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女の覚悟はすごいぞ

前回の記事の続きです。

以前、夫は多忙を極めていた。
同僚の女性たちの育児休暇&時短勤務が重なったからだ。
夫のチームは女性が多い。
もともとは男性のほうが多かったのだが、仕事が大変なので辞める人もいて(環境というより、頭脳的についていけなくなるらしい)結局、残ったメンバーを数えたら女性のほうが多くなっていたらしい。

女性が辞めない理由を夫はこう話している。

「男はここを辞めても、また同じような条件で働けるって思うんだろうけど、女性はここを辞めたらもうこんな好条件(特に給与)で働ける場所はないって考えるんだろうな」

あるある。私も結婚するとき言われたわ。
せっかく大企業の正社員なのに辞めるなんてもったいない。もう二度と戻れないよ、って。

「そのせいかな。彼女たちは仕事に対する覚悟が男とは違う」

これもあるある。大学受験を思い出すわ。
私のクラスで同じ大学を受験したのは10人?11人だったかな?
そのうち女は私一人。そして合格したのも私だけだった。

教室で不合格だった男の子たちが浪人するか、すでに合格した他大学に行くか、もしくはこれから他の大学を受験するか、相談し合ってる姿に衝撃を受けたわ。
私と違って、彼らはなんて選択肢が多いんだろうって。

私は浪人なんて許されないし、いろんな大学を何校も受けさせてもらえない(大学一校、短大一校だけ)これは単に私の家が貧しくて、受験料が出せなかったからだけど。
落ちたら、すべり止めに受けておいた短大に否応なく進学させられる。「また来年、頑張れ」なんて言ってもらえないし、時間もお金も与えられない。

男と女では選択肢の数に差があること。それまで漠然と感じ取っていた女性の生きにくさの原因と初めて対面したような気持ちだった。

ただ、こうも思った。私が彼らに負けるはずがないって。
だって、背水の陣で試験に挑んだ私と彼らでは覚悟が違うもの。
女の覚悟を舐めんなよ。

「やっぱり育児休暇とっちゃう女性なら、仕事に専念してくれる男性のほうがありがたいなって思う?」

そう言った私に、夫は即「思わないよ」と答えた。

「僕たちのような専門職は仕事ができるようになるまで時間がかかる。今から一人の男性を彼女のレベルにまで引き上げることを考えたら、彼女が戻ってくるのを待つほうがいい」

「戻って会社に居場所がなかったらどうしよう」と不安がっていた育児休暇中の友人に聞かせてあげたかった。こんなふうにあなたが帰ってくるのを心待ちにしている人だって必ずいるよ。

夫は賢い。誠実で真面目だ。イケメンだし(たぶん)学歴も年収も高い(たぶん)おそらく世にいうハイスペの部類に入るんだと思う(たぶん)
ときどき、こういう男性は女性を馬鹿にしたり、モラハラの傾向が強いといわれる。

夫は私を馬鹿にしたことは一度もない。モラハラって美味しいんですか?な世界だ。
夫だけじゃない。キョウもヨーグルも元彼も碁の先生も、だ。彼らは女性をとても尊重している。

それは男性と女性は同じだと思ってるからではない。
男と女は違う。その違いを理解しているからだと思う。

その違いを認め、敬意を示し、褒めることで、彼らは人を上手く動かすんだと思う。
他人の良い点を見つけるのが上手。そこを尊敬し感謝する。これはハイスペになるための条件だと思う。

夫と出会うまで、私はフェミニズムには男性と戦って男性を負かすイメージがあった。
女が男みたいに振舞うこと、みたいな誤った印象さえあった。
就職活動のとき、たまに出会う女性の面接官(面接官の9割近くは男性だった)が、みんなそんな感じだったからだ。
そうでもしなければ社会では男とやり合っていけないのかと、学生だった私はがっかりした。
不自由だった子供時代を振り返っても、私は自分が女であることが嬉しかったし、女であり続けたかった。男になんてなりたくない。

キョウの会社で、保育園に落ちてしまった女性社員がいた。
仕事を辞めたくないという彼女に、キョウは会社に畳部屋を作り、そこに子供の玩具を買いそろえ子供部屋を一つ作った。
そして彼女に「子供を連れて出社できないか」と打診した。
キョウと一緒に会社を興した女性が、旦那さんの転勤に伴い海外に行ってしまったときも、キョウは彼女がいつでも戻ってこられるようにと会社に彼女の席を残した。
「彼女の代わりは誰にも務まらないからね」と。

キョウに「長生きしなさいね」と言われたことがある。

「長生きしなさいね。今は過渡期で女性はいろんな役割を押しつけられて大変だと思う。でも、僕は女性がもっと生きやすくなる世の中は必ずくると思ってる」

いろんな役割を押しつけられている。
育児休暇をとるのは女性だし、子供を連れて出社するのもやっぱり女性だ。

「女であることに抑圧されてきたあなたのような女性は、そんな世の中を見るべきだ」

キョウの言うように、私、長生きしてそんな世の中を見てやろうと思います。