厳選した49冊を紹介しています。本を読む習慣のない親戚たちに向けて書かれたという文章は、読書の魅力をやさしく寄り添うように伝えてくれます。


書籍情報

電車のなかで本を読む
著者:島田潤一郎
出版社:青春出版社
発行:2023年4月

この本を手に取ったきっかけ

まさにジャケ買いならぬタイトル買いでした。私の読書がはかどるのはいつだって電車のなか。家にいたら誘惑だらけですが、電車となれば本かスマホの2択です。出張や帰省など電車での長距離移動があると、ウキウキで本をカバンにしのばせます。

もともと会社の徒歩圏内に住んでいたのですが、読書時間を確保しようと電車通勤できる場所へと引っ越したくらいです。(その後、思惑が外れて会社のほうが徒歩圏内に引っ越してきてしまいましたが…)

それでも電車に乗ると無意識にスマホをさわる自分がいて、「やっぱりもっと本を読みたい!」という気持ちで手に取りました。

「なぜ本を読むのか?」の問いについて、帯に書かれたこの言葉には深くうなずかざるを得ません。

楽しむため、成長するため……、
でも、それだけじゃないんだよなぁ。

本書・帯より

どんな本

著者の島田潤一郎さんは、転職活動に行き詰まるなか、大切な人のための一冊の本づくりをきっかけに、編集未経験から“ひとり出版社”を起業した方。その苦悩の日々や本づくりへの想い、これからの働き方についてつづられた著書『古くてあたらしい仕事』もおすすめです。

そんな島田さんは高知出身ということもあり、本書は、高知新聞社発行のフリーペーパー「K+」に連載された寄稿文から選りすぐりのものを加筆・修正し、書き下ろしを加えた一冊。

高知にまつわるエピソードはもちろん、編集者として、子をもつ親として、本を愛するいち読者として、自身の体験をまじえながら本を紹介しています。

1テーマごとに1冊を紹介。各4ページ程度の文章でつづられていて、どこから読んでも楽しめます。「文学ってなんだろう?」「子育てが大変なときに」「文章でわかる作家との相性」などのテーマで書かれた内容は、どれも本の紹介にとどまらず、本そのものの魅力や読書の楽しさにふれることができます。

わたしの感想

島田さんの温かくてやさしい文章を読んでいると、「たくさん読まなきゃ」とか「これを読んでおくべき」とか肩ひじ張らず、ただただ「本っていいものだな」と思えるのです。

言葉が好きで、言葉を扱う仕事をしている身として、とくに心に残ったのが次の一節。

私たちのこころのなかにある、忘れてしまうような些細なこと。けれど、たいせつなこと。
それらをあたらしく言葉にしようとする試みを、文学と呼ぶのだと思います。

本書より

まさにそんな言葉にふれたくて、忘れたくなくて、本を読んでいる気がします。そして次の一節は、ある写真集を見ていて島田さんが感じたこと。

力いっぱい仕事をしている人がみな美しいということ。
それと、仕事のあとのご飯が美味しいのだろう、ということ。
それだけで十分ではないか、とも思います。

本書より

私自身、働くことについて悩んでいたときに、これを読んで「本当にそうだな」と心に沁みたことを覚えています。こんなふうに、自分のなかの言葉にならない想いと出会えるのも、本の魅力のひとつだなと感じます。

ブックレビュー第1回目は、”本を読みたくなる本”を紹介したいと思い、本書を選びました。ほかにも、又吉直樹さんが「なぜ本を読むのか?」を真剣に考えてつづった『夜を乗り越える』や、ビジュアルで読書の魅力を伝える『モトムラタツヒコの読書の絵日記』なども、新しい本に出会うきっかけになると思うので、ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!

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