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乃木坂46新シングル「おひとりさま天国」から考える少子化問題

ミュージックビデオの公開!

 8月23日に発売される乃木坂46の33rdシングル「おひとりさま天国」のミュージックビデオが8月10日にYouTubeにて公開された。センターを務めるのは5期生・井上和であり、軽快なメロディーと各人の個性が詰まった演出に多くのファンからの好評を得た。



 そもそもこの「おひとりさま天国」は乃木坂46真夏の全国ツアー沖縄公演で初お披露目し、シングルタイトルの奇抜さと歌詞のクセの強さが議論を呼んでいた。しかしメディア初公開で流れた楽曲のノリの良さとMVの細部へのこだわりが一連の不安感を打ち消した。もちろん楽曲それ自体への評論は他で十分になされると思うし、芸術や音楽に秀でない私が口を挟んでも「みんな可愛い!」で終わる。強いて評論するなら歌詞や表題の「おひとりさま天国」という言葉が与える意味への考察であろう。



 この曲を歌う乃木坂46の当人にとっては、一々このタイトルの持つ意味などを深く批評されたところで興味なしと思われるのは必至だが、こうしたことを半分真面目に、半分冗談で書き上げられるのは私しかいないと思うので、政治や社会に興味のある皆さんと共に検討したいと思う。



独身を肯定する今どきの価値観

 タイトルを見れば一目瞭然だが、おひとりさま天国とは独身という生き方を肯定し、恋愛によって生じる様々なしがらみから解放される(女の)生き方を認めようと私は理解した。歌詞はこちらからどうぞ。

 かつての日本、特に1980年代は「クリスマスケーキ理論」というものがあり、特に女性は25歳までに結婚していなければ婚期を逃した売れ残り女と認定されていた。令和の現在においてこれは失礼すぎる揶揄であるが、高校や短大を卒業し腰掛けOLとしてそこそこ働いた後、職場や友人知人の紹介で出会った男性と結婚という当時の女性の王道的な生き方に沿った考えではある。



 いい年して結婚をしない男女は異常、男で所帯を持たない奴は出世も評価もされないなんて昔話を聞いたりもする。それらを思うと「おひとりさま天国」とはまさに令和の価値観、今の若者の生き方の多様性を映し出した言葉だと言える。しかしながら、個人としての最適解は国家や民族にとっての誤りになることだってある。若い結婚適齢期の男女が独身貴族を謳歌することは少子化の日本にとってなかなか厄介な状況である。



誰も止められないおひとりさま天国

 今では結婚適齢期の未婚の息子や娘に「いい人はいないの?」「早く孫が見たい」と親が願望を吐露すれども、我が子のために気合いの入ったお見合いをお膳立てする親はまずいない。そもそもそのようにボヤく両親世代からすでにお見合い文化は廃れており、自由恋愛を前提とした婚姻が定着していたからだ。その論評は以下の記事を参照されたい。

 まだ皆婚社会だった親世代が我が子のおひとりさま天国を解消するノウハウはなく、職場で「早く結婚しろ」と言おうものなら即セクハラ認定であり、テレビや新聞なども「結婚は本人の自由」とある種の政治的正しさを貫いている。



 しかしそうした「自由」や「個性」を容認してきた結果が日本の深刻な「少子化」である。出生数と婚姻数には強い相関関係があり、おひとりさまを減らすことが少子化対策の一丁目一番地である。したがって国難とも言うべき少子化においておひとりさまは論外であり、天国という状況はいち早く地獄にしなければならないのである。



「おひとりさま」より「おふたりさま」を推奨してほしい(これはガチ)

 おひとりさま=独身であることにネガティブな評価を口にすることがたとえ我が子であっても許されない社会をこのまま放置すれば、日本という共同体は早晩崩壊するだろう。社会を維持させるためには人が必要であり、体がよく動く若い人が一定数存在することが何よりも不可欠である。その若者(子供)を生み出す最大の要素である結婚を推奨せず、現状を放置すれば確実に社会は機能不全に陥る。それは社会保障に限らず、安全保障、科学技術、食料生産、財政、インフラ維持など多岐にわたる。



 そんな確実にある近い未来の悲劇を分かっていながら「結婚は本人の自由だしね~」とお茶を濁しながら、少子化対策を子育て支援に話をすり替えごまかしごまかしやってきた30年の結果が、昨年の「出生数80万人割れ」だということを自覚すべきである。おひとりさま天国で笑ってるオタクは四半世紀から半世紀後に「おひとりさま地獄」を見るのは間違いないだろう。

このまま嫌われてガチ恋オタク極めていこうな!

 別に秋元康は(自分がプロデュースしたアイドルと)結婚してるし、子供もいる。この人が信念を込めておひとりさまを推奨してるわけでもなく、時勢を読み取ってAIのごとく書き出した詞である。あの歳でトレンドや新しい価値観に敏感に反応する鋭さはある意味スゴイが、私が独裁者なら敏腕プロデューサーに何か「おふたりさま」になることを推奨する歌でもドラマでも企画してプロパガンダ作品を世に広めただろう。



「おひとりさま」にならないアイドルと「おひとりさま」になるオタクというか若者

 おひとりさま天国で浮かれるのは歌だけに留め国家・民族の維持や発展のためには有害な価値観ということだけは共有してくれれば幸いだと思う。そして皮肉にもこれを歌う乃木坂ちゃんたちの多くはおひとりさまにはならない。我々が限界独身オタクを極めている間に十中八九結婚し、子供を産み、家庭を築くことだろう。よく考えてほしい。美人で、若くて、経済力があり、中には家柄がよく、頭のいいメンバーもおり、社会経験豊富な集団が乃木坂46だ。そんな女性を社会や男性がおひとりさまにさせるわけがない。



 一方でアイドルオタクは全員とは言わないが、恐らくおひとりさまとして生き、おひとりさまとして死んでいく確率が高い。そもそもオタクかどうか関係なく、今の50歳前後の男性の生涯未婚率でさえ約28%である。今よりも結婚しろ圧が高く、ある種の人生のレールが強い規範として存在した時代を生きた男性でさえこの数字なのだから、現在、10代から30代前半の乃木坂オタクが生涯未婚率の基準になる50歳を迎える2040年代には男性の生涯未婚率は40%超になると強く主張したい。

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 もうそんな社会になればおひとりさまは天国でもなんでもなく日常となり地獄となる。社会は回らないし、子供を産み育てられたとしても未婚や子無しがデフォルトの社会においてチルドレンファーストで人々から祝福なんてされない。間違いなく子育て支援も無駄と批判され廃止、縮小することになるだろう。そんな未来を避けるためにはなぜ若者が「おひとりさま」にならざるを得ないか原因をはっきりさせ、その原因に直接効果のある政策を国家として打ち出さなければならない。


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