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2022年の個人的マンガまとめ

・はじめに


2022年も今日で終わり。この一年間の個人的マンガ読み状況を纏めてみた。今年も面白いマンガが沢山あったなぁ……。

・2022年 個人的ベストは2作品


「メダリスト」「毎月庭つき大家つき」が今年のベスト。どちらかに絞れないくらい、どちらも毎回予想の120%以上面白いマンガだった。両方とも記事にはしているけれど、そろそろ「毎月庭つき大家つき」の単独記事を書かないと!


「メダリスト」については特に試合中心に変わってから、フィギュアスケートというルールのとっつきにくい採点競技について、そのルールの解説をうまく説明し、かつそれを利用して圧巻のカタルシスを与えるというコトを完璧にこなしており、スポーツマンガとして水島新司先生の野球マンガに並ぶほどの完成度にあると思っている。

デフォルメキャラとゴリゴリの競技中の絵のコントロール、コマ割りとそれによるリズムの構築が抜群の完成度である。2月のアフタヌーン4月号の紙面で公開された20話「下克上」は今後のスポーツマンガの目標となるスポーツマンガのひとつの到達点のような一話であった。

そしてそれからの話も毎話カタルシスの波が続く状況。作者つるまいかだ先生の新型コロナのため、9月発売のアフタヌーン11月号で休載になったが、続く12月号で2話掲載という恐るべきリカバリーを見せている。作品は全日本ノービスでの戦いが始まったが、どこまで進化するのか末恐ろしい作品である。次にくるマンガ大賞コミックス部門1位?いやもう既に……。


「毎月庭つき大家つき」はゆるい百合マンガと居候マンガのハイブリッドというマンガであるが、美麗な絵で描かれた美麗なキャラたちの精神的アップダウンの落差がとても激しく、美麗な顔を壊す限界ギリギリ?の素晴らしいセンスで表情の、百合道の、人生のアップダウンを描いている。

美人のマンガ編集者な主人公はニッコニコからDOGEZAのジェットコースター、居候する大家さんは元最強アイドルなのにその生態はポンコツ。そんな二人を俯瞰で見る立場だったハズの大家さん推しマンガ家なハトさんは何度も現世とあの世を……完璧なキャラ配置である。そして、不安だった追加キャラも素晴らしいキャラだった。

ひたすらドロドロして陰湿になりそうな大人の百合マンガであるが、キャラが皆明るくていい意味でドライ。嫌味の無い都会的マンガ……のようでポンコツ居候ギャグマンガの風味もたっぷり。実にお買い得なマンガなのだ。


・きらら系の今後はどうなるのか


ほぼ理想的なアニメ化となったまんがタイムきららMAXの、いやきららのエース「ぼっち・ざ・ろっく!」。どうしたって同じきららから生まれ
、時の覇者だった京都アニメーションが製作した「けいおん!」と比較される運命だった。

このアニメ化の成功への道は「Don't say "lazy"」等のけいおんで作られた時代を動かした名曲に並ぶような曲が出て来るかであったのだが、原作者のはまじあき先生と音楽監修のInstant氏が曲作成時から関わっているらしく、主人公のぼっちこと後藤ひとりが作詞として作ったと思わせるワード(「何も」のなんも読みとか)で統一され、各キャラの技量を考慮して、なおかこっ良い編曲によって劇中歌としてこれ以上ない完成度の曲が並んだ。

センシティブな状況でぼっちが変わる5話の「ギターと孤独と蒼い惑星」、ギターヒーローがヒーローと化す8話の「あのバンド」、ぼっちのギターが右耳で唸る前2曲に対してスラップベースがセンターの芯を太くするスルメ曲な12話の「星座になれたら」。ライブ回の名曲群は記憶に残る曲となり、「ぼっち・ざ・ろっく!」は名作アニメとなった。

売り切れだらけのアルバムは是非、いつもより音量を高くしてヘッドホンで聞いて欲しい。


だがしかし、4コマ中心の(そうでないフォワードもあるが)まんがタイムきらら系作品の前途は明るいだけではない。リコーダーとランドセル、めんつゆひとり飯、スパロウズホテル、高尾の天狗とミドリの平日と素晴らしいタイトルが並んでいた竹書房の4コマ誌「まんがライフ」が7月に休刊しており、4コマ誌の前途は厳しい。

「ぼっち・ざ・ろっく!」並みの大ヒットは難しい。原作力としては「ぼっち・ざ・ろっく!」と負けず劣らずの「球詠」のアニメが残念なデキだったりしたが、現在はあの時以上に良いアニメスタジオの仕事の渋滞が大変なコトになっている。ヒットを固定する二期アニメが遠い時代なのだ。

それでも芳文社のきらら作品はアニメ化でヒットを出す打率は大手出版社、その雑誌よりも高い気はするのだが……。

で、一番の問題は率直に言うと「いまのきららって面白いマンガから打ち切りになってない?」コトである。

個人的な嗜好ではあるが、最近は好きなきらら作品が立て続けに終了している。二度記事にした「ホレンテ島の魔法使い」をはじめ、「妖こそ怪異戸籍課へ」、「さよなら幽霊ちゃん」、「最果てのともだち」、「死神ドットコム」など面白かったマンガがサクサクと終了になってしまった。


もちろん1巻の売り上げなどで終了を決めているのであろうが「次にくるマンガ大賞2022」に「さよなら幽霊ちゃん」がノミネートされていたり、4コマオブザイヤー2022では新刊で「死神ドットコム(1)」が3位、既刊で「ホレンテ島の魔法使い(2)」が4位である。

次にくるかもと言われたマンガが直後に終了という状況。後者のランキングはニッチとも言えるが、逆にいえば4コママンガを読み込んでいる人間による投票とも言える。

新陳代謝をより速く加速するという判断なのかも知れないが、なんとなくそうじゃない部分も見え隠れする。このあたりは数値化したものを見てみたい気もするけれど、でも、出版社の判断であれば見守るしかないのだろう。


・ゴールデンカムイ終わる


ヤングジャンプで連載していたアイヌ文化と北海道を壮大なスケールで、濃密な作画と圧巻の時代考証、類まれなるバトルアクション、途切れぬ豪快なギャグで描いた「ゴールデンカムイ」が終了した。

最後は「死んだら終わりな死生観」でレギュラーキャラの最期を惜しむ時間を与えない程に豪快に、文字通りの暴走列車として進んだが、もちろん作品は野田サトル先生が手綱を握っていた。

道民として、いやもっとニッチな場所で育った者として野田サトル先生の素晴らしい大仕事に拍手したい。これほど重厚で笑えて美味しそうなマンガはもう出てこないかもしれない。

聖地巡礼


・解体屋ゲンの毎月新刊発売終了


もはや個人的にライフワークとなった傑作マンガの解体屋ゲン。建築業界を中心に森羅万象を取り込むように他業種やグルメ、政治に異世界などなどを描く解体屋ゲン。

その解体屋ゲンは週刊漫画TIMESの看板マンガでありながらも、単行本は初期から芳文社では刊行されず、作者主導で電書バトから電子書籍での発売となり、本編からかなり単行本が遅れていたが、毎月1日発売のペースでとうとう連載に単行本が追いついた。毎月楽しみにしていた単行本がついに……

と思っていたら、なんと「解体屋ゲン セレクション版」として各ジャンル?毎のセレクションが単行本の間を縫って発売されるコトになったのである。なにせもう少しで1000話の大傑作。つらい別れはありがたいニュースとなったのである。

なお、夏コミでは石井さだよし先生、星野茂樹先生に許可を頂くという、あまり例のない形で二次創作ショート小説を製作・頒布させていただきました。ありがとうございます。(実はまだBOOTHで……)


あと原作の星野茂樹先生が激推ししている謎の関西沖縄民俗怪奇ホラーギャグ怪作、ヒロットヨン先生の「シームレス」も、心底、底がわからない個性的マンガなのでお勧めしたい。


・巨大美少女ヒロインへの目覚め?


いろいろなきっかけはあったのだが、noteでこんな記事を書いた。

そうしたら、note公式の「#まんが感想文記事まとめ」「特集企画「読書の秋おすすめ作品紹介」「読書の秋にチェックしてほしい、みんなのおすすめ作品まとめ」で取り上げて頂くコトとなった。

多分、いや絶対来ているである、巨大美少女ヒロインは!

つい最近もビッグコミックスペリオール 2022年24号に、わが街である札幌、すすきのを舞台とした

「すすきののバニーガール店で打ち合わせ」

なんて巨大美少女ヒロインの読み切り怪作が載っていた。

あと、こんな記事も書いてみた。巨大美少女ヒロインについてはこれからも追いたいテーマである。


・まとめ


もちろん「国境のエミーリャ」「十勝ひとりぼっち農園」「アオイホノオ」「今夜は車内でおやすみなさい。」「山と食欲と私」「ダンジョン飯」「機動戦士ガンダム アグレッサー」「僕の心のヤバイやつ」「デストロ106」「石井さだよしゴルフ漫画シリーズ」「夏目アラタの結婚」「超可動ガールズ」「放課後ていぼう日誌」「葬送のフリーレン」「ダンピアのおいしい冒険」「はるかリセット」「これ描いて死ね」……面白かったマンガは多々とあった。

あ、ジャンプ+の「ラーメン赤猫」の話をしていなかった。もはやマンガ界のメイン道路と化して来たジャンプ+で、連載争奪ランキングからインディーズ連載を獲得した「ラーメン赤猫」が通常連載に移行。やはりジャンプ+の新人発掘は強いと感じた。ちゃんと面白いがどんどん増えている。他のマンガ誌、WEBマンガには脅威かも

「イブニング」休刊もびっくりしたが、今年一番びっくりしたのは「セガのゲームは世界いちぃぃぃ!」電子書籍で復活かもしれない。いや、自分はSONY大好き人間ですが。

あと、2022年は漫画家の方の訃報が多く感じた年でもありました。

謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心からご冥福をお祈りいたします。


さて来年最初のマンガは……解体屋ゲン 98巻が2023年1月1日発売ですよ、皆さん。今予約したら、除夜の鐘の音と共に空から電子端末に降りてきます。用意はいいですか?


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