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【2】シンデレラみたいには、なれない(スピと生きづらさとトラウマとフェミニズムの物語)


ハナコは、自分に起きた良い変化を、村に住む、
他の悩める女性たちにも伝えたいと思いました。
それに、実を言うと、願わくば、ハナコもいつか本を出版し、
「伝える側」「教える側」の仲間入りをしたいと思いました。
ハナコは小さな商店につとめ、毎月きちんとお金を稼いでいましたが、
『ワクワクしない仕事を手放し、自分ビジネスを始めれば宇宙のサポートが入りすべてうまくいく』と学んだからです。

それに実際、いまの仕事は、特別苦しくもないけれど、
好きではありませんでしたし、自分に合っているかわかりませんでした。

ハナコの村では、学校の勉強が終わる頃に、仕事をもらうため、
みんなが暗い色の「シューカツ・スーツ」という伝統衣装を着て、
村の真ん中にある市場に立ちます。
そこで、「よくできる子、役に立ちそうな子」から順番に、会社から競り落とされます。
ここでうまくいかないと、「人生に失敗した人」「努力不足の人」「要領の悪い人」だと思われるので、
みんな、それを大変に恐れ、なんとか良い会社に競り落としてもらうことを目標にしていました。

本当の自分でいるよりも、会社に競り落としてもらえる人物でいることのほうが、ずっと重要だったので、
ハナコは、自分が本当は何を好きで、どんなことが得意なのか、全然わからないまま、大人になりました。
だから、スピリチュアルなパワーなメソッドを使って「ありのままの自分」を思い出すという考えはとても魅力的でしたし、みんながそうすべきだとハナコは考えました。


ハナコは、望む未来を設定しました。
スピリチュアルなことにも詳しいライフコーチになり、
ビジネスに成功して月収7桁を手にすることが目標です。
お客さんを集めるためには、もっともっと勉強して、スキルアップしなければいけません。
ハナコはスピリチュアル・ライフコーチになるための、
民間の認定講師の資格を取るための講座にも申し込みました。
とても高額でしたが、「お金を払うってことは、人生を変える覚悟があるってこと。決意した人にだけ宇宙のサポートが入ります!」という言葉に背中を押され、支払いをすませました。


準備は万端で、時間もお金もたっぷりとかけているはずなのに、なぜかハナコはだんだんと苦しくなってきました。

いい気分で毎日を過ごし、自分を愛しさえすれば、すべてがうまくいくと信じていましたが、ハナコは自分自身をすっかり愛することができません。
どうしても、自分の欠点にばかり目がいき、人と比較してしまいます。
そしてハナコは、うまく自分を愛せない自分自身を責めました。

そして、何か嫌なことが起こると、
「自分の思考や感情が、これを引き寄せてしまったんじゃないか」とものすごく不安になりました。
怒りや悲しみは低い波動のエネルギーで、感じてはいけないことになっていたのです。
誰かに理不尽な扱いを受けても、「相手の嫌なところは自分のエゴの反映」と考えて、スピリチュアルな目覚めに到達していない自分を恥じました。

スピリチュアルな本を買ったり講座に申し込んだりするのにお金をたくさん使ってしまったので、貯金の額が減りました。
お金はとても大切なので、内心、ハナコはものすごく不安でしたが、
お金に関して不安な気持ちを持っていると、豊かになれないと習ったので、必死に不安を押し込めました。
お金はエネルギーなので、心がときめくものを買って、循環させることが何よりも大切だと学んでいたのです。


ハナコは、ひとりぼっちでした。
でも孤独感は低い波動のエネルギーなので、ひとりぼっちだと感じることすら、自分にゆるすことができませんでした。
ハナコは次第に、こころとからだのバランスを崩し、塞ぎがちになり、おなかの痛みや、めまいに悩まされるようになりました。
スピリチュアルなことを話すと、否定されたり変な人だと思われるのが怖くて、家族や友だち、誰にも相談できませんでした。
ハナコはほんとうに、ひとりぼっちでした。


そんなある日、ハナコは村の掲示板のすみっこに貼られた「生きづらさを抱える女性の自助グループ」というチラシを見つけ、思い切って参加することにしました。
自助グループというのは、同じ問題を抱えている当事者が集まって、その問題をわかちあう場だそうです。
それは、ハナコがこれまで受講していた講座や、スピリチュアルなパワーを前面に押し出したセッションとは全く違うものでしたが、
ハナコはぼろぼろで、とにかく誰かとつながりたいという気持ちが抑えきれず、申し込むことにしたのです。


続く

お読みいただき、ありがとうございました。わたしという大地で収穫した「ことばや絵」というヘンテコな農産物🍎🍏をこれからも出荷していきます。サポートという形で貿易をしてくれる方がいれば、とても嬉しいです。