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心理的安全性のコツ「人を責めない」

心理的安全性を担保するための工夫の2つ目は、人を責めないことです。

何か問題があったとき、責められたらどんな気持ちになるでしょうか?
例えば、何か仕事をお願いしていたのに,思っていた通りにできていなかったとします。そのとき、相手を責めると、相手はどんな気持ちになるでしょうか。責めると、次からはなかなか気軽に発言してくれなくなります。話しやすさからは遠のいてしまいます。

私のエピソードをお話しします。

私がまだ研修医で、1年目だった時の話です。B先生に、「日曜日の病棟の指示書を書いておいて」と言われました。指示書は何度か書いていたので、書き方は知っていました。ある患者さんの指示書を書こうと思い、治療方針を決めていたA先生に指示内容を確認しました。A先生は「日曜日の投薬内容は私が病棟に伝えておきます」と話したので、私はそのまま指示書に「A先生が投薬内容は決めてお伝えするそうです」と書きました。一抹の不安はあったものの、A先生がそういうので、そのまま書きました。

日曜日になって、病棟から電話があり、投薬の内容が書いていないからわからないと言われました。でも、私もわかりません。指示書をかくように言ってきたB先生のところにも問い合わせの電話がいったようです。B先生から私のところに電話がかかってきました。ものすごく怒っていました。「どうしてあんなことを指示書に書いたの!A先生が自分で投薬内容を病棟に伝えるなんて言っても、やるわけないでしょ。そんなこともわからないの!」とめちゃくちゃ感情的に責められました。そのときの私の気持ちは、「言われれたように仕事したつもりなのに、なぜこんなに怒られなければならないんだろう」という、混乱した気持ちでした。私からの見え方は、理不尽さを感じています。とにかくすごい剣幕で怒っているB先生に「すみませんでした」と何度も謝るのが精一杯でした。自分の気持ちや意見をいう隙は全くありませんでした。

翌日になって、B先生から「昨日は言いすぎてごめんね。」と謝ってもらいました。でも、あまりの衝撃に、もう私の気持ちはもとには戻せませんでした。前日、自分は言われたとおりに仕事をしたつもりなのに、強く責められ、もやもやした気持ちでいっぱいの1日を過ごしました。今でもそのときの嫌な気持ちは覚えています。それくらい強烈でした。

私はそれ以降、B先生に全く心を開くことができなくなりました。何か言って、またあんなふうに怒られたらどうしようという不安があり、素直に聞くことができませんでした。恐怖の気持ちしかありません。もともとはとても優しい先生なので、「わからないことがあったらいつでも聞いて」と言ってくれました。でも、そのまま素直に受け取れませんでした。私なりに一生懸命やったつもりなのに、怒られて悲しくて立ち直れなかっのです。

その衝撃の出来事から、相手に理由も聞かずに一方的に責めると、信頼をなくすということを学びました。そして、信頼をなくすと取りもどすのはかなり難しくなります。

相手を責める前にまずやることがありますよね。きちんと相手の言い分を聞くことが必要です。自分の見え方と相手の見え方は異なりますからね。相手は相手なりにきちんと仕事をしたつもりなのかもしれません。

何か問題が起こったときに、相手を責めても良いことはないのです。相手は恐怖から話さなくなるでしょう。話しやすさからは遠のきます。つまり、問題解決から遠くなるのです。



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