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多読100万語の効果は誇張されている

2024年度になって、高校や大学の英語授業で英語多読を始めた学生や、社会人の生涯学習・趣味として洋書を読み始めた人がいると思います。そのとき、洋書を100万語読むと英語力が大幅に向上するとか、画期的な成果が得られるなどという話を聞くことがあるでしょう。グーグル検索でも、様々な人がその成果を吹聴しています。

残念ですが、100万語ぐらい読んでも大した効果は得られません(苦笑)。

英語学習の量と効果は、各学習者の習熟度によっても異なるでしょう。CEFR A1レベルと人と、B2レベルの人では、170時間の学習で得られる効果は異なると考えるのが妥当ですね。そこで、今日は平均的な英語学習者の場合を検討してみます。

一般財団法人「国際ビジネスコミュニケーション協会」の公式サイトに掲載されている「2022年度の平均スコア・スコア分布」というグラフを見ると、受験者784,310人の平均スコアは608点でした。仮に、TOEIC550点の人が100万語に相当する洋書を読むと、スコアは何点上がるでしょうか?

100万語を毎分100語で読むと10,000分、すなわち167時間です。Oxford University Pressに掲載されている表によると、550点から650点まで上げるために必要な学習時間は225時間だそうです。単純に比例計算すると167時間の学習で期待できるスコア増は75点です。

ただし、これは適切なTOEIC学習に取り組んだ場合のスコア増です。ビジネスコミュニケーションとは無関係な絵本・児童書を読んでいると、これだけのスコアアップは期待できないでしょう。ですから、控え目に推定すると50点アップぐらいだと思います。TOEIC L&Rが550点から600点になっても、スコアが「爆上がりした」と主張する人は皆無でしょう(笑)。

100万語読んだ結果、「英語を英語のまま理解できるようになった」と主張する人もいます。しかし、分からない所を飛ばして読んでいると、その「分からない所」は「英語のまま理解できない」わけですよね。TOEIC L&Rが600点前後の人は、リスニングパートで英語が聞き取れない箇所がまだまだありますし、時間無制限でリーディング模試を解いても正解できない部分があるでしょう。

なぜ、多読の効果は誇張されているのでしょうか?

経済的利害関係があるからだと思います。オンラインで英語多読サービスや多読講座を提供する業者は、話を盛ってしまいがちです(笑)。商売ですから仕方がないですね。しかし、手元にある電卓を使って簡単な割り算をすれば、誇大広告に騙されずに済みます。

TOEIC600点の実力で何ができるか(何ができないか)冷静に判断しましょう。

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