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タチヨミ「コーヒーを飲みながら」⑩

 

「コーヒーを飲みながら」第1巻 第1章<落花生>冒険


偶然に変化し、その方が、種を残すのが優位だったので、その方法を持つものが残った。
 としても、落花生がインゲンや、枝豆のように地上に結実しても滅びはしないだろう。昔、むかし土の中で結実したものができた。その種が増えていった。そして、落花生と名付けられた。
 植物は種を残すいろんな方法を持っている。あるものは、獣や人間の洋服にくっついて移動する。あるものは、水に流れて移動する。あるものは、一度食べられて、糞に混じって移動する。種を守り絶え何用にする目的、あるいは意志がある。
 落下生もそうなのか。土に潜った最初の出来事はどうしてできたのだろう。以前、娘に何気なく聞いてみたことがある。
「自分で自分を植えてみたんじゃない」
そうかもしれない。
 もしも、脳のない植物たちが考えることができるとしたら、どこだろう。
茎頂分裂組織。成長していく先端は、特別なようだ。だとしたら根はなんと先端が多いことだろう。
 一陣の風が吹き、窓の外では草木がそよいでいる。日が傾いて夕暮れが近づいている。
カチャ。
白いボーンチャイナのカップを置き、席を立つ。
廊下に出て、巡り歩いた部屋の前を通り過ぎ、真っ直ぐに玄関へ向かい、バタン、とドアを閉め古い洋館を出た。

 バタンと、私は本の表紙を閉じ、本を棚に戻した。今日は植物の体についての本を読んだ。本にはたくさんの事がらが、文字の配列で言葉として記されてい。一つの染色体の中には、DNAの配列でたくさんの事がらが記されている。
ドミノのように並んだ本棚の間を通り、出口へ向かう。
 大きなガラス戸が開くと、外気を感じる。西日を照り返すポプラの葉に目を細めてから何気なく図書館を振り返った。
 広くガラスに覆われてシェードをつけている見上げる高さの、それは核細胞だった。その中で今まで私はRNAのように情報を読んでいた。



「コーヒーを飲みながら」第1巻 第1章<落花生>冒険 より、一部抜粋。
抜粋ではありますが、①から⑩まで連続して読んでいただけると、話がつながると思います。よろしければどうぞ。☕

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                             星原理沙






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