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【試合観戦記】 5/14ソフトバンク1-4楽天: 「普通にはできなかった!」有原に悪夢を思い出させた島内四球、宋家豪が担う負担の大きさ

有原に悪夢を思い出させた2回島内先頭四球

「そこ(連敗)は特にもう考えてない。今年、初めてなので自分のできることをしっかりやりたい。気温もそんなに低いことはないと思うので普通にできるかなと思います。ベストを尽くせるようにしたい」

今季2度目の5連勝で首位を独走しつつあるソフトバンク。そんな常勝軍団で開幕投手を務めた有原航平は、前日報道陣の前で固い決意をみなぎらせていた。

しかし、過去の記憶はそう簡単に消せるものではない。

ご存じのように、有原は仙台のマウンドを苦手にしている。

過去13登板で防御率5.13。昨年の七夕には伊藤裕季也、フランコに一発を浴びるなど7回8安打6失点。この炎上が起点となり、ホークスは54年ぶり12連敗を喫してオリックスとの優勝戦線から脱落し、Vを逃した。

仙台では2020年6/26から5連敗中であり、この間の防御率は7.62。

初回三者凡退で無難に立ち上がったかにみえた190cm右腕に、その悪夢を思い出させたのは、島内宏明だった。

この日の島内は3タコに終わったものの、2回先頭の第1打席のフォアボールは、有原攻略へ大きな意味を持った。

徹底したカットボール攻めに遭いながらも、ファウルで上手く逃げるなど粘り腰をみせ、勝負はフルカウント9球へ。最後は有原の根負け。高めに抜けて島内が1塁へと歩いた。

無死1塁で鈴木大地。今季も27盗塁とよく走るイーグルスだが、1塁の島内は0企図だ。

しかし有原は計2度の1塁牽制をしており、その2度目は牽制悪送球になって島内は労せず2塁へ。

島内の足を警戒してのことではない。打者に投げにくさを感じてのその場を取り繕うかのような牽制球だった。この時点で有原の脳裏に過去がちらつき、はやくも動揺していた証拠ともいえるシーンになった。

この日、有原は今季最多4四球とコントロールに苦しんだ。しかし抜け球や浮き球、逆球が多発したわけでもない。狙ったコースに投じた球が微妙にゾーンをはずれてボールになるケースが多かった。

仙台の悪夢を思い出し「甘くなれば打たれる...」の疑心暗鬼のもと、厳しいコースを狙いにいってストライクを見失っている印象を受けた。

その後の無死3,1塁、平良竜哉による2-2から低めフォークをひろった先制打は、平良の泥臭いアプローチが実を結んだと同時に、1軍実績に乏しい格下打者から三振をとれない有原の“異変”を表わす一幕にもなった。

NPB復帰後、仙台で三振がとれない

そうなのだ。有原は仙台で三振や空振りが思うようにとれない。

平良の巧打で1点先制したイーグルスは、なおも無死2,1塁で辰己涼介も四球。この時点で球数は40を数えたが、有原が奪った空振りはゼロだった。ようやくの空振りは石原への初球、この日の41球目だった。

結局、有原は107球を投げて楽天打者のスイング43球から空振り奪取はわずか3球にとどまっている。

空振り/スイングを表わすWhiff%は7.0%。前回対決4/30●E0-8H(みずほPayPayドーム)では21.2%を記録した数字は半減以下。この数字は今季楽天戦に投げた敵軍先発投手の中でもワースト4位になっている。

そういえば、昨年の7/7もスイング47球で4球どまり。
NPB復帰後、仙台で2戦13回・打者56人に投げて奪三振2個だ。
仙台のマウンドには、有原のメカニクスやメンタルを狂わせる“決定的な何か”が潜んでいるのだと確信するゲームにもなった。

試合展開

ソフトバンク=1番・周東(中)、2番・今宮(遊)、3番・柳田(指)、4番・山川(一)、5番・近藤(左)、6番・川村(右)、7番・栗原(三)、8番・甲斐(捕)、9番・三森(二)、先発・有原(右投)

楽天=1番・小郷(右)、2番・村田(遊)、3番・浅村(三)、4番・島内(指)、5番・鈴木大(一)、6番・平良(左)、7番・辰己(中)、8番・石原(捕)、9番・小深田(二)、先発・ポンセ(右投)

両軍のスタメン

大きかった石原彪3号2ラン

4回、石原彪の3号2ランは貴重な加点劇になった。

2回の2点先制の2点目は、無死満塁で石原6-4-3併殺時での三走生還。タイムリーではなかった。もしH0-2Eのまま進んだら、終盤に楽天ブルペン陣にかかる負担はまた違った重さになっていたはずだ。

四球で1塁に歩いた辰己を塁上に置いての一発攻勢だった。

ボール先行1-0からストライクをとりにきた外甘の140キロカットボール。
これを前さばきで多少強引ぎみにひっぱりこんでの打った瞬間の左本になった。

これで66打席目ではやくも3本。

1本目は日本ハム右腕マーフィーの156キロ真っ直ぐを中本に。2本目はロッテの左腕・小島和哉の143キロストレートを左本に。そして3本目はカットボールだ。

結果球は3本とも速球系であり、オフスピードやブレーキングボールではないところが好印象。
変化球撃ちは経験を重ねていけば対応できるが、真っ直ぐ系の攻略は年を重ねてしまうと改善するのは難しくなる。

海の向こうで苦節4年もがいて今季途中に古巣に復帰したDeNAの筒香嘉智が、MLB定着できなかった最大の要因は、NPB時代から指摘されていたストレート撃ち、なかでもスピードボールに対応できていなかった弱点だったことを考えると、1軍の階段を駆け上がりはじめた石原が速球系で戦果を作れていることは、イメージが良くなる。

当たればデカいのがあると内外に示した石原の打撃は(まだデータが出揃っていないという部分もあるのだろうが)、はやくも敵軍バッテリーに不気味な脅威を与えている。そんな一幕が・・・(続く)

...続きは『Shibakawaの楽天イーグルス観戦記2024』でどうぞ。

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