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小(中・高)|続 俳句であそぼう 5 分で 1 句

nhkk事務局スタッフ:
福岡女学院中学校・高等学校の谷口奈々美先生より、8月にご紹介しました「オープンスクール・ミニ句会」の続報が届きました。

前回の改善点から、実際に実践をなさっての感想、今後の授業のアイディアなどなど、掲載しております。ぜひ参考になさってください。※配布プリントもダウンロードできます。


谷口奈々美先生:
夏の授業での焼き直しにはなりますが、少しアプローチを変えて、秋のオープンスクールで小学生5年生、6年生 の7名を対象に、体験授業を致しました。今回は、10分延長して頂き、40分の授業となりました。前回の生徒さんの手応えから、授業の形態を見直してみました。

前回からの変更点

前回、「俳句の種」から作ることをお勧めし、実際に 12 音で書いてもらおうとしたのですが、小学生のみなさんは、多くの季語を小学校で学ばれているようで、ほとんどの生徒さんが、季語から句を発想されておられました。初対面でもあり、いきなり、最近のできごとで楽しかったこと、心にのこったこと、かなしかったこと、を 12 音で書くのは、なかなか難しいようでした。季語一覧表をお見せすると、様々な思い出がよみがえるというので、好きな季語を先に書いてイメージを膨らませた生徒さんが多かったのです。

そういうわけで今回は少し季語のお話も入れて、季語の力に頼ることといたしました。

前回は黒板に彩りもなかったので、はじめの説明で、季語を実際に映像や模型など(かわせみ、さくら、薔薇、あじさい、滝、ナイター、くらげ、満月、曼珠沙華、紅葉、柿、文化祭)を使ってお見せしました。彩りがあるととても美しくイメージを刺激するのではないか? と思ったのです。これは「おウチde俳句」から頂いた発想です。

紅葉と柿の模型を生徒会室からお借りして、黒板に飾り、秋の彩りを添えました。 ぱっとクラスが明るくなりました。授業者である私は、胸に、夏帽子のブローチを付けて、お見せしました。身近なところにたくさん季語があり、そこから日々の体験を俳句にできますねとお話ししました。みなさん食い入るように電子黒板に見入っていて、季語の力をまざまざとここでも実感することとなりました。

俳句の作り方の説明、実作、発表、互選

俳句の作り方の説明、実作、発表、互選までやりたいなと、あれこれグッズをつくり、何とか40分で互選まで終えることができました。

a、俳句の決まりについて確認

季語がある、五七五の音数のことは皆知っていました。

b、季語の説明

春の季語、夏の季語、秋の季語、冬の季語を画像で見せたので、教室がぱっと明るくなり、生徒さんの表情もぱっと明るくなられました。

c、俳句の作り方と読み方

私が残業したときの満月の写真をお見せして、俳句の種「残業で遅くなったな」を紹介し、「月まどか」「月さやか」などをいれて、一句作ってお見せしました。

次に、先輩の作った俳句を使って、作り方を説明。俳句の種は、そのまま「数学のノートを閉じる(冬林檎)」の季語を伏せて、黒板に貼った季語のカードをいれてもらい、どんな景色や思いが見えてくるのかを語ってもらいました。「星月夜、梅雨曇、ラベンダー、散る桜」などなど。

今回も、季語を入れ替えて、数学がよくできたとか、あまり好きではない、よくできなかったなどの意見が出ました。先輩は冬林檎を選びましたよとはなしたら、前回と同じくぱっとみなさん顔があがりました。すっきりと数学の問題も解くことができて満足! といった意見がでました。冬林檎を選んだ先輩のセンスがここでもきらりと光り、参加者の心に届いたようです。

また、「父さんのみやげはケーキうれしいな」のうれしいなを季語に替えてみるとどうなるかもやってみました。「桃の花」なら、ひな祭りのイメージだし、「クリスマス」ならクリスマスケーキのイメージにもなるし、「息白し」ならお父さんが寒い中、お土産を買ってきたという風景がイメージできるという感じでした。

俳句実作

五音の季語のプリントを見ながら、最近の体験、楽しかったことや、思い出などから、俳句の種を作ってもらい、季語と合わせてもらいました。やはり季語のイメージから、楽しかった思い出を描いてくださった方もいました。三分で三句も書いてくださった方も。ほぼ五分で下書きができあがったら、カードに清書してもらい、黒板に貼り出しました。

配布プリント:詳細はダウンロードしてご覧ください

俳句を選び鑑賞

自分の名前を書いたカードを一人二枚ずつ好きな俳句の下に貼りに来て貰いました。サポートの先生二人も選に参加してくださいました。

五点句が一人、三点句が一人、あとの五人も二点ずつ点が入りました!

私からの「胸キュン大賞」は
 旗使いみんな団結体育祭
でした!! ちょっとだけ、質問してみると、今、ちょうど体育祭の練習をしていて、旗を使って応援している様子を書いたのだそうです。

さて、互選の一番人気は、
 満月の暗い夜空に夏来たる
二番人気は
 ひまわりが冬にも咲いてる春隣
この三人への商品はキテイちゃんのメモ帳です。みなさん初めて来た学校で、初めて出会った先生の説明で、たった5分で、本当によく書いてくださいました。時間の関係ではじめの三句くらいしか鑑賞や本人談はきけませんでしたが。最後は全員で皆の俳句を音読して、参加賞のカラー消しゴムをお渡しして、拍手で終わることができました。

大人の俳句では季重なりとか、いろいろと思うのですが、小学生のみなさんの感受性に教員の方が新鮮な気付きを頂きました。「満月といえば、満月の当たっていない空は、とても暗いのですね、その暗い部分に夏が来た」という発想に素敵な詩情を感じました。「たしかに冬にもさいてるひまわり、ありますね。そこに冬を押しのけていく強さ」のような詩情を書いてくださったようでした。まずは、こうして感じたことをあるがまま 17 音で書いてくださったことに今回も授業者が大変元気を頂戴いたしました。

ひまわりが冬にも咲いてる春隣
庭に出て木を見てみると青みかん
秋うららママの作ったカレーライス
ミッションにやってきました天高し
満月の暗い夜空に夏来たる
夏の空青が広がるきれいだな
旗使いみんな団結体育祭

※福岡女学院は、「ミッション」という愛称で呼ばれています。

ふりかえり

前回は「夏休みの自由研究にしよう!!」というテーマで授業を始めましたが、今回は「わたしだけの思いでのアルバムを作ろう!!」というテーマで台紙もプレセント、「おーいお茶新俳句大賞」のご紹介を致しました。前回と同じように、季語を入れ替えてみて鑑賞してもらったときに、すでに生徒さんは、俳句の世界を理解されていて、小学校でも俳句になじんでおられることがよくわかりました。また、色々と教えなくても、一つの季語からイメージを飛ばして生徒さんがサクサクと作ってゆかれる、俳句が生まれる瞬間に出会い体が震えました。

大人が忘れてしまった体験や、日々の出来事を生徒さんが、心に持っている、その瑞々しい感性や日本語をとらえる感覚にこちらが勇気を貰いました。この密度の高さを持って、更に中学生や高校生の授業を深めたい、とこちらが学びをいただきました、ありがたい一日でした。気楽に 3 0分~40分でミニ句会、これならやれる!  とわかったので、中学三年生の授業でも実践をふかめたいです。

福岡女学院中学校・高等学校
-Fukuoka Jo Gakuin Junior & Senior High School-
facebook 9月26日 10:56投稿
より

今回、二回のオープンスクールで実感したのは、以下のようなことです。「俳句の種」から作る、取り合わせの作り方を勧めてくださる、夏井いつき先生ならではの手法も、「あの軽妙な話術と対話ゆえだな」としみじみ誘導の難しさを痛感いたしました。

幸いにして、翌日、筑後市の夏井先生の句会ライブに参加したので、先生のお言葉の一言一言を心に留めて伺うと、本当にきめ細やかであり、具体的であり、デモンストレーションでのお導き方がすごく行き届いておられて神業! と今更ながらに絶句。オリジナリティの説明も、参加者が実感を伴って体感できる、すばらしく深いアクティブラーニングでありました。 自分の導き方の浅さを身を以て実感したのですが、自分が実際に実践してみたからこその気づきであり、今更ながら、夏井いつき先生との出会いに手を合わせております。何事もまたチャレンジに次ぐチャレンジだなと次なる課題をどーんと頂戴いたしております。

ここまでお導き頂きました夏井いつき先生、まことにありがとうございます。この場をお借りして、こころよりお礼申し上げます。このご恩返しは現場での地道な俳句の種まきといたします。

次回以降やってみたい「授業のカタチ」

オープンルクールに加えて、日頃の中学生の授業などの振り返りから、またまたいろいろなアイディアが浮かびました。

a、名句で句会(鑑賞中心)
b、名句の季語を入れ替えてみるクイズ形式の授業。
c、先輩の俳句で句会(鑑賞中心)
d、先輩の俳句で季語を入れかえてみるクイズ形式の授業)
e、俳句カルタ(名句と俳画のカルタとり)
f、「看図アプローチ」で一枚の絵を見てもらって、そこにあるものを書き出してみる。名詞(~こと)や動詞(~が~していること)を一枚の絵から書きだしてみる。そこから季語と併せて俳句を書いてみる。
g、高校生には句集をひとりずつに配り、そこから好きな句を選んでもらい、作者になりきって句会形式で句会を行う。これも工夫次第(句集ではなく、選んだ句のプリント)では、オープンスクールでもできるかもしれません。

反省点ばかりの毎回の実践ですが、「実践も失敗も授業の先生であり、百倍の学びである」ということを改めて実感いたしております。今回もまた、拙い内容ですが、大きな課題を頂いた、ありがたい体験でしたので、まずは、ご報告いたします。

末筆ながら、次はぜひとも研究会などで、先生方におめにかかりまして、授業実践についての意見交換もさせていただきたいという希望を持っております。


nhkk事務局スタッフ:
次回以降やってみたいアイディアの数々も興味深く拝見いたしました。授業での実践はもちろん、谷口先生の俳句の種蒔き活動のレポートを拝見できるのを楽しみにしております。

■日本俳句教育研究会(nhkk)
「俳句」を教材とした様々な教育の可能性を研究する日本俳句教育研究会は、「俳句」を教材に教育活動を展開しようとする教師や俳句愛好家の情報交換の場になりたいと活動する任意団体です。

ご連絡は、HPの「お便り・お問い合わせ」からお願いいたします。