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運転支援システムの限界

こんにちは。自動車ライター/インストラクター/ジャーナリスト/ドラマーの齊藤優太です。

唐突ですが、運転支援システムを過信すると事故を起こします。

ということで今回は、運転支援システムの限界、運転支援システムは何を使って作動しているのか、運転支援システム/自動運転を使ったことで起きた事故などを考察します。


運転支援システムの限界

出典:トヨタ

運転支援システムには、限界があります。

このことは、おそらく多くの人が知っているものの、システム利用時に抜け落ちてしまうことです。

また、各メーカーの安全機能紹介ページや広告(CM)では、「機能には限界があります」とサラッと注書きがされていたりアナウンスされたりします。

では、各メーカーが言っているシステムの限界とは、どのような条件なのでしょうか?

それを知るために、各メーカーの運転支援システムの注意書きを見てみましょう。

トヨタ

周囲の状況・道路の状態・運転者の状態によっては作動しない、または作動を中断することがあります。また、常に同じ性能を発揮できるものではありません。システムを過信せず安全運転に努めてください。

認識性能・制御性能には限界があるため、システム作動中であっても運転者自身の操作で安全を確保する必要があります。運転者は自らの責任で周囲の状況を把握し、いつでも運転操作できるよう備えてください。

運転者が認識している周囲の状況とシステムが検知している状況が異なる場合があります。従って注意義務・危険性の判断・安全の確保は運転者が行う必要があります。システムに頼ったり安全を委ねる運転をしたりすると、思わぬ事故につながり、重大な傷害におよぶか、最悪の場合死亡につながるおそれがあります。

工事などで実際の道路状況と地図情報が異なる場合、正常に作動しないおそれがあります。システムを過信せず、常に周囲の状況を把握した上で、運転者の責任においてシステムを使用してください。

例えば次のようなものの検出には限界があります。必要に応じて自らハンドル・アクセル・ブレーキを操作してください(自車の前方に割り込みがあったとき、他車が接近してきたとき、工事区間、落下物等)

あくまで運転を支援する機能です。システムを過信せず、必ずドライバーが責任を持って周囲の状況を把握し、安全運転を心がけてください。

ご使用の前には、あらかじめ取扱説明書で各システムの特徴・操作方法を必ずご確認ください。

お客様ご自身でプリクラッシュセーフティの作動テストを行わないでください。対象や状況によってはシステムが正常に作動せず、思わぬ事故につながるおそれがあります。

参考:https://toyota.jp/alphard/ft/safety/

日産

安全装備はドライバーの安全運転を補助するものであり、あらゆる状況での衝突を回避するものではありません。

システムの能力には限界があり、天候や路面状況などによっては作動しないことがありますので、システムだけに頼った運転はせず、天候や路面状況に合わせた運転、周囲の車両・歩行者の確認、十分な車間距離の確保など、安全運転を心がけてください。

先進技術・機能の設定条件は、車種・グレードにより異なります。詳しくはカーライフアドバイザーまでお問い合わせいただくか、取扱説明書をご覧ください。

プロパイロット 2.0は、自動で運転する装置ではありません。ドライバーは周囲の状況や車両の動作に常に注意し、確実にハンドル、ブレーキ、アクセルを操作し、安全な運転を行う責任があります。

また、プロパイロット 2.0は、側方にいる車両には反応しません。合流部、カーブを走行するとき、また大型車両が隣の車線を走行しているときは特に周辺車両に注意し、必要に応じてハンドル操作をしてください。ドライバーが常に前方に注意して、道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状況にある限りにおいて、同一車線内でハンズオフが可能となる運転支援システムです。対面通行路・トンネル内、カーブ路、料金所・合流地点およびその手前などではハンズオフできません。ハンズオフができない区間に入るときにはシステムが事前にドライバーに通知するので、ドライバーはハンドル操作をする必要があります。

プロパイロットは高速道路や自動車専用道路で使用してください。プロパイロットはドライバーの運転操作を支援するためのシステムであり、自動運転システムではありません。安全運転をおこなう責任はドライバーにあります。わき見運転やぼんやり運転などの前方不注意および雨・霧などの視界不良による危険を回避するものではありません。先行車との車間距離、車線内の位置、周囲の状況に応じてアクセル、ブレーキ、ハンドルを操作するなどして、常に安全運転を心がけてください。

システムの能力には限界がありますので、システムだけに頼った運転はせず、常に安全運転を心がけてください

参考:https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/serena/performance_safety/360_safety_assist_font.html#propilot20

ホンダ

Honda SENSINGは、ドライバーの運転支援機能のため、各機能の能力(認識能力・制御能力)には限界があります。各機能の能力を過信せず、つねに周囲の状況に気をつけ、安全運転をお願いします。

車両をご使用になる前に必ず取扱説明書をお読みください。各システムは、いずれも道路状況、天候状況、車両状態等によっては、作動しない場合や十分に性能を発揮できない場合があります。詳細は各機能ページをご参照ください。

参考:https://www.honda.co.jp/hondasensing/

スバル

システムだけに頼った運転は、絶対に行わないでください。

本システムは、運転者の判断を補助し、事故被害や運転負荷の軽減を目的としています。わき見運転やぼんやり運転などドライバーの前方不注意を防止したり、悪天候時の視界不良下での運転を支援する装置ではありません。

また、あらゆる状況での衝突を回避するものではありません。運転時は常に先行車両との車間距離や、周囲の状況、運転環境に注意して必要に応じてブレーキペダルを踏むなど車間距離を保ち、安全運転を心掛けてください。

アイサイトの認識性能・制御性能には限界があります。ドライバーの運転操作、急カーブ、急勾配、雨等の道路状況、および天候によっては、システムが作動しない、または作動が遅れる場合があります。

雪、濃霧、砂嵐の場合や、トンネル内、夜間、日射しの状況によってはステレオカメラ、ソナーセンサーが障害物などを正常に認識できず、適切に作動しない場合があります。

参考:https://www.subaru.jp/brand/technology/technology/safety_preventive.html

スズキ

運転支援を目的としています。検知性能・制御性能には限界があります。これらの機能に頼った運転はせず、常に安全運転を心がけてください。

状況によっては正常に作動しない場合があります。対象物、天候状況、道路状況などの条件によっては、衝突を回避または被害を軽減できない場合があります。

ハンドル操作やアクセル操作による回避行動を行なっているときは、作動しない場合があります。

ご注意いただきたい項目がありますので、必ず取扱説明書をお読みください。

参考:https://www.suzuki.co.jp/car/safety_system/

BMW

運転者には、いかなる場合でも安全運転を行う義務があります。

本機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であり、運転者に代わって車が自律的に安全運転を行う、完全な自動運転ではありません。

システムの認識性能には限界があるため、路面状況や気象条件等によってはシステムが作動しない場合や、不適正にまたは理由なく作動する可能性があります。そのため、安全確認や運転操作をシステムに委ねる運転は、重大な事故につながる危険があります。

常にご自身の責任で交通状況に注意し安全運転を心がけてください。

※完全な自動運転はできません。システムは状況が作動条件を満たさなくなった場合、安全のため直ちに作動を中断します。また、ドライバーは前方に絶えず注意を払うとともに、緊急時などシステムが要求した場合、直ちにハンドルを確実に操作することが可能な状態を保つ必要があります。

参考:https://www.bmw.co.jp/ja/topics/brand-and-technology/technology/visionary_safety/hoo.html

ボルボ

ボルボの先進安全・運転支援機能はドライバー自身による安全運転を前提としたシステムであり、注意散漫な運転、無謀な運転、その他の危険もしくは違法な運転を補助または奨励するものではありません。安全運転の最終的な責任は、いかなる状況でもドライバーにあります。

参考:https://www.volvocars.com/jp/v/safety/features

テスラ

オートパイロットの高度な安全性と便利な機能は、車の運転で最も負担の掛かる部分をアシストするよう設計されています。オートパイロットは新機能を導入し、既存の機能を改善しながら、お客様のテスラの安全性と性能を向上し続けます。

オートパイロットは、同じ車線内でハンドル操作、加速、そしてブレーキを自動的に行います。

現在の機能はドライバー自身が車を監視する必要や責任があり、完全自動運転ではありません。

参考:https://www.tesla.com/jp/autopilot

共通点

ここまで、各自動車メーカーの運転支援システムの注意書きの一部を羅列しました。

いろいろと細かく書かれていますが言いたいことはほぼ同じです。

運転支援システムの注意書きからわかる主な共通点は以下の通りとなります。

・運転をサポートする支援機能であること
・運転者に責任がある
・ドライバーは周囲の状況を観察し状況に応じて自ら操作する必要がある
・自動運転ではない
など
 

メーカーの注意書きからも自動運転ではないこと、運転者(ドライバー)に責任があること、運転支援システムは補助機能であることなどがわかります。

運転支援システムの機能を支える機器と問題点

出典:トヨタ

運転支援システムは、機能が増えたり、サポートの範囲が広がったりするなど、日々進化しています。

これらの運転支援機能は、カメラやレーダーなどを使い、周囲の状況をスキャンすることで実現しています。

つまり、カメラやレーダーなど、周囲の状況を監視・検出する機器そのものが何らかの理由で隠れてしまうと機能しなくなってしまうのです。

また、天候や気温など環境が変化することで検知機器に水滴や霜が付着するとシステムを作動しなくなることもあります。

さらに、光の加減や反射などにより誤認・誤作動することも珍しくありません。

このようなスキャン技術は日々進化し、精度が向上しているため、エラーや誤認などが少しずつ減ってきていますが、人間の目に比べるとまだまだというのが現実です。

支援機能は差別化できるポイントではあるが諸刃の剣でもある

運転支援システムは、メーカー・車種、システムのバージョンごとに、監視機能・検知機能の性能や精度、作動環境・条件、機能停止の条件、機能の範囲などが異なります。

そのため、安全装備や機能は、他のメーカー・他のモデルと差別化しやすいポイントといえるでしょう。

しかし、この安全機能の差別化は、諸刃の剣でもあります。

乗員の安全や命を第一に考えるのであれば、規格は統一するべきでしょう。

運転支援システムでも、衝突試験のようなテストを実施し、一定の基準を満たしたシステムでなければ、「運転支援システム」と表記できないようにしたほうがユーザーも機能や性能を理解しやすいといえます。

また、あまりにも検知性能が低い場合や誤認・誤作動・不具合が頻発する場合には、搭載の見送りや販売を中止した方がよいでしょう。

なぜなら、車のユーザーは「最新の安全装備・運転支援システム」などと聞くと、システムへの依存度が高まる可能性があるからです。

ここで言っていることはシビアなことですが、規格を統一し、一定の基準を満たしたシステムにしない限り、システム過信による事故やトラブルが減ることはないでしょう。

運転支援システムの過信による事故事例

出典:トヨタ

運転支援システムを過信したことによる事故は、日本国内のみならず世界各国で発生しています。

ここでは、システムの過信・システムに頼った結果、発生してしまった事故事例などを紹介します。

日本国内の運転支援システム過信による事故

日本国内で発生した運転支援システム過信による事故事例や警察等からの注意を紹介します。

【高速道路“規制箇所”での事故増加 「運転支援機能」の“過信”で… - 日テレNEWS NNN】

【警視庁:運転支援機能が搭載されている車をご利用の皆様へ】

【国土交通省:「運転支援システム」を過信・誤解しないでください!〜運転支援システムの機能の限界と過信の危険性について〜】

海外の運転支援システム過信による事故

ここからは、日本以外で発生した運転支援システム過信による事故事例を紹介します。

【米GM傘下のクルーズ、歩行者事故受け自動運転車950台リコール】

【テスラ、死亡事故前に自動運転のステアリング誤作動認識=原告】

【自動運転車で歩行者死亡事故 ウーバー車両 米アリゾナ州】

運転支援システムとの付き合い方

出典:トヨタ

事故の事例からもわかることは、「運転支援システムの過信による事故や自動運転中の事故は、人よりシステムの方が正しい/絶対大丈夫という先入観や思い込みにより、回避できなかった」ことも事故原因のひとつと言えるでしょう。

また、無人運転中の場合でも、手放しで走らせておくのではなく、何らかの形で監視して、危険が迫っている場合には何らかの形で停止させるなどの措置がされていれば死亡事故にならなかったでしょう。

以前どこかの記事で記載したように、システムや解析は過去のデータがあるからこそ成り立っていることが大半であるため、システムを過信するのは非常に危険です。

さまざまな事故事例やシステムが作り上げられる過程からも、運転支援システムは、あくまでもドライバーのサポート役であることを忘れてはなりません。

また、日本で普及している運転支援システムのほとんどは、運転の主体(責任)がドライバーとなる「レベル2」です。そのため、システム頼りの運転はNGと断言してもよいでしょう。

広告(CM)でみる運転ができる未来はまだ先

テレビCMや広告動画などでは、ハンズフリーでの走行を全面に打ち出しているものもあります。

しかし、これらの広告は先進性をアピールしているだけのものです。映像の中で車が自動で止まったり手を離したりしていると、先進的で最新の安全装備が備わっているように見えます。ただ、これらはあくまでも機能の一部で、好条件が重なったときの作動例です。言葉を選ばずに言えば、ユーザーに誤解を与えかねないといえます。

また、国土交通省が公表しているレベル分けでもレベル2では、ドライバーが監視することを前提としています。

さらに付け加えるのであれば、大前提として完璧ではないシステムの乗り物に乗っている最中に、目線を前方の交通状況から逸らしたり、手や足を離したりして運転すると、緊急時の対応が遅れる可能性が非常に高いです。

このようなことから、広告(CM)やプロモーション映像、評論家のテストドライブやレビューなどを鵜呑みにしないほうがよいでしょう。

運転支援システムは運転のサポート機能!過信するのはまだ早い

出典:トヨタ

繰り返しになりますが、運転支援システムは基本的に運転のサポートをする補助機能です。

そのため、交通状況の把握を怠ったり、手を離して別のことをしたり、ペダルから足を離してくつろいだりするのはまだしないほうがよいでしょう。

システムや交通インフラが完成し、完全自動運転社会が実現すれば、システムに頼ることができるかもしれません。しかし、手動運転と運転支援システムと半自動運転が混在する現段階では、システムの過信は禁物と言えるでしょう。

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