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医療者の目線からみた「いい患者さん」と「よくない患者さん」 



やや顰蹙(ひんしゅく)を買う内容かもしれませんが、前回に引き続き外来の話をさせて頂きます。

今回は、私からみた患者さんの評価です。
医療をうまく活用してほしいという想いで書きました。
ぜひ、最後まで読んで頂ければと思います。


【1】外来は辛い




我々医師が仕事で接する患者さんの数は、圧倒的に外来>>入院です。
外来の時間3時間に対して患者さん20-50人、場合によってはそれ以上診ないとならないときもあります。
この20-50人が、全員安定していて高血圧や糖尿病のフォローをされているだけ、検査も半年ごととかであれば、それほど苦でもありません。

ところがどっこい、そんなワケありませんね。
病院にもよりますが、循環器内科の専門外来をやっている病院では精査も必要になってくるし、外来のコンサルト(他の科からの相談)も多い。
一般内科の病院であっても、腹痛、意識障害、発熱、腫瘍(!)、呼吸困難、ほんとに様々です。飛び込みでくる方も少なくありません。

正直に言います。外来、かなり疲れるので好きじゃありません。

何にそんなに疲れるのか?
理由は多数あります。


外来中の私

 ➀時間がない

最も大きい理由はコレ。
時間がないんです、本当に。

仮に3時間の外来で20人診るとしましょう。
1人にかけられる時間は1時間で6-7人。つまり一人につき10分弱ですね。
ここで大事なのは、
前の患者さんが退出してから、次の患者さんが退出するまで」10分弱ということ。

ここに文句を言ってもしょうがないことは百も承知ですが、


診察室に呼んでもなかなか来ない
⇒気づかない、耳が遠くて聞こえない、トイレに行ってる、何故か病院の外にいる、歩くのに時間がかかる or 自力では歩けない etc・・・

(ちなみに、私は必ず名前でコールしています。番号で言っても、大体気づかないから。)

聴診や触診をするため、服を脱ぐ・捲るのに時間がかかる

患者さんの情報をみて、前回と違うところがないか確認し、話を聞きつつカルテ記載をし、次回の外来予約、検査オーダー、処方箋発行諸々をする

その合間に入院患者さんのことで電話が来たり、後輩の相談を受ける

検査結果が出るまでに時間がかかり、「いま患者さんを診ていないのに診ることができない」状況がある

患者さんをみればそれでいい訳ではなく、これらの一つ一つにとにかく時間がとられます。


https://2.bp.blogspot.com/-M5Vk_1ys-rM/WWXW4TJtt_I/AAAAAAABFdI/v3vjHF-KokQjsULukABLBwnnQbg_GLLGACLcBGAs/s450/fashion_heian_kizoku_woman_juunihitoe.png
十二単でも着ているのかと思いたくなることがあります。
脱ぐのも着るのも時間かかる。頼むから待合室で脱いでくれ・・・



テレビ番組で「あの先生はカルテの方ばかりみて、私の方をみてくれない」という話題で一時期盛り上がっていた時期がありましたね。

・・・いや、よくないですよ?よくないことは、すごーくよく分かります。
私だってされたら気分よくないです。

でもね。でもね?

本当に時間がないんですよ。

特に(後で出てきますが)こちらが聞いたことに対して頓珍漢なことを答える上に話が止まらない方、遮っても続けようとする方、多いんですよ。
なるべくブラインドタッチで患者さんの顔をみて話を聞きますが、限界があります。
このような工夫をしてなんとか外来を回しても、

遅い!どれだけ待たせるんだ!

とか言われるんです。
しかも、我々医師ではなく何故か事務や看護師さんに言うんですよね。
患者さんにキレたくなる気持ちも、正直分かります。

すごく分かりみが深いので、引用させて頂きました。

Bing 動画

こちらも引用させて頂きました。

 ②症状も疾患も多彩


患者さんは、病名が書かれた札をもって受診するわけではありません。
症状が始まった日や時間、推移、程度、既往や内服薬等の様々な情報、そして現実的に遭遇する頻度の高い疾患を想定して「この疾患ではないかな?」
と考える訳ですね。

ただ注意したいのは、タイトルの通り症状も疾患も多彩なのです。


例えば、急性心筋梗塞の典型的な症状は「突然生じた、左胸の締め付けられるような痛み」です。
でも、現実には「背中の痛み」「歯が痛い」「肩が痛い」なんて人も結構います。実際に歯科を受診する方もいますしね。

さらに、少し専門的な話になりますが、急性心筋梗塞の典型的な検査所見として「心電図のST上昇」があります。
でも実際の心電図では「STが上昇しない心筋梗塞(non-STEMI)」、「STは確かに上昇しているけど正常の所見」等もあるんですね。


non-STEMIの一例


最悪、これらの疾患が鑑別に時間をかけていいものであれば、様子見という選択肢もとれます。でも脳梗塞や心筋梗塞のようにタイムリミットとの闘いがある疾患がある場合、少ない検査所見で判断しないといけないこともあります。
その場合、外来を少し止めてでもその方の治療を優先します。

でも、他の患者さんから
遅い!」「今日はかなり待ちました(ため息)
とか言われるんですよね。


さらに、疾患の緊急度は高くなくても症状の原因が分からない方、他の科にコンサルトしても原因不明で帰ってくる方も結構います。
入院中であればじっくり考えられますが、外来だと「とりあえず今どうするか」を即断しないとならないので、なかなかにこれもストレスなんですよね。
勿論、落ち着いてから見落としている疾患がないか探しますけど。


    ③話が要領を得ない


コレもなかなかに辛い。


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話が止まらない・・・

いや、ある程度はしょうがないんですよ。分かっています。

でも、例えば「ここ最近、運動すると息が切れる」という症状の方に
「散歩程度でも息が切れますか?」と聞いたとしますね。

答えは「はい」か「いや、その程度では大丈夫なんだけど、~するとダメです」だと思うんです。

でも、なぜか親戚の話や今日の朝食の話から始まるんですね。

何が問題かって、
患者さん自身が、何が言いたいのかわからず話始めていることなんです。

着地点がないんですね。
もちろん話を遮って修正を試みますが、全くダメなことも多々ある。
家族が注意しても、「先生が聞きたがっているんだ!」とか言い始めることもあります。

申し訳ありませんが、全く興味ありません。友達ではありませんから。
朝何を食べたとか、親戚がどうとか、本当にどうでもいいんです。
頼むから、聞いたことに答えてください。

大体は心の中で思っていますが、診察が進まないときは(大分マイルドに、ですが)直接言ってしまうこともあります。


【2】医療者とよい関係を築く    


 ➀医療者と患者は「他人」です




さて、話が色々な方向に逸れましたが、私は一人の医療者として患者さんとよい関係を築きたいと思っています。

よい関係というのは、「つかず、離れず」ではないかと思います。

そして、その大前提として「医療者と患者は他人」という意識が必要だと思います。

他人に情報をうまく伝えるためには、
・相手が知っている単語で
・相手が聞きやすいスピードで
・相手の方をみて
・相手を思いやって
・なるべく時間をとらせないように

話しますよね。


ちゃんと準備ができる人は、話し方も上手ですよね。


特に「なるべく時間をとらせないように」という意識があれば、素人からプロの医療者に情報を伝えるためには「時系列でメモに書いて見せる」「高血圧なので、血圧手帳を記載して見せる」等の工夫が必要であることに気が付くと思うのです。
特にプロ相手に素人が「私の考えた診断」「私の考えた治療法」を披露するのは、愚の骨頂です。はっきり言って、双方にとって時間のムダです。

実際、私も手術を受ける前は自分が聞きたいことをメモし、主治医の外来でみせにいきました。

確かに病院は患者さんの受診がないと経済的にまわりません。
でも、患者さんは「お客さん」ではないんですね。
ましてや「友達」でも「家族」でもないんです。
よっぽど長い個人的な付き合いでもあれば別かもしれませんが、それでも必要以上に他人の情報を知りたいなどと、ましてや患者さんが朝食に何食べたか・親戚の疾患など「心の底からどうでもいい」のです。


 ②自分なりの見解ではなく、希望をちゃんと伝える


上にも記載しましたが、「素人のわたしがかんがえた診断・治療」なんて何の役にも立ちません。

例えば脚がしびれる感じがする、何だろう?と思ってググると、
「ギランバレー症候群」などという怖い名前の疾患が目に入るんです。

はっ、そういえば数日前に風邪ひいた!あれが原因に違いない!
(本当にそうである時もありますが、無視していいほど確率的には低い)

⇒私はこの疾患なんです!いや、癌でしょうか?
 検査を!治療を!大きな病院に紹介してください!
 何かあったら責任とれるんですか!
(決まり文句 その1)
 訴えますよ!?
(決まり文句 その2)


・・・辟易しますね。
こんな言い方はよくないかもしれませんが、
医師が何年かけて医学を勉強し、どれだけの努力をして一人前の医師になると思っているのでしょうか?
机の上の知識だけで医療ができるなら、医療なんてAIにでも任せておけばいいんですよね。


こんな世界を想像する方いると思いますが、少なくとも私達が生きている間は来ないと思います。

そうではなく、しっかりと医療者を利用しましょう。
そのためには、医療者の意見を聞いたうえで「自分はこうしたい」と伝えましょう。

同じⅡ型糖尿病の患者さんでも、インスリンの使用に抵抗がない方、朝昼夕での内服は難しい方、低血糖発作を起こした経験がある方・・・
色々いると思います。その方々のライフスタイルにあった処方の仕方は提案できるわけですね。
他にも心不全の原因を根本まで調べたい方、薬物療法だけで十分な方、等。

話を聞いたうえで「自分はできればこの方法で治療したい

という意志を伝えるのが、医療者としても非常に助かるし、「この患者さんはちゃんと疾患に向き合っている」という印象を与えます。
そして、分からないことはしっかりと聞いて、メモして、自分でも勉強しましょう。
要点を抑えないまま調べるから、怖い情報や碌でもないブログ等ばかり目に入るのだと思います。


【3】「いい患者」と「よくない患者」


私の思う「いい患者」とは、
「プロの意見を聞いたうえで、自分の疾患とちゃんと向き合い、治療を選択する、しようとする患者」だと思います。
このような患者さんには、やはり入れ込みが強くなりますね。

逆に「よくない患者」とは、
「話を聞かない、要領を得ない、理解しようとしない、人任せの患者」
だと思います。
そして「先生にお任せ」という方に限って「ピンピンコロリで死ねれば何でもいい」「そんな話聞いていない」とか言います。
仕事だから関わるけど、正直あまり関わりたくないですね・・・。



いかがでしたでしょうか?
医療者の方々は、共感して頂ける内容も多かったのでは?
もしくは反発を買う内容もあったでしょうか。

一般の方々も、自分が思っている医療者のイメージと違うところがあるのではないでしょうか。
もちろん、我々医療者も日々精進していく必要があります。

でも医療はレストランのように、食事を出してお金もらって終わり、ではありません。
ちゃんと末永く付き合っていくためにも、お互い良い距離感で良い関係を築いていきたいものですね。

読んで下さり、ありがとうございました。
もし共感頂けたらコメント等頂けると幸いです。

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