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geocitiesとGaiax

平成が終わり令和になった(今ごろだけど・・)。そういえば20世紀が終わろうしていた1999年、NETでは「世紀末」とか「プレミアムイヤー」とか言って、それはそれはすごい騒ぎようだった。

あのころはSNSはおろかブログもラインもなく、個人ホームページ(HP)やコミュニティサイトの全盛だったように思う。その中で代表的なものがgeocities(ジオシティーズ)で、Gaiax(ガイアックス)はいわゆるアングラでマニアックなコミュニティサイトだった。もちろん僕はヘビーなGaiax派だった(笑)。垢抜けてスマートで都会的なgeocitiesを、 当時のGaiaxユーザーたちは憧れの眼差しで眺めていたものだ。

中古のノートパソコン(富士通のおそろしく分厚いやつ、OSはwindows95)を15000円で手に入れ、何の知識もないままGaiaxで個人HPを作った。思えば僕のNETデビューはイコールHPデビューだったのだ。


ホームページといっても、Gaiaxに登録すると自動でできる超簡単なやつだ。その自動でできたHPの雛型を、いかにオリジナリティなものにするか、Gaiaxユーザたちは競いあっていた。配色を工夫したり素材屋で壁紙を探したり、BGMを入れたりカーソルの演出をしたり。

BBS(掲示板)、Diary(日記)、Bookmark(お気に入り)、Link(リンク)、Log(足跡)、というコンテンツの中で一番のGaiaxの売りはBBSだった。カキコ(書き込み)するとその内容が相手と自分、両者のBBSに自動的に反映される。Facebookのタグ付け機能のようなもんだろうか。当時いろんなBBSがあったが、カキコする側とされる側の両者のBBSに同時に反映されたのは、Gaiaxの掲示板だけだったと思う。でも画期的ではあったが、Gaiax以外の人たちからこのBBSは奇異に見られていたらしく、それがGsiaxのアングラたる所以だったのだ・・

Bookmarkで仲間を増やし、Diaryに詩や文章を綴り、そしてBBSでしょうもないアホみたいなやり取りを寝る間も惜しんでやっていた。ほんとにアホだ。

BBSへのカキコがなくても、Logには足跡が残っているので誰がきたのかもすぐにわかる。そしてそのLogにはショートメッセージが付けられるので、それだけでコミュニケーションがとれるわけだ。

まあ、Gaiaxユーザー以外の方々には、ここまで書いたことは全く意味不明なのかもしれないが・・


でもアホみたいに寝る間も惜しんで日記を綴ったり文章を創ったり書き込みしたり、そんな濃い時間を費やしたことでNETのマナーもわかったし、NETの闇も痛いほど思い知った。ある人はお道化たキャラを演じて自分を隠し、ある人は他者を落とし入れる事で自分の存在を主張し、またある人は偽りの情報を流して同情を誘う。あくまでもここはバーチャルな世界だと言い張る。

今でこそインターネットは身近で当たり前にみんなが共有し、SNSでは簡単に人と人が繋がってしまうが、当時そこはバーチャルに生きる者たちのカオスと化していた。

でも、人と人とが接する以上それがバーチャルであるわけがない。偽りの自分を演じてもそれは紛れもない自分の一部であり、嘘八百な文章を書いても、そこには正直な自分の内面が必ず反映されてくる。インターネットで人と人が繋がる以上、それは決してバーチャルなんかではない。それは現実そのものなのだ。

そんな、現実から目を背けバーチャルを生きていた人たちは、早々とGaiaxを去りインターネットからも遠ざかっていった。そして、生き残った僕たちの間には現実のしっかりとした絆が残った。今でもあの時代のアホみたいな時間を共用した仲間の何人かとは繋がっている。


Gaiaxが突然閉鎖したのは2002年か2003年ごろだったと思う。でもその頃には、多くのGaiaxユーザーたちはこの超簡単なHPとは別に、オリジナルなもうひとつのHPを既に持っていた。Gaiaxで蓄積した各種タグやHTML言語の知識を駆使し、一からプログラムを構築して自分好みの自由なHPを作り挙げていたのだ。その時作った僕のHPも、いまだにこのwww.の世界の片隅に埋もれたまま残っている。そしてあの時に書いた文章たちも大切に保存している。

もはやサブ的なHPになっていたGaiaxだが、それでもやっぱり閉鎖された時の激しい虚無感は言うまでもない。


今でも繋がっている(と信じている)Gaiax時代の仲間たち。ある人は今も残っているあのHPの掲示板に年に一度だけメッセージを残す。ある人は忘れたころに突然メールをくれる。またある人は時々僕のことを思いだしあのHPに来てくれる。書き込みなんかしなくてもメールなんかしなくても、HPに訪ねてくれたら気配でわかる。その為に残してあるようなもんだから。時々思い出してくれたらそれでいい。それが本当の繋がりだと信じているから。

で、geocities のことも気になって調べてみたら、閉鎖されたのは2019年3月・・なんと去年まで残ってたんだねー。さすがgeocitiesだ。

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