見出し画像

5月の美術館散歩:都内

日頃から、車でどこまでも行く習慣がついている者なので、電車に乗るのが少々苦手。
派手に乗り間違えて、遠いところまで行ってしまう夢を見たりする。

今日は都内の美術館へ電車で出るので、スマホのGooglenaviがたよりだ。
現地まで行けば、都内に詳しい旧友が待っている!

目的地は、東京都広尾の山種美術館。
ということで、最寄りの駅から電車に乗っているのだが、この先で乗り換えるわけで、その方法に2つの選択肢があるとnaviから提示された。

少し乗車した先のA駅で降りて、B線に乗り換え。
または、このまま終点まで乗車して、C線に乗り換え。

所要時間はさほど変わらないので、運賃が安いほうにすればいいのか?

山手線では内回りに乗車・・・・・・するようnaviが案内してくる。
よかった。下車駅は恵比寿だとわかっていても、どっち回りに乗ったらいいのかわからないんだもの。(どっちに乗ってもいずれ着くからという場合ではない!)
内回りに乗れとの事で、さらにその2号車か5号車にしろとの指示。
下車した時にスムーズに移動できるのだから、これには従っておこう。
ホームに立って足元を見ると、「10号車」と書いてある。
で、先頭はどっちなの? 
人混みにあおられて、なんとなく焦ってきた。
考えてもわからないので、あっちの方向へ進んでみて、ちょっと足元の表示を見たら「9号車」。
よし、こっちだ!
(小さい子のひとり遠足みたいだ‥‥)
そのまま進んで「5号車」の表示を見つけて、列に並んでホッとする。

下車駅は恵比寿で、そこに到着する少し前に、スマホをリュックの横ポケットから取って、リュック本体の中にしまった。
都会はスリが出るから気をつけろと、家を出る時に言われたのだ。
(‥‥)

キケンがいっぱいの電車から無事に解放されて、恵比寿駅を表通りに出た。
今日は、とっても気持ちいい五月晴れ!

Googlenaviをたよりに、初めての街を進んで行く。
いつもの散歩とは違って、相当緊張しているが、平静を装って歩かざるを得ない。田舎者の哀しさよ。

ビルの谷間に流れる渋谷川。
暗渠にならずに空を映しながら流れる場所は少ないと聞く。
そこに架かる小さな庚申橋を渡る。

その先に、閑静な住宅街があって、お庭も広く瀟洒な建物に見とれていたら、naviの案内ルートから外れてしまった。
しかし、せっかくなので都心の高級住宅街をじっくり眺めながら歩かせてもらおう。固定資産税なんか、いったいいくら納めているんだろう。
ちっちゃい遊具が整備された一角が現れて、見れば「広尾幼稚園」と表示が出ていた。セレブのお子様たちが通うのか。

スマホを握りしめてウロつく怪しい人になりかかっていた自分に気づいた。
これではいけない。
出口を見つけねばと思っていたあたりで、折よく「都立広尾高校」の前に出た。ここまで来れば、山種美術館はすぐそこだ。

はい、ちゃんと来れました


都内に詳しい旧友とも無事に合流。
山種美術館では今まさに、「 花 flower 華 2024 」と銘打った特別展を開催している。(2024.5.6終了)

パンフレットは奥村土牛の「醍醐」 1972(昭和47)年

四季折々に咲きこぼれる花々が、日本人の心を魅了する。
画家にとっても魅力的なモティーフであり、それを描いた名画を揃えて展示していると紹介されていた。

おまけに、そのいくつかの絵画作品とコラボした、和菓子の匠による生菓子の創作があり、それを館内のカフェでいただけるというのだ。
こんなおいしい話は、ない。

よだれを押さえて、まずは展示室へ。
(展示室内は撮影禁止のため、以下の紹介画像は山種美術館の公式HP、Xなどからの引用です)

展示室の様子

額に収まった絵画や、掛け軸、大きな屏風。扇子に描かれた小作品もある。
展示室は、春の作品集からはじまる。

稗田一穂 朧春  1976(昭和51)年



稗田一穂 惜春  1980(昭和55)年 

花鳥風月という言葉の通り、花と共に月が描かれた作品が目を引く。



川端龍子 牡丹  1961(昭和36)年



速水御舟 墨牡丹  1934(昭和9)年

日本画特有の、地味なあでやかさ。
似たような構図の牡丹の画だが、作品ごとに伝わるものが違う。

続いて、季節は夏へ。



川端龍子 八ツ橋  1945(昭和20)年


長谷川雅也 唯  2016(平成28)年

涼やかな作品が、暑気を払ってくれるかのようだ。

そして、季節は秋へと。

木村武山 秋色  20世紀(大正時代)



うつろいは早くも冬。

横山大観 寒椿  1949(昭和24)年



速水御舟 紅梅・白梅  1929(昭和4)年




展示のフィナーレには、四季の花々として豪華絢爛 蒔絵のような連作品が登場。こちらの作品は、サイズ183.5×85.0とあるが、ゆうに2メートル以上もあるかのような大迫力。

荒木十畝 四季花鳥の春(華陰鳥語) 1917(大正5)年


   

荒木十畝 四季花鳥の夏(玉樹芳そう) 1917(大正5)年



荒木十畝 四季花鳥の秋(林梢文錦) 1917(大正5)年



荒木十畝 四季花鳥の冬(山澗雪せい) 1917(大正5)年


自分が気に入った作品ばかりを紹介してしまったが、この特別展では58作品もの花にまつわる絵画が展示されていて、他にも素晴らしいものが多数あり印象に残った。


このあたりで、カフェへ。
くだんの生菓子は、お抹茶とセットでいただけるようだ。
名画とコラボしているのは5種類で、メニュー写真ではどれもこれも綺麗でおいしそう‥‥♡♡
旧友もわたしも共々、迷いに迷って、同じにしないよう談合して決めたのはこれ。

こちらの和菓子がコラボしているのが下の絵画。
モンシロチョウまでついていて、菓子職人さんの粋を感じた。

速水御舟 和蘭陀菊図  1031(昭和6)年



もう一つはこれ。

こちらの和菓子がコラボしているのが下の絵画。
青い鳥がいないんだけど、モクレンの花と新緑の季節は伝わった。

小林古径 白華小禽   1935(昭和10)年


美術館のショップでは、展示作品にまつわる様々なグッズが並んでいて、その中でも胸躍ったのがポストカード。
先程まで見ていた展示作品たちの、ほぼ全てがポストカードになって販売されていた。
こういうのに目が無くて、本当に困る。

どれを買って帰ろうかと、売り場を泳ぐように彷徨って、どれもこれも欲しくなって、どうにもならなくてこれはヤバいと、いったん踏みとどまった。
もうこれは1枚だけにしよう。
1枚だけ買って、今日の記念に横にいる旧友に送ろう。
すると旧友も1枚選んで、わたしに送ってくれると言う。
お互い、相手には見られないよう内緒にして、今日最高の1枚を選んで買った。

そこいらに座れる場所をさがして、さっそくポストカードを書く。
切手とJAFカードはいつも持ち歩いている。
わたしは、旧友にむけて、お互い人生の秋を迎える頃になったから、これからは一緒に「果実」を収穫したいねーー、というようなことを書いた。
そして、通りにあった郵便ポストに、2人そろってコソコソ投函した。
本来ならば、郵便局で風景印をいただきたいところだが、今日はゴールデンウイークのためお休み。
それがとっても残念だった。



後日になって、
うちの郵便受けに旧友からのポストカードが届いた。
あらら!?
わたしが選んだのと同じものじゃないの。
他ならぬ、いちばん欲しかった1枚だった。

そこには、May the force be with you! フォースと共にあらんことを!
と書かれていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?