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東京芸術中学に通った話(5)


自主学習


東京芸術中学に通っていると様々なインスピレーションが得られる。

8月は芸中の講義がなかったので、私たちは2週間かけて四国から中国地方を巡った。いつも細かい計画を立てずに適当な旅をしている。飛行機で松山に入り、アルミ鍋に入った独特な鍋焼きうどんを食べながら次の行き先を考える。大体その日の宿泊先も決まっておらず、帰りの飛行機だけが決まっている。旅行前の瀧本幹也さんの講義で、高知県の梼原ゆすはらにある隈研吾の建築群を撮影された作品を見て、気になっていた。林業が盛んな山奥でアクセスが悪いのもわかっていたが、今を逃すと一生行かないだろうということになり松山から車を走らせた。なかなかの山道を越え、整備された集落が唐突に現れ、点在する隈研吾の建築を訪ね、思い思いに写真を撮った。四国の山奥にこんなに美しい建築物があるなんて。

そんな感動もあり、私たちは9月に東京の国立近代美術館で開催された隈研吾展にも足を運んだ。そこでも梼原を撮った瀧本幹也さんの映像作品を見ることになったのだが、娘も行って見てきた場所であるだけに没頭して鑑賞していた。音楽は菅付さんの講義で度々話がでてくる坂本龍一だったのだが、その影響もあって、娘の癒しBGMに坂本龍一がラインナップされた。夫は梼原の木でつくられた厚いまな板を買って帰ったが、料理をする度に旅の記憶が蘇る。

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とても美しい図書館。
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隈研吾展にて、国立競技場の模型。

旅のまた別の日、高知県で鰻が焼けるのを待ちながら午後の予定を考えていた。そういえば菅付さんが細田守監督の「竜とそばかすの姫」の話をしていたことを思い出した。映画の舞台は高知、今日観たら良いのでは?ということになり、その日の夜に観賞。きちんと予定をたてておかないことも何かと便利なのである。翌日訪れた仁淀川は映画の舞台となっており、図らずも聖地巡礼を満喫した。その後の森永邦彦さんの講義では、ANREALAGEと「竜とそばかすの姫」のコラボレーションもあり、イメージが繋がっていく。

沈下橋の向こうの集落にすずが住んでいる。


保護者の関わり(我が家の場合)


芸中の講義は全て保護者に開放されており、随分おおらかだと思った。保護者の皆様は、毎回来る人、リモートで参観する人、興味に合わせて来る人など様々だった。

芸中で繰り広げられるゲスト講師と菅付さんの会話を聴いていると、行ってみたい場所や観たい映画、読みたい本などがどんどんリストアップされていく。それは娘が芸中を卒業してもまだ消化できていない。また、現在進行形で活躍されているクリエイターの方々の次から次へと生み出される作品を追うだけでも、忙し楽しいが続くのである。

主宰者の意図したことではないかもしれないが、我が家に限って言えば、聴講してインスパイアされた親がクリエイティブな家庭環境を築こうとモチベートされるという好循環であった。と、今となってはいくらでも書けるのだけれど、単純に言うと、とても楽しかったのです。

ライゾマティクス_マルティプレクス展 真鍋大度さんの講義は娘が入学する前で受講できず。


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