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【戦評】 楽天の強さは主戦級だけじゃない! 控え組躍動の完勝劇~7/9○楽天9-1ソフトバンク

※本稿はnote全文公開中。最後までお楽しみいただけます。

2013年を凌駕する真の強さ

今年の楽天は本当に強い!

主力組から控え組までナインそれぞれが指揮官の野球観に共鳴し、優勝へ向けて自らの役割の中で懸命に力を注ぐ姿は、2013年のときより今のほうが圧倒的に強いと感じる。

ソフトバンク3回戦は、いろんな意味で試金石のゲームになった。

開幕17戦中12試合で“中心9選手”の布陣で戦ってきたイーグルス。しかし、前日は主将の休養日になると、一夜明けた翌日は、正遊撃手どころか正捕手、正中堅手の名前もスタメンから消えていた。

“コア9”の解体から代役に抜擢されたのは足立と小郷、ともに今季初スタメンを飾った。

3戦連続の初回先制劇に、ゲームの趨勢を決定づけた5回6回の計8得点は、状態不良が続く茂木に代わり3度目の先発出場になった小深田ともども、控え組トリオの躍動が打線を力強く牽引した。

8番~1番に名を連ねた控えの3人は、4安打3四球6得点の活躍。出番が少なくゲーム感覚を養うのも難しい立場にありながら、素晴らしい輝きを放った。

たとえば、クリーンアップの全15打席中、走者有は11打席にも及んだ。この理想の攻撃ができたのは、お膳立てを整えた控え組の働きに尽きる。

一方、先発・塩見も正念場を迎えていた。

過去2戦はともに責任投球回もたずの5失点以上。前回7/2●E5-8Mは自己ワーストタイの6四球と我々は信じられない姿を目撃することになり、この日は「ダメなら2軍」と覚悟を決めて臨むマウンドになった。

コンビを組む女房役は足立だ。

太田との2戦で結果が出なかったから、目線を変えてバッテリーを変更したのだろう。塩見&足立は直近3年間の1軍では2017年5/31巨人戦と2018年5/4西武戦の2試合だけだったが、この起用が的中した。

結果、塩見の再生に成功。10年目左腕は7回4安打1失点、ハイクオリティスタートで今季初勝利を手にした。

これでチーム成績は18試合13勝5敗、貯金は今季最多の8へ。

降雨ノーゲームになった2位・ロッテとの差を今季最大の2.5に広げると、3位・西武とは4.0、4位・日本ハムと5.0、5位・ソフトバンクと5.5、6位・オリックスと7.0としている。

◎両軍のスタメン

楽天=1番・小深田(遊)、2番・鈴木(三)、3番・ブラッシュ(右)、4番・浅村(二)、5番・島内(左)、6番・ロメロ(指)、7番・銀次(一)、8番・足立(捕)、9番・小郷(中)、先発・塩見(左投)

ソフトバンク=1番・栗原(左)、2番・今宮(遊)、3番・柳田(中)、4番・バレンティン(指)、5番・川島(二)、6番・明石(一)、7番・松田(三)、8番・高谷(捕)、9番・釜元(右)、先発・バンデンハーク(右投)

◎試合展開

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今季初のノーヒット得点

初回は50m5秒9を誇るドラ1のスピードが、2018年から本拠地5連勝中の相手先発に重圧を与えるかたちになった。

先頭打者四球で出塁した1塁・小深田に対し、バンデンハークが再三再四の牽制。文字どおり4球目の牽制で悪送球を誘い、小深田は一気に2塁へ進んだ。

その後、2番・鈴木の進塁打で三進すると、3番・ブラッシュの中犠飛で生還。センター柳田からは素晴らしいバックホームがやってきたが、完全に制してホームインした。

今季の117得点中、ノーヒットで獲得した最初の得点は、自慢のスピードを生かした小兵のルーキーによる得点になった。

控え組3連打が生んだ5回4得点

5回の4得点は意義が大きい。

尻上がりで調子を上げてきたバンデンハーク。2回以降は楽天打線をヒット1本に抑えた好投を打ち崩す攻撃になったからだ。

おそらくここを逃していたら、長身右腕に6回1失点の好投を許しただろう。そして7回から高橋礼が出てきて、延長10回まで視野に入れた接戦にもつれこんだはずだ。それを回避する4得点になった。

1死満塁、2番・鈴木の勝負強さが今日も光っている。左中間を破る二塁打は走者2人をホームに呼び込むのに十分。その得点圏打率.500は、島内、浅村と並ぶパリーグ1位である。

◎パリーグ得点圏打率ランキング
1位 島内宏明(楽天) .500
1位 浅村栄斗(楽天) .500
1位 鈴木大地(楽天) .500

4位 栗原陵矢(ソフトバンク) .462
5位 井上晴哉(ロッテ) .444
(規定打席以上/7/9終了時)

ブラッシュも2点打で続いた。カウント球を軽打で中前に弾き返した一打は、空三振に倒れた前の打席でストライク2個を稼がれ、解説・柴原洋さんにタイミング合っていないと言及されたスライダー撃ちだった。

そんな5回の4得点も、1死後に足立、小郷、小深田の3連打なくして生まれなかった。

同じピッチャー返しでも・・・

なかでも印象に残ったのは、小郷の強襲二安だ。1-2と追い込まれるなか、ピッチャー返しの打撃を心掛けたのが奏功した。

打球は「2塁ベース右/セカンド左」。
二塁手・川島が横っ飛びを試みたが、止めるだけで精一杯だった。

みなさん、同じピッチャー返しでも、ほんの少し打球方向が異なると、ヒットになる確率が全く違うのをご存じだろうか。

「2塁ベース右/セカンド左」「2塁ベース左/ショート右」では明暗分けるのだ。僕の印象では、その割合は倍に迫る開き。

例えば、これは今季の楽天守備陣のゴロアウト率だが、以下のとおりなのだ。

2塁右/セカンド左 50.0%
2塁左/ショート右 69.6%

昨年来から僕の意識が特にそこにあるのも大きいと思うが、近年の遊撃手は従来の定位置よりも二遊間寄りにポジショニングを取ることが圧倒的に増えた。どの球団でも遊撃手は二遊間の意識が強くなっている。

いろんな事情があると思うが『単打での2塁走者の本塁生還率が最も高まるのは中前ゴロ安打のとき』という野球の構造も、影響しているものと推測できる。

一方、二塁手は1,2塁間のケアも重要だ。そのため遊撃手と比べると二遊間の意識はどうしても弱い。1,2塁間を突破する右安は1塁走者の三進率を大いに高めるので1,2塁間の警戒はおろそかにできない。

そんなことから、同じピッチャー返しでも「2塁ベース右/セカンド左」を狙って弾き返していくことがベターだと思う。本戦の小郷は巧みなバットコントロールで実践できてきた。

小郷の絶妙バントヒット

翌6回の4得点は、その小郷が今度は絶妙の奇襲攻撃で打線に火をつけたイニングになった。

初球の外角速球をセーフティバントで三塁線沿いに転がす三バ安に。昨年、三木監督が指揮するファームで山崎幹に続く3本のバント安打を決めた小郷ならではの手仕事になった。

この後、1塁走者・小郷の足を警戒したバンデンハークがリズムを乱し、小深田に四球。2死2,1塁で打席に鈴木を迎えたところで敵軍ベンチから白タオルが投げ込まれている。

楽天打線は火消しに出てきた鷹の救援陣を2四球2安打で攻略。浅村は球団新の5試合連発こそ逃したが、満塁で2点タイムリーと今日も4番の仕事をみせ、前日183打点と報じられたペースは、本戦終えて186打点へと加速した。

その28打点は2位のT-岡田に10打点の大差をつけて独走状態。2年ぶり3度目の最多打点のタイトル奪回は、はやくも現実的になっている。

2死走者なしからの大量得点は今季3度目

ところで、この6回は2死走者なしからの得点劇だった。

今年の楽天は当該場面からの得点が多い。
2死走者なしからの18得点は全117得点の15.4%を占めている。

今や12球団トップの得点力を下支えする重要な得点源になっている。もっと言えば、2死走者なしからの複数得点も多く、6/27○E18-4Fの5回2死走者なしは6得点、6/30○E15-4Mの6回2死走者なしでは6点を入れている。

NPB平均と比較した当該の得点期待値、得点確率は以下のとおりだ。

得点期待値・・・楽天0.205、NPB平均0.091
得点確率・・・楽天6.8%、NPB平均6.0%

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7回、打者26人、球数107、被安打4、被本塁打0、奪三振7、与四球1、与死球0、失点1、自責点1。

塩見復活。足立の緩急リードも光る

最後に軽く塩見について。

足立が塩見の武器の1つ「緩急」を上手く引き出した。

過去2戦で太田と組んだとき、その球種割合は速球51%、変化球49%だった塩見。しかし、マスクが足立に変更された本戦では速球45%、変化球55%、変化球多めの投球になった。

なかでも増えたのが平均109キロのカーブだ。
太田のときは13%だった割合が本戦では23%まで増加。
この遅球を混ぜた当該13打席では単打2本に抑える好内容だった。

3タコに退けた柳田との全9球勝負中、カーブはじつに7球も。3回の2打席目はカーブを4球連続で続ける配球で一ゴに仕留めるシーンもあった。

緩急を意識させたことで、敵軍打者がまるで金縛りにあったかのような象徴的シーンがあった。

それは6回先頭の1番・栗原との対決だった。
栗原はこのカード2戦連発だ。この日の初回先頭打席でも背走するJBのグラブを弾くツーベースを右中間に弾き返していた。

そんな売り出し中の24歳に対し、3-0とボール先行してしまう。
しかし、そこから1度もバットを振らず見逃しストライク3球連続の見三振!

栗原がほとんど微動だにしなかったのは、まさか大量8点差がつけられ意気消沈したわけではあるまい。塩見の緩急を駆使した投球術と安定したコントロールに、それだけ手が出なかったということなのだろう。

塩見が本来の姿を取り戻した絶好場面になった。【終】

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