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ニッポン放送 特別番組「大滝詠一 EACH TIME 深夜の試聴会」

ニッポン放送で3月17日25時から「大滝詠一 EACH TIME 深夜の試聴会」が放送されました。ラジコのタイムフリーで3月19日06:48まで聞くことができます。

そこで以下の7曲(+1曲)が2024年3月21日発売予定の『EACH TIME 40th Anniversary Edition』から発売に先行してオンエアされました。

  • SHUFFLE OFF

  • 夏のペーパーバック

  • Bachelor Girl

  • マルチスコープ

  • 1969年のドラッグレース

  • ペパーミント・ブルー

  • 魔法の瞳

  • フィヨルドの少女

8曲ではなく7曲(+1曲)としたのはオープニングトークのバックで曲名を言わずに「SHUFFLE OFF」を流していたからです。「SHUFFLE OFF」は1984年の年明けに渋谷陽一のラジオ「FMホットライン」に大滝詠一が出演した際にオンエアされたのですが『EACH TIME』には収録されなかった楽曲です。

バージョン違いが多い『EACH TIME』ですが、2024年3月21日発売予定の『EACH TIME 40th Anniversary Edition』は「13曲全てが初出となるミックス違い音源を収録」と謳われています。

細かなバージョン違いは楽曲のすばらしさの前には瑣末なことだと思います。

ですが「全てが初出となるミックス違い」と言われるとどこが違うのか知りたくなるのがマニアの性(さが)です。果たしてどこが違うのか。tuesdaybreakheartさんによるブログ記事を参考に、ラジオをエアチェックした音源を繰り返し聞いて検証しました。


夏のペーパーバック

「夏のペーパーバック」のバージョン違い検証のポイントは3点あります。

  1. イントロがハープシコードのみ or ハープシコードとベース

  2. 間奏のサックスがオリジナル or 別テイク

  3. フェイドアウトが普通 or 長い

今回オンエアされた40th Anniversary Versionは、①イントロがハープシコードのみ、②間奏のサックスがオリジナル、③フェイドアウトが長い、でした。

表にまとめると以下のようになります。

「夏のペーパーバック」のバージョン違い検証表

40th Anniversary Versionは『EACH TIME SINGLE VOX』収録バージョンの間奏のサックスが別テイクではなくオリジナルになったものと言えます。

オリジナルバージョンと比較すると、オリジナルバージョンと『EACH TIME SINGLE VOX』収録バージョンは①、②、③のすべてが違うのですが、オリジナルバージョンと40th Anniversary Versionは①、③が違います(②は同じです)。

Bachelor Girl

「Bachelor Girl」のバージョン違いはオリジナルシングルバージョンと『B-EACH TIME L-ONG』収録バージョンしかありません。バージョン違い検証ポイントは以下の2点です。

  1. イントロが雷のSE or ストリングス

  2. フェイドアウトが普通 or 長い

40th Anniversary Versionは、①イントロが雷のSE、②フェイドアウトが長くサックスソロが最後まで聞けるバージョンでした。

表にまとめると以下のようになります。

「Bachelor Girl」のバージョン違い検証表

マルチスコープ

1984年にNHKの教育番組「マルチ・スコープ」のテーマソングとして作られた曲です。

これまで4回CD化されています。

  1. 『大瀧詠一作品集 VOL.2 (1971-1988)』(1995年 / VICL-2154)

  2. 『EACH TIME 20th Anniversary Edition』(2004年 / SRCL-5002)

  3. 『NIAGARA CD BOOK II』(2015年 / SRCL-8700)の中の『Niagara Rarities Special』

  4. 『Happy Ending』(2020年 / SRCL-11430)のボーナスディスク『NIAGARA TV Special Vol.1』

おそらく①と③はマスタリング違いの同じバージョンで、②、④は少しずつ違うバージョンです。すべてステレオミックスです。

40th Anniversary Editionはモノラルミックスでした。おそらく実際に番組でオンエアされたバージョンだと思われます。30秒あたりで聞こえる「アミーゴ」がないなど単なるステレオとモノラルの違いだけではありませんでした。

1969年のドラッグレース

「1969年のドラッグレース」はアウトロのフェイドアウトが普通のバージョンと7秒ほど長いバージョンがあります。

ところが『NIAGARA TRIANGLE VOL.2 VOX』(2022年)でEACH TRIANGLE 2 Versionという新バージョンが登場しました。エンディングに"無音"部分があるという不思議なバージョンでソニーミュージックオフィシャルサイトで「音源の不具合ではございません」とアナウンスされるほどでした。

大滝れんたろうさんがこの"無音"部分の意味を考察されていて興味深いです。れんたろうさんのブログの当該記事こちら。

40th Anniversary Versionはフェイドアウトが長いバージョンでした。

「13曲全てが初出となるミックス違い音源を収録」なので、それ以外にも違いがあるはずですが私には違いがわかりませんでした。わかった方はぜひ教えてください。

【以下追記】Twitter(現X)で相互フォローの夕ラ㋾さんによると、EACH TRIANGLE 2 Versionは「君が言うほど 時間が無限に 無かったことも 今ではよく知ってる」の部分のボーカルがテイク違いだそうです。

私も聞き比べてみました。微妙な違いでほとんど同じに聞こえますがEACH TRIANGLE 2 Versionのほうがアタックが弱く鼻にかかったような歌声に聞こえます。

40th Anniversary VersionはEACH TRIANGLE 2 Versionと同じくボーカルのテイク違いだけれど、アウトロが"無音"部分があるバージョンではなくフェイドアウトが長いバージョンということのようです。

ペパーミント・ブルー

「ペパーミント・ブルー」のバージョン違いは市販バージョンに限って言えば、アウトロのハープの最後の高い音が聞こえるか聞こえないかだけです。4分51秒あたりを聞き比べてみてください。まるで間違い探しのような些細な違いです。

ですが、プロモーションシングル盤だけの別バージョンがあります。こちらはオリジナルとは全く異なるストリングスだけのイントロです。このバージョンは『NIAGARA CD BOOK II』(2015年)の1枚『Niagara Rarities Special』に収録され初めて市販されました。配信では『Singles & More』にも収録されています。

さて、40th Anniversary Versionはストリングスから始まります。プロモーションシングル盤と同じかと思いきや、プロモーションシングル盤はストリングスの後にすぐ歌が始まるのに対して、40th Anniversary Versionはストリングスの後にオリジナルバージョンのイントロになり歌が始まります。そのため曲の長さが約5分25秒となっております。

ちなみに40th Anniversary Versionはアウトロのハープの最後の高い音は聞こえませんでした。

表にまとめると以下のようになります。

「ペパーミント・ブルー」のバージョン違い検証表

魔法の瞳

「魔法の瞳」のバージョン違い検証ポイントは「星に願いを」のメロディーの間奏の後に「Blueの夜明けまで 星が薄れるまで とけない魔法を かけておくれ」というヴァースがあるかないかだけでした。

ところが、40th Anniversary Versionはイントロが約8秒長いです。「眼が逢うたびに 夢うつつさ」という歌が始まる前にハープのイントロがあります。

表にまとめると以下のようになります。

「魔法の瞳」のバージョン違い検証表

フィヨルドの少女

「フィヨルドの少女」のバージョン違いは歌が入っているものと、ボーカルの代わりにメロディーをギターが奏でている「Fiord(哀愁のフィヨルドの少女)」の2種類しかありませんでした。

厳密にいうと「Fiord(哀愁のフィヨルドの少女)」はシングル盤および『Complete EACH TIME SINGLE VOX』に収録されているバージョンと『SNOW TIME』収録バージョンはミックス違いです。

ところが『NIAGARA TRIANGLE VOL.2 VOX』(2022年)でEACH TRIANGLE 2 Versionという新バージョンが登場しました。

イントロは「Fiord(哀愁のフィヨルドの少女)」と同じギターが印象的なイントロです。他にも「昔のままの黒いコートを着てるのかい」の部分にオリジナルバージョンにはないギターが入っていたり「氷の欠片がとけていく」の歌いまわしも違ったり全体的に大きく異なります。

40th Anniversary Versionは一聴したところEACH TRIANGLE 2 Versionと同じように聞こえました。「13曲全てが初出となるミックス違い音源を収録」という謳い文句ですから、私が気づかない違いがあるのかもしれません。わかった方はぜひ教えてください。

【以下追記】Twitter(現X)で相互フォローの夕ラ㋾さんに40th Anniversary VersionはEACH TRIANGLE 2 Versionとイントロが違うと教えていただきました。

EACH TRIANGLE 2 Versionのイントロはギターと(おそらくパーカッションではなくシンセサイザーの)キラキラした音だけですが、40th Anniversary Versionはそれに加えてベースとバスドラムの音も聞こえます。