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不思議な縁

大学卒業間近に突然、歴史小説を読みたくなり、本屋で長時間粘り、なんとなくグッときた小説の上下巻を買った。司馬遼太郎先生作でタイトルは『夏草の賦』。四国の雄、長宗我部元親の成り上がり人生を描いた物語。読み始めた頃、まったく流れに乗り切れず後悔していたが、上巻中盤あたりからのめり込み、残りは一気読み。その勢いで満を持して下巻に。

読み始めて驚いたのが、スタートが上巻とほぼ同じ。前巻のあらすじを思い起こさせるには最善の試みと感動しつつ、いくら読み進めても、復習は延々と続く。「ん?」と思い、「まさか?」と感じ、念のため表紙を見返したら、案の定「上巻」だった。まさか上巻を2冊買っていたとは思いもよらず、それでも同時に、ネタが増えたことを喜びつつ、本屋に向かったが、どこに行っても下巻は見つからず。ネット購入の文化がなかった時代ゆえ、購入を諦めた途端、忘却の彼方に。

大卒20年後、突然、あの切ない記憶が蘇り、再度購入を決意。ただ、上巻の記憶がすっかり失せていたため、神戸の本屋で再度上下巻を購入。これで借りを返せると心躍らせ読書を開始。20年前とは異なる興奮を覚えつつ、上巻を読破し、下巻に突入。読み始めて驚いたが、上巻のあらすじを思い起こさせるような始まり方。なんだろう、この懐かしい感覚、と思いつつ、嫌な予感を振り払うように表紙を確認したら、やはり「上巻」。その瞬間に感じた思いは「これもネタになる!」。

さすがにこの時ばかりは本屋で何度も確認の上、下巻を購入。一気に読んで感動もひとしお。ただし、ストーリーの素晴らしさによるもというよりは、リベンジ達成という妙な感動だった。

それから10年経ち、突然懐かしさが込み上げ、ネットで上下巻を購入し、一挙に読破し、ついにまともに感動。だからと言って、皆々様にお勧めできるほどの名著だと思ってはいないが、なぜか忘れられない良書となった。

#歴史小説が好き
#司馬遼太郎
#夏草の賦

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