凛子

小説と映画、そして書くことが好きです。 昔のことをどんどん忘れているようなので、古今問…

凛子

小説と映画、そして書くことが好きです。 昔のことをどんどん忘れているようなので、古今問わず失いたくない大事な記憶を記していこうと思います。

マガジン

  • ヨーグル殿の13人

    昔、趣味で小説を書いていました。私が書くきっかけとなったある小説家のこと、彼から学んだこと、彼との昔と今を書いていきます。

最近の記事

彼と喧嘩(後)

父はとにかくお酒が好きな人だった。 呑まない日は一日もなかった。 ある晩、寝ていた私は父の声で目が覚める。今夜は会社の人も一緒らしい。 しばらくすると、母が部屋に入って来て挨拶しなさいと言う。 もう深夜。明日も学校だし、母に「寝てるから断ってほしい」と頼んだ。 「わかった」と母は部屋を出るものの、すぐに戻ってくる。 「ちょっとでいいから出てきて」と。 私、母を追い返す。母、また戻ってくる。 とうとう母が「起きなさい、出てきなさい」と泣きそうな声を出すので、私はしぶしぶ父た

    • 彼と喧嘩(前)

      キッカケは些細なことだった。 ヨーグルから、編集者さんからのメールの報告をよく受ける。 こんな依頼がきたけれどスケジュールはどう?など、仕事にかんする相談をいろいろされる。 私と相談して決めたあとは、彼がその旨を返信する。 先日「メールの返事は私がしようか?」と提案した。 〆切に追われる中、メールする時間がもったいないように感じたのだ。業務連絡だから短いメールとはいえ、ほぼ毎日のこと。実は結構な時間をとられているんじゃないだろうか。 だから、これからは私が編集者に返信する

      • ある小説家の秘書日記(4)

        映画「岸辺露伴、ルーヴルへ行く」を鑑賞。 このシリーズが好きだ。 ミステリというより、奇妙な物語として楽しんでいる。 毎週みると頭が混乱しそうなので、一年に数回、たまに見るのがいい。 露伴の担当編集者、泉ちゃんが好きだ。 ホラーテイストの強い、不気味なキャラがひしめき合う中で、唯一安心できるキャラであり、無駄に明るくキャッキャしてるが実はとても頭がよくて有能ってところが素敵。 おこがましくも、顔は全く似てないが、キャラ的には私と似てるんじゃないかと思ってる。 特に露伴と泉ち

        • 私は女性らしくありたい

          「私の通う女子大の子はK大の男の子と付き合うの。あなたの大学の男の子とは付き合わない」 大学に入って間もない頃、某女子大に通う子から突然、そんなことを言われた。私は別に誰かを紹介するとは言ってない。本当に突然のことだった。 彼女はK大のサークルに参加し、会うたびにサークルの話をしてくれたが、彼女の話に私はだんだんと違和感を抱く。 彼女が好きな人の話を全くせず、ひたすら男性からの行動を待っていたからだ。 積極的なのか消極的なのか、いまいちよくわからない子だなと思いながら私は

        彼と喧嘩(後)

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        • ヨーグル殿の13人
          12本

        記事

          最初で最後の占い

          一度だけ占いに行ったことがある。 結婚前、勤めていたときのこと。 元彼と碁の先生とのごたごたで二人と別れ、その数か月後に付き合った勤務医とも別れ、その後に付き合った開業医の男性と結婚の話を白紙に戻し別れ「疲れた。もう一人でいたい」と思っていたときのことだ。 一人でいるほうが私はいいのではないか。そんな話を先輩にしたら、突然「占いに行かない?めっちゃ当たるって評判の占い師、知ってんねん」と誘われた。 いつもの私なら「興味ないです」とお断りするのだが、このときは「一度やって

          最初で最後の占い

          年齢重ねて、私もやっと追いついた?

          私は人の本棚を眺めるのが好きなのだが、ヨーグルの本棚はその中でも群を抜いて好きだ。 例えば落語の本がいっぱいある。 落語は聴くもので読むものじゃないと思っていたので驚いた。 話していると彼がオチのある話が好きなのがわかる。だから話にオチがないと気が済まない(と言われる)大阪育ちの私と合うのかもしれない。 また彼の書いているものを読んでいると、落語の影響を受けているのもわかる。オチが洒脱でキレイに決まってる。その着地点が読者の予想を大きく裏切るところが彼の持ち味だろう。 シ

          年齢重ねて、私もやっと追いついた?

          女の覚悟はすごいぞ

          前回の記事の続きです。 以前、夫は多忙を極めていた。 同僚の女性たちの育児休暇&時短勤務が重なったからだ。 夫のチームは女性が多い。 もともとは男性のほうが多かったのだが、仕事が大変なので辞める人もいて(環境というより、頭脳的についていけなくなるらしい)結局、残ったメンバーを数えたら女性のほうが多くなっていたらしい。 女性が辞めない理由を夫はこう話している。 「男はここを辞めても、また同じような条件で働けるって思うんだろうけど、女性はここを辞めたらもうこんな好条件(特に

          女の覚悟はすごいぞ

          お母さんのような生き方はしたくない

          朝ドラ「虎に翼」が面白くて、毎朝の楽しみになっている。 来週から、主人公の寅子は法律を学び始めるのだが、学友もいろんな意味で濃そう(笑) ますます面白くなりそうで期待が膨らむ。 さて、私がこれほどまでに心動かされたのは、きっと私が寅子と同じく母をみて女の生き方に首をかしげたことがあるからだろう。 今朝の放送で、寅子とお母さんとのやりとりに、思わず「わかる。わかるけど、トラちゃん(主人公をすでに「ちゃん」づけで呼ぶほどのハマりよう)それは言っちゃいけないわ」と、くぅぅぅぅ~

          お母さんのような生き方はしたくない

          記憶力とフック

          キョウが面白いことを話していた。 「僕は記憶力に自信があるんだけど、そう言うと『覚える力』があるって思われがちなんだよね。実際は『思い出す力』がある、なんだけど」 どっかで似たようなことを聞いたなと思って記憶をたどったら、夫が娘にアドバイスしていたことを思い出した。 娘が歴史の勉強をしていたときのこと。 「あー、こんなん全部、覚えられへん」と頭を抱える娘に、夫が「記憶はフックをいっぱいつけるといいよ」と話していたのだ。 「フックがたくさんあると、記憶の海から釣りあげや

          記憶力とフック

          あなたのそういうところは好きなんだけど

          ヨーグルはとても質素な人だ。 そして真面目で素直だ。一緒にいてつくづく思うのだが、とても性格がいい。ある意味、どういう育ち方をしたんだろう。 だから安心して一緒にいられる。意地の悪い言動が一度もないので、嫌な気持ちにさせられたことはない。 私をすごく大切にしてくれるし、変な言い方すると女性をお姫様扱いする人だ。私にだけそうなのか、女性みんなにそうなのかはわからないけど。 だから、ときどき他の男性に対して「こいつ、性格悪っ」と驚くことがあるが、おそらく彼らは性格が悪いわけで

          あなたのそういうところは好きなんだけど

          私とあなただけの世界ではないこと

          凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」を読んだ。 凪良さんの小説を初めて読んだのは「流浪に月」。 今までに読んだ恋愛小説とは一風変わった展開に興味を覚え、続いて「滅びの前のシャングリラ」を読んで、面白い作家を見つけちゃったと嬉しくなった。 文体が軽くて、ライトノベルみたいだなと最初は慣れなかったが、今ではそこに優しさを覚えるし、透明感のある文章は作品の重く痛い内容をこのうえなく切なく美しいものに昇華させる役割を果たしていると思う。 「わたしは愛する男のために人生を誤りたい」とい

          私とあなただけの世界ではないこと

          不安な夜のあなたへ

          不安な夜を過ごしている10歳の私へ。 お父さん、帰ってきたね。今夜もうるさいね。 お隣さんの犬がめちゃくちゃ吠えてる。お父さん、犬に怒鳴ってるし。 明日、隣の子がきっと何か言ってくるね。 怖いね。学校行きたくないよね。 でも、あなたは真面目な子だから行くんでしょ。 そして何を言われても我慢する。何も言い返さず、ただ勉強する。 お母さんはよく「強い子になりなさい」って言うけど、あなたは誰よりも強いよ。そしてあなたの周囲は弱い人ばかりだ。 あなた、今、一人で生きて行こうっ

          不安な夜のあなたへ

          「忙しい」

          ヨーグルのことをたくさん書いてきたので、それらをまとめてマガジンを作った。 タイトルは「ヨーグル殿の13人」 これは彼の担当編集者さんの数が、たまたま大河ドラマ「鎌倉殿の13人」とかぶったので、これ幸いとタイトルにしたのだ。 大手出版社になると部門別(文庫担当とか海外担当とか)に担当さんがいるので、実際は13人以上いるのだが一社に一人、メイン担当さんのみを数えて13人にした。 さて、現在、ゲラ直し真っ最中のヨーグル。 彼にホワイトデーを兼ねて食事に行こうと誘われた。 「

          「忙しい」

          仏語はお若いうちに

          高校時代、世界史の先生に「大学ではドイツ語かフランス語を勉強しとくといいよ。あれは若いうちにやっておかないと頭に入らんから」と言われた。 その時の私はさして興味なく聞いていた。 バカバカ、私の馬鹿。 その言葉をすっかり忘れて、大学では中国語を選択した私。 当時の中国は大躍進の最中。オリンピックも控えているし、勉強しておくと何かと便利だろ、と考えたのだ。 でも、今は後悔している。 私はフランス語を勉強するべきだった。ドイツ語でもいい。欧州の言葉に触れておくべきだったのだ。

          仏語はお若いうちに

          普通の男の子でいてくれてありがとう

          初めて付き合った彼を思い出すと、私の頭の中に「ひらがな表」が浮かぶ。 小学校の卒業アルバムに収められていた生徒たちの作文で、お題は確か「宝物」だったか「大切なもの」だったか。 みんな友達のことや、学校行事の思い出などを書いているのに、彼はひらがな表を書いていた。 あいうえお   かきくけこ     さしすせそ…… 最後は「わ を ん」で終わっている。 意味がわからなかった。 彼にきいたら「僕の宝物は言葉ってこと」と言われた。 面白い人だなと思った。 私は自分の両親を

          普通の男の子でいてくれてありがとう

          結婚指輪してますか?

          夫は結婚指輪を長らくしていなかった。 左利きなので邪魔になるし、指輪が傷つきそうだったからだ。 ところが、ある日、仕事から帰ってきた夫が「結婚指輪をする」と言い出した。 事情をきくと、どうやら独身と勘違いされたらしい。 確かに夫はパッと見た感じ、独身に見えるかもしれない。 友人たちは夫をみると「すごく若く見えるねんけど?」と驚くし、ある人は私たち夫婦をみて「同い年ですか?」ときいてきた(殴)あの言い方から察するに、おそらくかなり年下に見えたのだと思う。ショック。一生忘れん

          結婚指輪してますか?