【試合評】鈴木翔の快投。小峯の持ち味。髙田萌2被弾。投手全員の寸評~2/15●楽天3-4ロッテ

※本稿はnote全文公開。最後までお楽しみいただけます。

対外戦3試合目は、開幕カードで激突するロッテを迎えた。
楽天は初回に4番・和田恋が2試合連続のホームラン。一時3-0と先行したものの、中盤に髙田萌生がつかまった。2被弾を許すなど4失点とひっくり返され、打線は6回以降1安打。3-4と逆転負けを喫した。これで対外戦は1勝2敗。

本稿では登板した5投手について寸評/備忘録を書きました。

●鈴木翔天

今日の5投手の中でNo.1ピッチをみせた。

初回、2回ともに自らのミスで先頭を出したところは、反省しなければならない。とくに2回は一ゴ処理時、1塁を守るマーキのトスをベースカバーに入りながらポロリとやった。

そんな凡ミスもありながら、獲得アウト9個は全て内野で完結!
4奪三振に加え、ゴロアウト5個(1併殺、1犠打を含む)。打球管理は完璧だった。

このクラスの投手だと、ストレートは良いけど、変化球を操ることができず・・・という例も多い。

しかし、この日のイケメン左腕は、真っ直ぐも変化球も自由自在。
(球種割合は速球50%、変化球50%)

とりわけ、変化球の使いどころはみごとで、例えば初回2死3塁、4番・山口を迎えたピンチの場面は唸らされた。

2-1とボール先行から鈴木翔が投じたのは、なんと変化球!

真っ直ぐ1本待ちの右の強打者のタイミングを完全に外し、ファウルを打たせ、カウントを2-2と整えた。最後はバックフット狙いのスライダーで締める、みごとな三振ショーを演出した。

奪った空振りの多さも圧巻だった。その数は8球!

38球を投げ込み、ロッテ打者に20球スイングされたが、そのうち8球で空振りを奪取。スイングの40.0%でじつに空を切らせていたことになる。

背番号56は2軍での通算奪三振率は11.39を誇る。ファームでは対戦打者の約3人に1人を三振に仕留めてきた実績を持つ。そんなとびきりの魅力を、今シーズン初実戦で示してくれた。

それにしても、もっと苦労するかと思いきや、想像以上だった。というのは、この人、2軍通算54登板で先発たった2試合。プロ入り後は、救援畑をひたすら歩んできたのに、この上出来だ。

この結果を受けて、石井監督、小山コーチの鈴木翔の起用法に注目したい。このまま1軍の左腕ローテ候補として調整させ、イニングを徐々に伸ばしていくのか。今回の3イニングはロングリリーフ適性を測るためで、どこかのタイミングで再び中継ぎに戻すのか。

今シーズン、すでに小山コーチが同じ左腕の弓削は中継ぎ起用と明言している。だとすると、鈴木翔は先発候補が濃厚といえそうだ。個人的には高い奪三振能力を買い、中がおもしろいと思うのだが、首脳陣の判断はいかに。

●髙田萌生

鈴木翔が今日投げた5投手の中でNo.1ピッチなら、ワーストピッチは高田ブラザーズの弟だ。

本戦が今季2登板目。前回2/12阪神戦では1回無失点。しかしコントロールに課題を残し、11球のうち7球がボールになっていた。

その反省を受けて臨んだ本戦では、右の山口、左の安田に連続被弾をくらうなど2回4失点だった。

今キャンプ、髙田萌はスライダーのレベルアップに励んでいる。
2/9には視察に訪れた松坂大輔さんを質問攻めにした。

「理解が深まった。僕はひねって曲がりを大きくしてしまった。切って、ストレートに近づけるという話をされた。キャッチボールではいい感触だったので、決め球のようにしていけたら」

と手応えを口にしていたばかりだ。

そのスライダーは一定の収穫があった。山口に一発浴びたとはいえ、空振りを4球奪い、ストライク率も良く、見るべきところもあった。
いっぽう、投球の軸になるべき真っ直ぐでは痛打される場面が多々。球種で明暗分かれるかたちになったわけだ。

新球種を習得すると、既存の球種が悪くなる現象は、プロではよくあること。髙田萌も、その罠にハマっていなければよいのだが。

●吉川雄大

広島県。広陵高~東海大~JFE西日本~楽天21年ドラフト7位。
167cmは、ロッテの美馬学(169cm)、ソフトバンクの田浦文丸(168cm)を抜き、パリーグ投手最低身長である。

ドラフト当日は、ドラフトにかかると思ってなかったそうで、部屋でドラフトを見ずに、『プロ野球スピリッツ』で選手育成をしていたというエピソードの持ち主。

マネージャーから電話がかかってきて「おめでとう」と言われて「・・・何がですか?」と訊き返しほど指名されるとは思っていなかったと、昨年秋に羽村亜美さんのYouTubeに出演し、当日秘話を明かしていたのを思い出す。

2/12阪神戦では打者4人と対戦し1安打1三振。4人とも全て3球目までに追い込むストライク先行ピッチが印象的だった。

2戦目の今日は2回1安打1四球無失点。

初戦とは一転、ボール先行する場面もあったり、ピンチを招くシーンもあったが、常に落ち着きを払う投球内容だった点は、さすが社会人出身のなせる業か。

●小峯新陸

高卒3年目を迎えた育成右腕。昨秋の秋季練習で高評価を得て、1軍キャンプに抜擢。本戦が今季2度目の実戦になった。

余談ですが、カバディやってるお兄さんにTwitterフォローされてます。ありがとうございます!

前回2/12阪神戦では最速152キロを計測。「直球で押せた」と収穫を口にし、石井監督も「良い球を投げていた。順調に成長している」と高い評価を与えていた。

中2日で臨んだ今回も1回無失点。先頭を石原の低すぎる意識で振り逃げ出塁を許したものの、後続3人をピシャリ。

とくに評価できるのは、一発を放った4番・山口を二ゴに退けるなど、ゴロアウト3本で打ち取った点だ。

小峯は昨年ファームでのGO/AOが1.48。(秋季教育リーグ含む)
この数字が示すように、ゴロを打たせてアウトを重ねていくピッチャーだ。

その持ち味を発揮することができた。

3本ともなんとも言えない鈍い音のする打球だった。打者からすれば打ちたくない詰まったゴロになった。

●内間拓馬

大卒2年目は「内魔人」から「内魔神」を目指している馬力型右腕。

今季2登板目の本戦は9回1イニングを三者凡退。

しかし、高卒ドラ1の松川に中飛に仕留めたとはいえ、バックスクリーン方向へそれなりに良い飛球を打ち返されるなど、調整不足が気になる。

これで2登板を終えて40球を投げたが、打者から奪った空振りが1球どまりの結果も、球威・切れ不足なのかな?と心配になってくる。

森原が右肘手術で出遅れているだけに、ライバルは1人減って、自身初の開幕1軍入りのビッグチャンスなだけに、ハッパをかけて巻き返してほしい。【終】

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