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決して逆らえないもの

久しぶりの投稿。

今までを振り返ると、受け入れられない事実が存在する。
個人的に「死」という概念は様々な解釈があると思われるが、隣人の「死」に対し受け入れられない事実が根底にある。
誰もが同じだと思われるが、安易に「死」を受け入れる人などいないと考えている。
反対に「生」は前向きな印象が残るが、「死」はどちらかというと恐れが先行してしまう。
それ故なのか、利己的な身勝手な自己愛や、自身に潜む弱さそのものが、きっと恐れに繋がるのだろう。

この様な題材を考えた時にこの内容の映画を思い出す。
邦題『怪物のささやき』と言う作品である。


主人公のコナーは母と二人暮らしだ。
コナーはごく普通の学生とは言い難いものの、母は難病を患い自宅療養をしている。

コナーは学校に馴染めず、一人の時は妄想を膨らまし、実在しないものや、コナーの中でしか存在しないものなどを描き出している。
周囲はそんなコナーの姿を見ると怪訝(けげん)な対応をする。


コナーは常に悪夢に悩まされた。
細かな内容は朧(おぼろ)げながらも、誰かが地に落ちコナーが滑り落ちない様に相手の手を握っているのだ。

ある時の真夜中の出来事だ。
コナーの前に巨大な大木が動き出すと、それはまるで怪物を思わせる姿が徐々に近付く。


そして怪物は「これから三つの物語を言う。その後、四つめの物語はお前が語るのだ…」など一方的に告げる。

一つ目は、とある国で王はある女性と再婚する。
国民はもとより、孫に当たる青年もその女性に対し疑問を感じていた。
その理由は、性格が冷たく身勝手な心の持ち主だと言う噂があったからだ。
そして王は突然亡くなると、その背景に妻が関係しているのだと周囲から囁かれる。

それから妻は孫に当たる青年に対し求婚を求める。
当然ながら青年はその申し出を断る。

王の亡き後、妻が王の代わりに一年間を統治する事となる。
本来であれば孫に当たる青年が継ぐのだが、年齢が若過ぎると言う理由で一年待たねばならなかったのだ。

そして青年は町民の娘に恋をし、二人は生涯を約束しようと誓誓う。
だが、二人の間に不幸が起こる。
青年が愛した娘が何者かに殺害されたのだ。
真っ先に疑われたのが王の妻である。
過去に青年に求婚を断れた事もあり、個人的な復讐だと考えられたからだ。
青年も疑いを持ち、やがて妻は国中の敵となり、城から追い出され無惨な結果となる。

やがて青年は権力を持ち国を統治する事となる。
ここまでは何事も問題にならないと感じられるが、実は娘を殺害したのは青年であったのだ。
それに王の死因は妻が殺したのではなく老衰であった事も後に分かる。
邪悪な心を持っていた妻だが、内心は善良な心もあった。
反対に青年は善良な人間を装いつつも、実は卑劣な手段を使ってまで権力に縋る残忍さを持った人間であったのだ。

怪物はここまで説明すると、当然ながらコナーは腑に落ちない様子だ。

やがて同じ時刻に怪物が現れ、二つ目の物語を語る。
今から150年前の産業革命の時期、自然素材を調合し、どの様な病でも治す薬剤師にまつわる物語だ。
だが、この薬剤師を毛嫌いしていたのが周囲から絶大な支持を得る神父である。
ある時、薬剤師は教会内にあるイチイの木を少し分けて欲しいと願う。
先ほど説明した通り、神父は薬剤師を嫌っていたので真っ先に断る。

後に神父が愛する娘二人が病に侵される。
日に日に衰弱して行く娘の姿に耐えられなくなり、神父は毛嫌いしていた薬剤師の元に向かい娘を助けてくれと頭を下げる。
だが、神父の理不尽な申し出を薬剤師は断った。
断った理由を挙げると、都合がいい時だけ利用する神父の身勝手な考えが許せなかったのだ。
やがて娘二人は帰らぬ者となる。

薬剤師は信念を貫き神父の申し出を断った。
反対に神父は信念に反き薬剤師に頭を下げた。
罰として怪物は神父の家を粉々に砕いたのだ。

前触れもなく、母の実親である祖母のカルトンが家に訪れた。
そこ頃、母親の容態が悪化したのだ。
祖母が訪れた理由は、祖母からすれば娘のリジーを自宅療養では限界を感じ、更なる治療が整った病院へ移送する事を決意するためだ。


正直、カルトンとコナーの相性は良くない。
しかし、母のリジーが病院へ移ったのでコナーはカルトンの家で世話になる事となる。

時間の経過と共に、残酷にも母の容態は悪化するばかり。
具体的な理由もなくコナーは怒りを覚える。
更にコナーの怒りはエスカレートする。
何故ならば、学校でコナーは数人の同級生からからかわれ、時には暴力を出すほど相手はコナーを攻撃する。
同級生らがコナーに対し一方的に攻撃する理由はと言うと、単純に気に入らなかったからである。
それでもコナーは抵抗はしなかった。
だが、コナーを攻撃する同級生のリーダー格の一人に対し、常に睨み付けるように観察をしていた。

苛立ちが抑えきれないコナーは怪物をひたすら待ち続ける。
いつもであれば決まった時刻に現れるのだが、待ち続けても現れる気配がない。


コナーは感情を抑えられないほど正気ではない。
それを感じた怪物は決まった時刻ではない時間帯に現れる。
また怪物も苛立っている。
それは無理もない。
コナーが一方的に呼びつけたからだ。
そこで怪物は急ぐ様に三つ目の物語を語る。
怪物は怒りに達したコナーを煽(あお)るかの様に、「誰もお前など見えない。それにお前は透明人間の様に無視される人間だ…」などと言われ、コナーの内に秘めた残忍性が爆発し、自身を馬鹿にし続けた同級生のリーダー格の者に襲いかかる。


しかしコナーには虚しさがが残る。
同級生を傷付けながらもお咎めもなく、誰にも非難されない。
それこそ自身は本当に透明人間なのでは?などと無力になるコナー。

残念な事に母のリジーの容態は良くなる事がない。
まるで死を待つかの様に、母は静かに眠る。
こういった現実がコナーには受け入れる事ができなかった。
喪失感に襲われたコナーの心境は、例えるならば消しゴムで消し去られた白紙の様であった。


無力となったコナーは怪物になる前のイチイの木に近付く。
今後、どうすればいいのか…


そこで怪物はコナーに尋ねる「さぁ、四つ目の物語はどうなるか?」

さて、コナーは四つ目の物語を完成させる事ができるのだろうか?
これ以上語ると鑑賞していない方に対し失礼なので、ヒントだけ残しドロンします♪

最後はとても切ないが、我々が置かれている日常にも事実は必ず存在する。


最後に、怪物と母が残したかった答えをコナーは見いだす事ができるのだろうか。

物語にはエピソードがあり、必然的にエピローグが存在する。


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