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Q&A|俳句の授業の悩み 中学校の非常勤講師として(2)

この記事は、日本俳句教育研究会のJUGEMブログ(2017.06.07 Wednesday)に掲載された内容を転載しています。
参照元:http://info.e-nhkk.net/

nhkk事務局スタッフ:
「Q&A|俳句の授業の悩み 中学校の非常勤講師として(1)」の記事でご紹介しました、ご質問への回答です。


Q①

12音の俳句の種の中に、「楽しみだ」・「行きたいな」・「がんばるぞ」など、気持ちをそのまま言葉にしたものがかなりあったのですが、このような言葉が適切でない(?)ことをどのように伝えればいいのでしょうか。

A① 

「楽しみだ」「がんばるぞ」などの感情語の入った俳句は、どの教室でも多く見られる作品群です。感情語が入った佳句もありますので、絶対ダメという訳ではありませんが、感情語を入れて成功させるのは初心者では難しいのが現実です。「取り合わせ」の作り方でご指導をされているようですから、生徒さんには、
「楽しみだや、がんばるぞなど、答えを全部言ってしまうと面白くないよね。それに、みんなのつぶやいた俳句の種の気分を語ってくれるのが、取り合わせようとする季語だから、気持ちを全部12音の中にいれなくて良いんだよ。」
と伝えていただければと思います。
 nhkkの『俳句の授業ができる本』では、「『うれしいな』『かなしいな』俳句撲滅作戦」(P44)として、先にあえて感情語が入った俳句を作らせて、あとで、感情語を季語に置き換えるという手法を紹介しています。この撲滅作戦では、俳句の気分(感情)は、実は季語が担っているのだということを実感してもらうことができます。
 中学生と俳句作りに取り組まれているということですので、ぜひとも感情語の作品群を逆手にとって、「季語と関係のない12音」+「5音の季語」で作る「取り合わせ」が、なぜ後から季語を選んで取り合わせるのか、ということを中学生にも実感してもらう材料にしていただければと思います。
 「取り合わせ」という型では、個人個人のオリジナリティあふれるつぶやきと、感情まで語ってくれる季語とがスパークするので、初心者でもあっと驚く俳句が詠めるのだ、と分かってもらえると、12音と取り合わせる季語を自由に操ることを楽しみながら俳句に取り組んでもらえるのではないかと思います。
 また、今回「風薫る」・「衣替え」がお題となったようですが、生徒さんたちの作る俳句の種が前向きの気分でない場合もありますので、「梅雨曇」などの、陰の気分を語ってくれそうな季語も入れておくと、またできあがった句にバリエーションが生まれてくると思います。ぜひ、お試しください。


Q②

鑑賞する際、「私も同じ経験があるから」、「共感したから」と発言する生徒が多く、句自体の言葉や、情景に言及することが少なかったのですが、この辺りのアドバイスの仕方はどのようにすべきでしょうか。

A②

初めから上手く読み解くことは難しいので、「同じ経験がある」「共感した」という感想から初められたので構わないと思いますが、「どのような『同じ経験』なのか」、「どう『共感』したのか」などを具体的に聞いていくと、さらに深まっていったり、その発言をきっかけに、また別の発言が出てきたりという、好循環が生まれていくこともあります。
 また、句会(ライブ)では、良い点を深めていくことになると思いますので、話題となっている「俳句の中で季語がどう良い(効いている)のか」、「他の季語ではどう変わるのか」、など、作者がその季語を選んでいるということの意味に寄り添っていくと、作者の意図にも近づいていきますし、季語の深さに思い至っていき、鑑賞も自然に深まっていくことになります。

 さらに発展的な内容としましては、日々の作句の際などに時々、副会長が選句をしております「俳句ポスト365」の「天・地」の入選句などの中から、中学生の共感を呼びそうな句をピックアップしておいて、先に「どんな句だと思う?」と考えさせた後、副会長の選評を紹介して、鑑賞の練習と佳句に触れる機会を作っていくなどの方法も考えられます。

 先生の、「『俳句をする時間が楽しみ』、『句会が待ち遠しい』と生徒に思ってもらう」という目標に、同じ志で活動をしておりますnhkkとしましては、背中を押してもらった気がしました。「1~2ヶ月に1度の句会を実践しつつ、生徒はもちろん私も成長できたら」とのこと、ぜひとも、今後の実践の様子などもお知らせいただきますようお願いいたします。


■日本俳句教育研究会(nhkk)
「俳句」を教材とした様々な教育の可能性を研究する日本俳句教育研究会は、「俳句」を教材に教育活動を展開しようとする教師や俳句愛好家の情報交換の場になりたいと活動する任意団体です。

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