なぜ防御率6.91に悪化したのか? データで探る、楽天・松井裕樹の不振、その理由

昨年、高卒2年目にして背番号1が残した数値は、圧巻だった。

63試合に登板、防御率0.87、3勝2敗12ホールド33セーブ。34回あったセーブ機会での失敗は僅かに1だった。

リリーフ投手が1イニング以上を無安打無四死球で抑えたとき、クオリティリリーフ(QR)が記録される。昨年は1イニング以上投げたときの42.4%で記録されていた。

最終回、koboスタジアム宮城に流れた「Centuries」は勝利へのアンセムになった。

そのはずだった。

今年は一転、苦しんでいる。

今季は背番号1に関する悪夢を複数見ることを余儀なくされている。その防御率が6.91まで悪化した5月5日本拠地ロッテ戦もその1つだ。

壮絶な戦いで、信じられない悪夢の敗戦になった。2点差を追った7回裏、楽天は4番・ウィーラーの満塁弾で逆転に成功。一転、2点のリードを手にしていた。しかし、その喜びも束の間、直後の8回表にミコライオが2失点。ロッテにしぶとく追いつかれたが、その裏、楽天は松井稼のバットからソロ弾が飛び出す。スコアは8-7、9回は守護神で1点差を逃げ切り、ルーズヴェルトゲームの達成だ。誰もがそう信じていた9回表、松井裕がまさかの6失点。敗戦処理に入った石橋も打たれ、この回だけで8失点。終わってみれば8-15の大敗を喫してしまった。

前述したクオリティリリーフ。昨年42.4%だった数値は今季はここまで20.8%まで下落。有無を言わさないマウンド支配力は影を潜め、塁上を走者で賑わすピンチの連続が増えている。

いったい今年の松井裕樹はどうしてしまったのか?

それを数字で探るのが、本稿のテーマだ。まずはこちらの表をご確認頂きたい。

主な投手指標をまとめたものになる。前年と同程度の数字を維持できたのは奪三振率と空振り率の2項目だ。正確に言えば前年からやや下げてはいるが、それでもNPB平均と比べると、まだまだ相当高い値をキープしている。この不調時にあっても、松井裕樹の一丁目一番地は健在という事実は、今後へ向けた明るい材料だ。

逆に言えば、その2項目を除いた大半の指標で悪化した。

この表をもとに言うなら、フル回転した昨年の蓄積疲労の影響に加え、打たれ始めた後にはメンタル的なショックも尾を引き、投球フォームに狂いが生じ、コントロールが悪化。不安定な投球フォームで繰り出されるストレートは、前年比でスピードダウン、球威も減少、打たれるケースが増えてしまった、そうまとめることができそうだ。

背番号1のスランプは確かにそういうことになるのだろう。しかし、これだけなら、データに少し興味のある野球好きなら、誰でもスラスラとそらんじることができる初歩的レベルになる。本稿は、皆さんが所持していない、確認できないデータをもとに、もっと具体的にあの場面のあの部分が悪化したという詳細まで踏み込んでいきたいのだ。

今季、筆者は松井裕が登板するたびに、ある1つのチェックポイントを念頭に入れて観戦してきた。それは・・・

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