見出し画像

「自動運転」言葉の罠

こんにちは。自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

今回は「自動運転」の話です。

というのも、煽り運転(妨害運転)、運送業のドライバー不足、タクシードライバー不足、電動キックボード、ライドシェア、など、、、乗り物の話題が尽きません。

その中でも以前からさまざまな意見があるのは、「自動運転」の話題です。

今回は、「自動運転」という言葉について深掘りしていきます。

※あくまでも言葉の罠についてですので、システム云々はまた別の記事でまとめます。


「自動運転」と聞いて・・・

日産自動車

まず、「自動運転」と聞くと、どのような車をイメージしますか?

この答えは、人それぞれ違うのではないでしょうか。

ある人は、「運転席に座っているものの、ハンドルから手を離したり、ペダルから足を離したりできる車」と答えるかもしれません。

また、別の人は「座ってるだけで目的地まで連れて行ってくれる車」と答えることもあるでしょう。

このように、「自動運転」に対するイメージや想像は、人それぞれ異なるのです。

「自動運転車」は販売されているのか?

では、多くの人が思い描く、「自動でハンドル操作やペダル操作などをしてくれる車」は、販売されているのでしょうか。

答えは「NO」です。

残念ながら、2023年時点で日本国内に自動で運転してくれる車は販売されていません。

このようなことを言うと「ホンダのレジェンドは自動運転車だろ?!」と言われるかもしれません。

しかし、ホンダ レジェンドの自動運転はレベル3、つまり、条件付きの自動運転機能なのです。

そのため、「座っていれば目的地に到着する」という、誰もが思い描くような理想的な自動運転車ではないのです。

技術的に完全な自動運転はできるかもしれないが・・・

自動運転の開発は、自動車メーカー各社をはじめ、IT企業なども参入して進められています。

そのため、自動車メーカーの車両開発技術、IT企業の通信技術や高性能なスキャン技術などを組み合わせれば、完全な自動運転は実現可能でしょう。

また、膨大なデータを活用して危険を予測した運転をすることもできる可能性が高いです。

しかし、これらはあくまでも理想論に過ぎません。

膨大なデータだけで車を造ると、おそらく事故を起こすでしょう。

なぜなら、これまでに集められた膨大なデータは、過去のものだからです。

シミュレーションも同様に、過去のデータや計算式を元に起こりうることを算出しているだけです。

つまり、過去のデータだけを頼って何かを開発というのは、時間効率を高めることではあるものの、これまでのデータにはない不具合やトラブルなどを予測したりシミュレーションしたりできないことを意味します。

そのため、実走行で得られる実験データや人の感覚なども含めた開発をしなければ、安全で安心な自動運転車にはならないと言えるでしょう。

メディアなどで言われる自動運転は自動運転ではない

日産自動車

話は少し逸れてしまいましたが、これまでお話してきたとおり、多くの人が思い描く理想的な自動運転車は今のところ(2023年時点)ありません。

つまり、ニュースやネット記事などのメディアでよく使われている「自動運転」は、自動で車が走ってくれる乗り物ではないのです。

言い換えれば、誇張した表現ということになります。

国土交通省の表現から変えなければメディアは変わらない!

実はメディアなどで言われている「自動運転」は、国土交通省が公表している「自動運転のレベル分け」に基づいているケースがほとんどです。

国土交通省が公表している「自動運転のレベル分け」は次のとおりです。

国土交通省

レベル1:運転支援
レベル2:特定条件下での自動運転機能(レベル1の組み合わせまたは高機能化)
レベル3:条件付自動運転
レベル4:特定条件下における完全自動運転
レベル5:完全自動運転

これらのレベル分けのうち、ドライバーが必要となるのは「レベル3」までです。

つまり…

・「自動運転」という言葉を使いながらドライバーは必須
・何かあったときにはドライバーが適切な対応をしなければならない

このようなことからも、レベル3までの車を「自動運転の車」と呼んでしまうと、ユーザーが勘違いする可能性が高いといえるでしょう。
なぜなら、ユーザーは「車が自動で運転してくれる車が自動運転車」と思い込んでいるからです。

ちなみに、国土交通省が公表しているレベル4の車は、安全を確保しつつ自動で走行する車と定義しています。
ただし、自動運行が困難な状況(故障や天候の急変など)が生じた場合、安全に停止するという条件が付きです。
運転者の有無については、「運転者に引き継ぐことなく自動運行装置が安全停止するため運転者を必要としない」としています。

結局のところ、レベル4でも「乗っていれば確実に目的地に着ける」という保証がないのです。

適切な言葉を使って誤解を与えないことが重要

では、どのような言葉を使えば、誤解を与えないのでしょうか。
ここからは、私が考える「自動運転実現までのレベル分け」の表現事例を紹介します。

【自動運転実現までのレベル分け】
レベル0:手動運転(運転者が全ての操作を行う)
レベル1:運転補助機能(部分的に運転者の操作を補う)
レベル2:運転支援機能(ドライバーの運転を支援する)
レベル3:高度な運転支援機能(ドライバーの運転を積極的にサポートする)
レベル4:半自動運転(システムが運転のほとんどを代行しドライバーは緊急時のみ対応する。なお、不測の事態に備えて自動運転と手動運転の切換スイッチを設置する)
レベル5:自動運転(システムが全ての運転操作を行う。ただし、システムエラー等に備えて自動運転と手動運転の切換スイッチを設置する)

このくらい慎重にならなければ、安全な自動運転を実現するのは難しいでしょう。

なぜなら、完全自動運転車に使われるデータやスキャン技術を使った回避操作などは、過去のビッグデータを元にした運転操作にすぎないからです。

なぜ慎重になるのか?

人はビッグデータにない予測不能な行動をすることがあります。

良くも悪くも、過去に事例のない予測不能な動きや事故などがあったからこそ、現在の安全があるといっても過言ではありません。

自動運転が実現すれば、自動運転に適応した人、または、自動運転の特性を理解した人が思いもよらぬ行動をする可能性が大いにあります。

人は、適応能力が高い生き物です。
このことを忘れたモノ作りをしている限り、トラブルや事故はなくならないでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?