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移植後のサイトメガロウイルス

サイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)に感染したことがある人は、免疫低下により再活性化することがあると以前お話しました。

今回は同種造血幹細胞移植後のCMVについて説明します。

感染と感染症

まずCMVが再活性化しても症状が全くない人、熱があるけど特にどの臓器も悪くなってない人、臓器でウイルスが増えている人(肺なら肺炎、腸なら腸炎、目なら網膜炎)など様々です。

再活性化しているけど特にどの臓器が悪いわけではない場合をCMV感染、このウイルスのせいで臓器が悪くなっている場合をCMV感染症と呼びます。

感染の””がついているかどうかで分けていますので、分かりにくいですが、どちらの話をしているのか確認しながら読み進めてください。

感染症となっているかは、症状から疑い、確定するには詳しい検査が必要です。

どこも悪くなくて血液検査をしたら「CMVが出ている」と言われた。これはCMV感染の可能性が高いです。

移植後のCMV再活性化

移植後は生着してからCMVが血液中で増えてきていないかを週一回ほど確認する戦略を取られることが多いかと思います。

ですので、症状が何もなくてもある日ウイルスが増えてきたよと言われることがあります。

この検査は当日には結果は出ませんので、外来であった場合数日後に連絡が来て、伝えられることがあります。

中にはこれまでCVMに感染したことがない方もいます。移植を受ける患者さんも造血幹細胞を提供するドナーさんも感染したことが無い場合は、CMVが再活性化することはありません。

治療

さて症状も何もないCMV感染なのに、血液中でCMVが増えていたら治療をしないといけないのでしょうか。

これはその人の免疫状態を考えて、またウイルス量を参考にして、治療すべきか考えます。CMVを見つけたらすべからくやっつけにいくというものではありません。

放っておくとCMV感染症に発展してしまう可能性が高いときは、先制的に治療を行います。

どういう造血幹細胞を行ったか、移植から時間が経っているか、GVHDの治療で免疫抑制を強く効かせているかなどから、CMV感染に対して治療を開始するか担当医が判断してくれます。

CMV感染症であった場合は、治療はすべきです。ひどくなると致命的となることがあります。その臓器で起きている問題を解決するためには抗ウイルス薬を使用して治療していきます。

抗ウイルス薬に関しましては、上にも掲載した過去の記事「サイトメガロウイルスの再活性化」に書いていますので、ご参照ください。

予防薬

CMVの再活性化を予防する薬があります。プレバイミスという薬です。
内服でも点滴でもあります。

移植後早期の再活性化を防ぐ薬です。移植後100日以内に投与が終了となりますが、やめた後に再活性化してくることも多いです。

ただ移植後早期は様々な合併症が多い時期でこの頃にCMVの合併症まで起きてくると大変ですので、移植後早期だけであっても再活性化を抑えられることには意味があるかなと個人的には考えています。

どんな薬にも副作用がありますが、プレバイミスを内服している患者さんは吐き気を訴えられる方が多く、移植後なかなか食事が進みません。

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