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「会議」を増やしたら、「黒転」&「残業縮減」できた理由を分析してみる。

2024年。
「リモートワークなんてやーめた!」と、オフィス回帰した話をよく聞きます。なかでもウェブ会議の「Zoom」が、従業員にオフィス勤務を指示したというニュースが決定的で、「やっぱりオフィスでコミュニケーションを取る方が意思決定が早い」という風潮になった気がします。

そんななか当社は、2024年現在も変わることなく「リモートワーク自由」としています。オフィス回帰した企業から「非効率では?」と心配されることもあるのですが、実はここ数年にわたり業績が上がり、おまけに長年の課題であった残業が大幅に縮減できています。

リモートワークを継続しながら、会社が好調な理由はなぜか?

先日、マネージャーの一人とそんな話をしていたのですが、行き着いた結論は「会議を増やした」から。
それだけ聞くと「?」ですよね。あらためて分析してみたいと思います。


1.リモートワークに否定的だった過去

私が経営しているエディマートは、名古屋を拠点とした編集プロダクションです。2003年に創業し、現在は15名体制となっています。
出版社や広告関連企業からいただく印刷物の制作を生業としていたので、業績は徐々に下降線に。そこへ新型コロナが重なった2020年、いよいよ会社を畳む時期がやってきたかと、冷や汗をかいたことを覚えています。

2020年4月、感染者数が軒並み増えるなか、当社も早々にリモートワークを導入しました。私自身、「家なんて何しているかわからない」「顔が見えないので意思疎通が難しい」と、リモートワークに「超」否定的でしたが、世の中的にやらざるを得なかったため、仕方なく首を縦に振った形です。

リモートワーク当初は、グループウェア「teams」でのやりとりで意思疎通を図ろうとしました。ところが、コミュニケーションのための文章化や会議設定などがわずらわしく、社員が何をしているかわからない状態になってしまいます。
「ほら見たことか!」と、いち早くコロナが収束し、オフィス回帰を待ち望んでいた矢先、ある社員が「ovice」というWeb上のバーチャルオフィスサービスを見つけてきます。

oviceのバーチャルオフィス例:oviceオフィシャルサイトより

社員それぞれがアバターとなり、画面上で近づくだけで気軽に会話ができるサービスにより、リモートワーク下のコミュニケーションを格段に改善させることができました。

2.会議にも否定的だった過去

SaaSレビュープラットフォームを運営するキャプテラ(東京都港区)が実施した調査によると、日本の従業員2割が「会議が多すぎる」と感じ、オンライン会議中に集中力を低下させる最大の要因として「会議の長さ」を挙げています。

キャプテラ「コラボレーションと生産性に関するアンケート調査」:
【国別】社員が感じる会議の開催頻度
キャプテラ「コラボレーションと生産性に関するアンケート調査」:
オンライン会議中に集中力を低下させる要因【日本と世界比較】

経営者でありながらクリエイティブワークも抱える私としても、会議は少なく短いほうがいいと、ずっと思っていました。
だから創業より長きにわたり、当社の会議といえば月1回の全社会議と週1回のマネージャー会議、期末の全体会議ぐらい。全社会議なんて、繁忙期に開催しないこともザラでした。

ところがリモートワークで意思疎通を図るとなると、おのずと会議や打ち合わせを増やさざるを得ません。下記にリモートワーク導入前後の会議を比較してみました。

<リモートワーク導入前>
・全社会議/月1回
・マネージャー会議/週1回
・全体方針会議/年2回

<リモートワーク導入後>
・全社会議/月1回
・マネージャー会議/週1回
・販促会議/週1回
・営業会議/週1回
・制作会議/週1回
・新規事業会議/週1回
・社内会議運営会議/週1回
・社内勉強会/月1回
・1on1/月1回
・全体方針会議/年2回

もう、やばいぐらい増えていますよね(笑)。

パーソル総合研究所の調査では、一般的な日本企業において、メンバー層が1週間あたり会議や打ち合わせに費やす時間は3.1時間だそうです。当社で昨年末にあたり全社の会議時間を集計したところ、メンバー層で4.9時間でした。世の中の平均より多くなっている状況です。

3.リモートワーク下で過去最高益を記録

このように、私自身が否定的だったリモートワークを導入し、私自身が疑問に思っていた会議が「やばいぐらい」増えた当社。新型コロナが蔓延した2020・2021年度は営業赤字を計上しました。こればっかりは、旅行関連のコンテンツ需要が激減したため仕方ありません。

それでも腐らずに、リモートワーク下でたくさんの会議を重ねながら事業を続けたのは、「なんか会社がいい感じ」と思える日々が増えたからです。

「なんか会社がいい感じ」の具体例
・スタッフの作業効率が上がった
・さらに高いモチベーションが維持されるようになった
・次第にスタッフが主体的に動くようになった
・その結果、会社全体の生産性が上がった

なんかいい感じだから、もう少しがんばろう。
ーー地道に続けた結果、まだコロナの影響の残る2022年度についに黒字化。しかも過去最高益を記録しました!翌2023年度も同様に黒字となり、2024年度を迎えています。

そして驚くことに、残業時間も年を追うごとに、前年の半減を記録する状況に。それこそ創業から10年ぐらいは深夜まで働いたり、休日を潰すこともザラでした。しかし今では、手前味噌ですがクリエイティブワークを専業とする企業としては、圧倒的に少ない残業時間になりました。

4.なぜ会議を増やしたら業績が上がったのか

さて、ここからが本題です。

会議が増えれば拘束時間が増え、実務に割ける時間が減る。同じ利益を獲得しようと実務時間を確保するため、自然と時間外労働が増える。

普通に考えるとこのロジックです。私も長い間、このロジックにとらわれていたため、会議否定派でした。

理由1 考える時間と待つ時間が減ったから

ここでポイントとなるのが「実務」の中身です。
実務は大きく、「考える時間」「手を動かす時間」「待つ時間」に分けられます。

考える時間
作業方法、組むべき相手、購入金額などを思案する時間

手を動かす時間
考えたやり方に従って、実際に体を動かす時間

待つ時間
仕事の指示や納品物の確認、コンセンサスを待つ時間

キャリアが浅いスタッフほど、「考える時間」と「待つ時間」が多い傾向にあります。経験値がなければ、あれこれ思案したり調べ物をしなければいけませんし、決裁権を持ち合わせていないため、上司や先輩からの指示や、仕事のチェックバックを待つ必要があります。

多くの経営層は、「キャリアが浅い=仕事が遅い」と短絡的に考えがちです。「なんか仕事が遅いな」「時間がかかってるな」の裏には、「無駄に考え」「無駄に待たされている」スタッフがいるのです。

会議は、必要な人が集まって答えを出す場です。
みなさんは気づかれましたでしょうか?
先ほどの、当社のリモートワーク導入前後の会議の比較ですが、数が増えただけではなく、これまでの大括りの会議から、目的を明確にした会議に細分化されていることに。

目的が明確な小会議では、全員が当事者であり、必ず答えを出そうとします。作業方法、組むべき相手、購入金額など、さまざまな助言やフォローにより考える時間が減ります。
仕事の指示や納品物の確認、コンセンサスもその場で取れるため、待ち時間も減らせるのです。

理由2 高いモチベーションが維持されるようになったから

オフィスで同じ時間を過ごせば、スタッフの顔色がすぐにわかり、声がけもできるしモチベーション管理がしやすいーーそんなのは幻想です。
私もそう思っていましたが、実務で忙しいときは人のことなんて気にしていられません。たまのアイドルタイムに、あわてて声をかけても後の祭り。モチベーション管理は同じ空間にいることよりも、しっかりとウォッチしながらベストタイミングで声をかけるのが大切なのです。

会議を増やしたことで、自分以外のスタッフと定期的に(半ば強制的に)コミュニケーションを取ることになります。そうすると、「◯◯さん、ちょっと元気なかったね」とか、「△△さん、調子いいね!」といった情報が共有され、すぐにフォローに入ることができます。

理由3 スタッフの主体性が向上したから

主体性とは、自らの意志や判断で責任をもって行動すること。どこの企業でも求められる行動基準ですよね。
当社も会議を増やしてから、各スタッフの主体性が確実に向上しました。先ほど、上司や先輩からの助言によりスタッフの考える時間を減らしている、とお伝えしました。「そんなことをしたら考える力が育たない」と思われた人もいるかもしれません。

結論から言えば、そんな心配は無用です。

主体性に必要なのは「自信」です。的確なアドバイスを重ねていけば、スタッフに考え方のメソッドが構築され、それが自信に変わります。
また会議をミニマムにし、キャリアを問わず役割を持たせたことにより、一人ひとりが自信を積み上げていきました。
こうした小さな自信の積み重ねが、やがて大きな自信となり、自分で判断・行動するようになったというわけです。

5.会議を増やす際に必ず注意したいこと

このように、当社は会議を増やしたことで、黒転し残業が大幅に縮減されたのですが、闇雲に会議を増やせばいいわけではありません。
最後に、会議を増やす際に必ず注意してほしいことをまとめます。

社内会議はオンラインでまったく問題なし

「面直でこそ伝わる」「オンラインはさぼってもわからない」という感覚は捨てましょう。その場にいても、わかったような顔をして聞いていない、ずっと黙っている人もいますから。
当社は全社会議をのぞけばカメラもオフでOKにしていますが、まったく問題ありません。

会議ごとに目的を明確にする

参加する人もしない人も、誰もが「この会議は何のためのものか」がわかるレベルで、会議の目的を明確化しましょう。効率を意識しすぎて、複数の目的をマージしがちですが、そうすると会議がぼんやりしたものとなり、答えも出しづらくなりがちです。

会議の人数をしぼる

目的ごとに細分化された会議に、必要なスタッフだけが参加するようにしましょう。「念の為」で参加したスタッフは、こっそり内職するだけです。
人数をしぼることで当事者意識が生まれ、自ら答えを出そうとします。答えを出す経験は自信につながり、主体性も育まれます。

会議のアジェンダを用意する

当たり前と思われるかもしれませんが、用意せずに会議をするケースも多いと聞きます。アジェンダごとにオブザーバー、想定時間、どこまでの答えを出すかも書き込んでおきましょう。

会議時間を設定し厳守する

各会議ごとに基準時間を設定し、その範囲内で終わることを徹底してください。会議時間を守るためにも、アジェンダごとの想定時間が必要となります。延長癖がつくと会議がダレて、参加者が答えを出そうとしなくなるので、よっぽどでない限り延長はせず、次回に先送りしてください。
なお当社では、定期的に会議時間の実地調査を行い、適切な運営が行われているかチェックするようにしています。

終業間際に会議を設定しない

会議が終わったからっといって、すぐに退勤はできませんよね。会議中に入ったメールや電話、社内外からの問い合わせ対応などが必ずあるはずです。19時が終業時間の会社で、「1時間で終わるから」と18時スタートの会議を設定すると、必ず残業になります。
そもそも、終業間際の会議はみんな嫌です。答えも適当になりがちです。

定期的な会議の見直しをする

一度決めた会議がすべてではありません。運営しながら不具合が出れば、参加メンバーや会議時間、頻度の見直しを図りましょう。必要であれば会議そのものの散会もやぶさかではありません。
会議の見直しを図ることで、有意義なものにブラッシュアップされていきます。

いかがでしょうか。
リモートワーク下でオンライン会議が増え、その手軽さから無駄な会議が増えたかもしれません。だからといって「会議=悪」と決めつけ、ザクザクと会議を減らしていくのは、おすすめできません。

企業で大切なことは、さまざまな意思決定をいかにスムーズに、スピーディにしていくか。そのために、目的を明確化した小会議を増やしたことが、当社には大きなメリットをもたらしました。
もっと言えば、人手不足が社会課題となるなか、オフィスに通える人だけを採用し続けることは難しいですよね。デジタルネイティブな若手を採用するにあたっても、「リモートワーク自由」は大きなPRになるはずです。上手な会議運用をしながら、誰もがどこでも働きやすい職場づくりにまで、視野を広げることをおすすめします。


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