『不眠症のドラゴン氏と放逐された貧弱術士』第三話
酒場から、歩いて二十分ほど。街の「治安が悪くなるか、そうでないか」の境界線ギリギリあたりに位置するダントの家は、少し外見がみすぼらしかった。メリーとて、「導師たるもの、それらしい家に住まうべき」などとは思っていないし、むしろ、恐らく世俗のことに無頓着であろう彼のことを思うと、ふさわしいかも? と感じた。
「ちょっと散らかってるけどね」
「う、うわあ……!」
玄関をくぐって、メリーが最初に上げたのは、感嘆の声だった。実家の、自分の部屋ほどの広さの中は、四方が本棚だった。ぎっ