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大学|高知大学句会ライブ

nhkk事務局スタッフ:
新生nhkkをスタートして、記念すべき第一回目の実践報告は、彼方ひらくさんより届いた「高知大学句会ライブ」のレポートです。


彼方ひらくさん:
この度、俳句の講師として高知大学様で講義とミニ句会ライブを行って参りました。

参加者は国際連携推進センターの教員の方々、アメリカ・イギリスからの外国人留学生、日本人学生の皆さんの計15名。全員俳句は初めてで、一人一人自己紹介されたあと、英語の通訳を交えながら講義を進めました。俳句の歴史、口語と文語、新仮名遣いと歴史的仮名遣い、切れの概念、俳聖である松尾芭蕉、明治の改革者である正岡子規などなど……は、全部省略しました(笑)

そんな時間もないですし、通訳が難しすぎるためです。

言葉に頼れない部分が多かったので、写真やイラストをふんだんに使いました。特に評判が良かったのはこちら。

この中からみんなで夏の季語を探しました。フリー素材の画像を組み合わせています。さすがに日本人学生は次々と季語を見つけていきますが、教員の一人、Sharpe教授からも「カワセミ」の一声。ちなみに、イラストの真ん中の男性は季語の塊です(俳人が見ればざっと6つでしょうか)。

この部屋の中にも季語があるでしょうか? と問いかけると、「エアコン!」。惜しい、正解は「冷房」です。他にもペットボトルの「アイスコーヒー」があったり、飲み物用の「氷」があったり。「氷は夏ではなく冬の季語です」なんて水を差すことはこの講義では言いません。

実は今やっているこのイベントは「夏期講習会」という季語です、とドヤ顔で教えたところ、七音以上あるので俳句の型に入らないのではという鋭い指摘が。字余りや句またがりのことを語り出すと長くなるので、「童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日」という長い季語もありますよと教えるにとどめました。

鑑賞の練習でいくつか例句を紹介しましたが、一句目は夏井いつき組長の「一本の百合のごとくに戦はぬ」です。

初心者には難しい句で、使うかかなり迷ったのですが、直ぐに日本人の女子学生から「堂々としろってことですか?」と良い言葉が出てきました。季語「百合」の持つイメージを「背が高くて、花は大きく、美しくて純白で」と説明し、後はあくまで私の解釈ですが、「もし百合の花と戦うとしたら皆さんどうされますか? 手で折って踏みつけたら勝てますね。百合は弱いです。でも、百合の花にそんなことをする人がいるでしょうか。それも百合の強さかもしれません。夏井先生は何と戦わないのでしょうね?」というところで終えました。また、俳句は作者の手を離れたら、読み手の自由なのだということもしっかり伝えております。

他にも、例句を紹介してから作者が子供だったり外国人だったりすることを明かして句作のハードルを下げるように努めました。

また、最後の例句では池田澄子さんの名句「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」の「蛍」を「〇〇〇」として穴埋めで想像してもらい、答えを明かしたあとも「毛虫」などに入れ替えて鑑賞してもらい、喋れないが闇の中で光ることのできる「蛍」という季語が動きにくいことを確認しました。

穴埋めの好きな夏の季語を選んでもらうと「蟹(チョキしか出せないから)」「西瓜(なんで?(笑))」など面白い発想が。

後半は句会ライブを行いました。

俳句を考える皆さん。最初はざわざわしていましたが、途中から静まりかえります。句作時間は長めにとりましたが、Sharpe教授の句がなかなか完成せず、最終的には「三日かかる」ということで(笑)、今回は断念していただきました。後で伺ったところ、夏の季語「滝飛沫」(勿論、教授はご存じないわけですが)の句を作ろうと苦心されていたことが分かりました。やろうとしていることが高度でしたね。

今回、皆さんが作られた句の中から、私が選んだ特選句は下記の通り。

 かき氷あっとうてきピンク海のそば
 雲の峰ちゃぷちゃぷ歩く子供たち
 ちょうがうくくものすをよけはなにまう
 八月は君への熱狂で苦しい
 ごきぶりを叩いて頭とれにけり
 電話越し気持ちはバレバレ父の日や

挙手で投票した結果、「ちょうが~」と「八月は~」が同票。決選投票で「八月は~」が今回の優勝句となりました。作者はブライアンさんです。「八月」という季語については鑑賞ではふれられなかったので皆さんに意味を考えていただきましたが、誰にも分からず。最後に作者のブライアンさんに聞いたところ、「八月になると好きな人が帰省して会えなくなるから」ということでした。八月の暑さと感情の熱の対比も考慮されていたそうです。お見事!

「ちょうが~」の句の作者は留学生で俳号「くわがたむし」さん。写真から作られたそうです。投句時の短冊にはイラストも描いてくださっていました。教員の長野教授が鑑賞してくださっていたとおりで、蝶が恐るべき蜘蛛の巣を避けるという写生が素晴らしかったです。長野教授は「海の家手を振る先に大型船」という見事な句も作っていらっしゃいました。

実は私の盟友である桃猫さんもサポーターとして参加されていました。留学生の句作を手伝ってくれていたのですが、「桃猫さんも作ってくださいよ」と無茶ぶりしたところ、1分で提出されたのがごきぶりの句でした(色んな意味で選ばざるを得ませんでした)。外国人留学生の皆さんからは、ごきぶりを句材としていること自体が面白いとの意見。俳句って摩訶不思議なPoemです。

折角ですので、その他の句も紹介させてください。良い句ばかりでした。

 海の家手を振る先に大型船
 アツい日の原動力は生ビール
 誕プレで友と食べるかき氷
 よるの川はあめのかみなりがはなとにじをなつです
 一限とアリの行列窓ぎわに
 夏の山登りたいけど虫多い
 うみおよぐいきものみえるうつくしい
 トマト食う君の横顔ステキだね
 うみのちかくでシャッターのおといっしょつゆのほしや

(※今回は2句出された方もいますが、1人1句のみ紹介しています)

なお、今回の講師のお仕事は『HAIKU TIME』の Grant 愛 さんの依頼によるものです。貴重な経験を積む機会をいただきました。


nhkk事務局スタッフ:
彼方ひらくさん、アイデアに満ちた実践報告をありがとうございました。イラストを使っての季語探し、初心者の方々でも盛り上がりそうです!
 

■日本俳句教育研究会(nhkk)
「俳句」を教材とした様々な教育の可能性を研究する日本俳句教育研究会は、「俳句」を教材に教育活動を展開しようとする教師や俳句愛好家の情報交換の場になりたいと活動する任意団体です。

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