読書記録:くたびれサラリーマンな俺、7年ぶりに再会した美少女JKと同棲を始める 1 (HJ文庫) 著 上村夏樹
【心身ともくたびれてるけど、家に帰る楽しみが増えた】
SEとして社畜生活を送る雄也は、かつての約束を携えた葵と同棲する事で、生活に潤いが満ちる物語。
仕事が一筋になると、自分の生活を疎かにしがちだ。
懸命に汗水垂らして働いた後に帰宅するは見るも無惨な荒れ果てた部屋。
そんな荒んだ雄也の生活を立て直してくれる家事万能な葵。
どうやら、彼女は過去の約束を大切にしてるようで。
保護者の立場で接する内に、彼女の献身的な愛情で、恋仲の関係を築いて行く。
様々な障害を乗り越えた先で結ばれる絆。
年の差で起こるジェネレーションギャップという問題は、いつの世も存在する物である。
新卒でとある会社にSEとして入社して、はや三年。
新人の頃は覇気ある青年であったが、今はくたびれた雰囲気を醸し出す雄也。
三年も経ったからには、任されるタスクも増えて来て、同時に責任も忙しさも倍増していく。
ろくに自炊も出来ず、今日もまた仕事に疲れ果てて、家路に着く日々。
そんな中、彼の元に七年ぶりの再会という名の運命が、やってくる。
かつて幼馴染のように仲の良かった八歳年下の女の子である葵。
そして、かつて別れ際に交わした結婚の約束を未だに胸に抱き、初恋の炎を燃やし続けていた彼女。
奇しくも、母子家庭である彼女の保護者、涼子が国外へ転勤するという為、ひとまず彼女の保護者として引き取る事に決めて。
二人の同棲が幕を開けるのである。
雄也のお嫁さんになる為に、花嫁修業を続けてきた葵。
彼女との同棲が始まる事で、雄也の生活は日に日に好転し始める。
壊滅しかけていた炊事問題は、美味しいご飯に彩られて。
片付けの行き届いてなかった荒れた部屋は、瞬く間に綺麗になる。
まさにお手本のような新妻に世話される事で、雄也は就職当初のような覇気のある姿を取り戻していく。
その変化した姿を垣間見て、上司である千鶴はどこか満足げに笑って。
葵の親友である瑠美も、雄也の事を認めたのか、どこかフレンドリーに接してきて。
周囲に温かく見守られる中で、二人の関係は少しずつ深まっていく。
出会った頃から、変わらない真っ直ぐな好意を向けてくれる葵。
その純朴な想いに心揺らされる雄也が、恋へと心が傾くのも当然であったのだろう。
少しずつ、葵の存在が自分の中で増していく。
保護者として出席した授業参観で、男子と接している彼女を見て、独占欲が沸き上がるように。
気が付けば、彼女の事を強く求めている自分がいる。
相手を一番だと思う気持ち。
願わくば、相手にもそうであって欲しいという祈り。
仕事を理由にいい加減だった生活が、しっかりした葵の存在で背筋を正すような規則正しさが生まれていく。
彼女がいるから仕事も頑張れる。
一念発起して新しい事を考える余裕が生まれていく。
余計な添加物で彩られた生活が、癒やされていく事で、心に溜まった毒が吐き出されていく。
薄汚れた社会で穢れてしまった身体が、互いの事を常に考えていくうちに、浄化されていく。
彼女と結婚を視野に入れた未来を嫌でも想像してしまう。
もちろん、年齢差や社会的「常識」から、雄也も最初は「保護者」として一線を敷いていた。
世間から見れば、自分達の関係など歪な物だと。
しかし、時間の経過、そしておそらく過去に過ごしてきた際の少なからず、想われ続けたという事実が、彼の頑な心を解きほぐしていく。
彼女と繋がらない言い訳はいくらでも思い浮かぶが、葵との時間を少しでも大切にしようとする姿勢は、どう言い繕ったって、「保護者」という領分からかけ離れている。
彼女から好意、親御さんから公認、同僚から応援など、どんどんと彼女と結婚する外堀が埋まっていく。
もはや、年の差以外に恋愛の障害が無い状態である。
葵の献身に、雄也の覚悟と器量が試される。
しかし、本当に好きな相手と巡り合ったのなら、年齢の差など関係がないのかもしれない。
そう、恋に年の差なんて関係ないのだ。
重要なのは自分の相手に対する想い、ただそれだけ。
だからこそ、雄也の方から男らしく、告白するのも必然であった。
関係性が確かに変わるのも、出会った当初からあらかじめ決まっていた運命路線であったのだ。
女子高生との同棲生活は社会的にはご法度かもしれないが、相思相愛になった彼らに外野がとやかく言うのは野暮だという物だ。
隣に彼女が居て生活に彩りを与えられ、それが今までの世界を変えるきっかけとなる。
幸い、彼らの関係に嫌味を言う悪い人間はいない。 共に過ごす中で育まれていく絆という名の信頼の証。
保護者という立場を越えて、年齢という名の障壁を越えて、恋人という関係に行き着いた彼らを待ち受ける日常とは?
幸せの形は人それぞれだからこそ、彼らなりの幸福を掴み取れるのだろうか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?