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「つくる、さばえ」宣言を行いました

2月3日、「つくる、さばえ」宣言を行いました。

100人以上の来場者が詰めかけるなか、鯖江に流れる「つくる」アイデンティティを中心に据え、これからの未来をつくろうとする、力強い宣言を行うことができました。竹部さんが言及してくれていたことだけど、こういう場に高校生も商工会議所や眼鏡協会のトップも一緒にいられる鯖江は、本当にすごいまちだと思う。

つくる、さばえ会議、佐々木市長の言葉が就任時よりずっとずっと重く深いものになってきていて、市長自身もすごく悩みながら挑戦しながらここまで来たんだなと、変な言い方かもしれないけど、一緒に「つくる」仲間になってくれていることに、感動したというか、普通にシビれました。めっちゃ良かった。

ご興味のある方は特設サイトをご覧になっていただけたら嬉しいです。こちらも気合の入った、いいサイトになっています。

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さて、この「つくる、さばえ」ブランド戦略策定においては、僕は全体のコンセプトメイクや、検討を行うチームメンバーS9のファシリテーションの立場で、かなりがっつり関わらせてもらいました。その目線から今のうちに、ネタバレじゃないですが、簡単に振り返りをしておきます(これについては、いつかまたじっくり言葉にできたらいいなと思っていますが)。

このブランド戦略策定は、僕にとっていくつかの視点でかなり面白いものでした。

まず過程という視点では、この策定プロセスは、市からのブランディング依頼が、福野さんや竹部さん、市役所職員を巻き込みながら徐々に展開されていったものでした。さらにこのブランド戦略に対してはブランドブックが策定され、すでに述べたように市長やさまざまな団体のトップが来場するようなシンポジウムが開催されてきました。これはいわばただの言葉にすぎないものが、私たちにとってのゆるぎがたい事実 matter of fact として成立していく過程であり、それを間近で見ることができたのはかなりアツい体験でした。RENEWなんかもそのような過程を辿ってきたはずではありますが、それはより分散的かつ長期的に生まれてきたもので、それを1,2年という短時間のあいだに感じられたのはとてもいい経験だったと思う。

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ついで制作物という観点では、今回エツィオ・マンズィーニ的なデザイン中心シナリオの手法を取り入れ、つくる、さばえという抽象的な未来の理想像を、可視化され、たどり着く経路が見えるまでにブレイクダウンしたシナリオを5つ示すという新しい見せ方を試みました(それをデザインに落とし込んでくれたのはTSUGIのデザインチームです、感謝です)。

これらのシナリオはいずれも、鯖江にいれば「あ、なんかこういう人いるな、わかるわかる。こういう景色見れたらいいよね」というものばかり、になっているはず。そういう共有される景色があるからこそ、この景色を見るためには、じゃあこんなことに取り組めたらいいよね…という具体的な話ができるようになる。シナリオを通じて、これからの動きの可能性を具体的に示唆することができ、かなりおもしろい事例になったのではないかと思います。

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最後に、「つくる、さばえ」という語そのものについて。

今回、実はこの「つくる」のコンセプトメイクはかなり僕中心にリードさせていただいたのですが、このタイミングで「つくる」という語を前面に押し出せたのはとても良かったと思います。鯖江はメガネや漆器をはじめものづくりの歴史と自負があり(事実、第2次産業者比率がかなり高い自治体です)、さらにそれを社長輩出率の高さ=自分たちで暮らし/生業をつくるうねりや市民主役=「私たちで住みたいまちを自分でつくるうねり」と紐づけつつ、今回鯖江のアイデンティティを「つくる」として位置づけました。このコンセプトは、鯖江の歴史と紐づいたものだからこそ、誰にとっても頷ける言葉になったのではないかと思います。

一方でこのブランド戦略は、実は非常に現代的なものでもある。つくる、さばえの背後に流れているのは、つくることの民主主義という力強いイデオロギー。自分たちが他者と協働しながらほしいもの・やりたいことを実現し続け、それらが応答しながらよりよい社会が生まれるのだという宣言です。

当然その背後にあるのはデューイ的なプラグマティズム。その内容は公共とデザインの書籍「クリエイティブデモクラシー」に詳述されているとおりですが、プラグマティズムの歴史は、私たちが実験してみること、つくること、そのなかでこそ民主主義は実現されるのだと説きました。誰もが、自分自身のニーズに応答したり、それぞれの理想の未来を生み出したりしてみる。それらがぶつかりあったり、交わったりしながら、理想の未来は生み出されていく。「つくる、さばえ」の背後にあるのは、そんなつくること、そしてその先にあるよりよい未来への(それはたどり着くべき山頂ではなく常に動的なものですが)願いです。

さらに、今回つくるの5つの文脈を提示したなかのひとつに「支え手づくり」を盛り込みました。これももちろん、エツィオ・マンズィーニ的なソーシャルイノベーションのためのデザインを踏まえたもの。都市/行政(都市/行政だけである必要はまったくないのですが)を「私たちのイネーブラ」として捉え、よりよい環境、よりよい条件を生み出すのが都市/行政の仕事だと位置づけたのです。

佐々木市長はすでに、鯖江の長年の市民主役の流れを受け取り、そして市長として鯖江のことを深く考えるなかで、このことを完全に理解している。「居場所と出番をつくりつづける」。これが行政の仕事なんだと、シンポジウムのなかでも佐々木さんは力強く語ってくれました。そのなかで、市民がほしいもの・やりたいものを形にしつづける。そういうエコシステムをつくっていくのだと。

「つくる、さばえ」は、誰もが自分のすべきことを見いだせる力強い宣言になったと思います。僕もこの「つくる、さばえ」のなかで、代弁者あるいは媒介者として、誰もが乗り込める舟、誰もが踊れる舞台を生み出していくつもり。これからの未来がめちゃくちゃ楽しみになる会議でした。ありがとうございました。


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